第143話 海藻を調べましょう
「楽しかったですね!魚も綺麗でしたし、あの大きな木も壮大でした!」
サラが早口で喋る。よほど楽しかったみたいだ。
「ああ。いい経験をさせてもらったよ」
水中で直に呼吸出来たおかげで、より身近に海を感じることができた。
「でも、少し疲れたな」
抵抗の多い水中にいると、普通に動いているつもりでも結構エネルギーを使う。
それに、浮力でずっと体が軽かったから砂浜に戻ってきた今、体が重い。
「そうですね。私も眠くなってきました」
サラが欠伸をする。
「じゃあ、お昼を食べた後、宿に戻って少し昼寝でもするか」
「そうしましょう……ふぁ……」
俺たちは宿へと向かった。
ーーーーー
昼寝を済ませた後、再びサラと合流する。
「リュウさん、海藻の調査を始めましょう」
と、少し寝て元気になったサラが言った。
「そのことなんだけどさ……」
「どうしたんですか?」
サラが心配そうに見つめてくる。
「これ、いきなり食べて大丈夫なのかな?」
食材として使えるかの調査だけど、そもそも毒があったら一発アウトだ。
日本でもキノコを食べての食中毒とかあったからな。
「いきなり食べるのは危ないですよね……そしたら鑑定してもらいましょう!」
少し考えた後、サラがそう提案してきた。
「鑑定?」
「はい、冒険者ギルドには鑑定士がいるので持っていけば調べてもらえるかもしれません」
「なるほど。いい考えだな」
確かにそれなら安全にチェックすることが出来る。
「でも、私たち冒険者ギルドに登録しているわけではないので利用できるかは分からないです」
「そしたら一度ミアさんに確認を取ってみるか」
困った時は商人ギルドの人に聞いてみるのが一番だろう。
「そうですね!」
サラも頷く。
俺たちは商人ギルドへと向かった。
ーーーーー
商人ギルドのミアさんに説明してみる。
「海藻を鑑定したい?」
事情を聞いたミアさんが不思議そうな顔をする。
「はい。料理に使えるか調べてみたいんです」
「海藻を料理に使う……想像できないですね。でも面白そうです!分かりました。冒険者ギルドに依頼してみますね」
商人ギルド経由なら割と簡単に依頼できるらしい。
「ありがとうございます!」
「いえ。そうだ、リュウ様宛にお手紙が届いています」
「俺にですか?」
俺はミアさんから手紙を受け取る。
「レナーテさんからだ」
リュウ様
お久しぶりです
レナーテです
お手紙ありがとうございます
ケンドットにいらしてくださったとのことで嬉しく思っています。
よろしければ、近いうちに屋敷にいらっしゃいませんか?
父もお会いしたがっています。
良いお返事待っています。
というような内容だった。領主様に招いてもらえるなんてありがたい話だ。
読んだ後は、サラにも手渡す。
「ゼーベル様ですか。私はお会いしたことがないです」
サラはミアさんに手紙を渡した。
「ケンドットに来てこれほど早々に領主様に招待されるなんて……リュウ様はすごいですね」
読み終えたミアさんが尊敬の眼差しで見つめてくる。
「いえ、商会のメンバーや支えてくれる人のおかげですから」
スキルの恩恵はあるにしても自分だけの力じゃないからね。
慢心してはいけない。
「リュウ様の人徳ということですね。自分もその一端を担えるようにお手伝いさせていただきます」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
日程調整についてはミアさん、というか商人ギルドが間を取り持ってくれるらしいのでお任せすることにした。
「そして、これが海藻鑑定調査の依頼書になります」
ミアさんから封筒を手渡された。
「これを冒険者ギルドの受付に見せてもらえれば大丈夫です」
「ありがとうございます。では、この足で向かいますね」
「はい、頑張ってください!」
ーーーーー
冒険者ギルドは、商人ギルドから一区画離れたところに立っていた。
商人ギルドと同じく、二階建ての石造りで巨大な建物だ。
中に入ってみると、強そうな人たちがたくさんいる。
ちょっと緊張するな。
俺は受付へ行って依頼書を手渡した。
「海藻の鑑定……かしこまりました。ではあちらの鑑定所の前でお待ちください」
鑑定所の近くには、クエストを終えた冒険者たちがたくさんいた。
中には角が生えた強そうな魔物の頭を持っている人もいる。
あんなのと遭遇したら俺は即死だろうな。
しばらく待つと、俺たちの順番になった。
「品を見せてみな」
鑑定士のおじさんがぶっきらぼうに言う。
「これを鑑定してください」
俺は海藻を入れた大きな袋をテーブルの上に置いた。
「どれどれ……おいおいこりゃ雑草じゃないか?こんなの調べてどうするんだ?」
おじさんが海藻を手に持ちながら怪訝そうな顔をする。
「料理に使えるか調べたいので、毒があるかどうかだけ調べて欲しいんです」
「調べても意味ないと思うんだけどな。まあ分かった。鑑定してやるからちょっと待ってろ」
おじさんは真剣な表情で海藻を見ていく。
「これはダメだな。食べたらトイレから3日出てこれなくなる」
紫色の海藻を弾く。
「これは大丈夫か」
こうして、おじさんは鑑定作業を進めていった。
「よし、こんなもんだろう」
袋に入っていた海藻が二つの山に分けられていた。
「助かりました」
「おう。何かあったらまた来な」
俺たちは毒がない方の海藻の山を持ち帰った。
幸い、サラの選んだ黄色い海藻、海ブドウっぽい海藻、昆布みたいな葉っぱに毒はないみたいだ。
これで安心して食べられるぞ。




