第138話 拾ってくれました
追記(1月27日)
次回1月27日の投稿は都合により1月28日となります。
ご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします
サラのサンダルが脱げて遠くへと飛んで行ってしまった。
「私のサンダルが!!」
サラが俺の背中で叫ぶ。
サンダルは放物線を描き、水面に浮かんだ。
そのまま波に揺られて沖の方へと流れていく。
「取りに行ってきます!」
酔いから覚めたサラが背中から降りようとする。
「危ないからダメだ」
お酒を飲んでるし、泳ぐのは危険だ。
俺も酒を飲んでいるから、取りに行くのは難しい。
ついに、サンダルは海の中へと沈んで行ってしまった。
「そんな……せっかくリュウさんに選んでもらったのに」
サラが落胆の声をあげる。
今日買ったばかりの新品の靴がなくなるのはショックだよな。
「また明日買いに行こう。今度は俺がプレゼントするよ」
酔っぱらっているサラを海際まで連れて行った俺の責任でもあるからな。
「いえ、これは自分のせいです。本当にすみません……」
「とりあえず、今日のところは帰ることにしようか」
「はい……」
そう言って海に背を向けたその時、
「あの!」
海の方から声が聞こえてきた。
慌てて振り向くと、そこには人魚族の女の人が水面から上半身を出していた。
腰のあたりまで真っすぐなきれいな髪で、背後の夕日に当たってすごく綺麗に見える。
年は俺やサラと同じぐらいかな。
「これ、あなたたちのですか?」
彼女の右手には、サラが落としたサンダルが握られていた。
「それ私の!」
サラがサンダルを指差す。
「よかったわ。たまたまサンダルが沈んでいくところが見えたから」
そう言って彼女はサンダルを俺に手渡してくれた。
「すいません。ありがとうございます。お名前をお聞きしてもいいですか?」
「ジーナよ」
「自分はリュウといいます。何かお礼をさせてください」
「あら、お礼なんていいわ」
「いえ、そういうわけには」
「ううん、大したことしてないから」
ジーナさんが手を横に振る。
「そうですか。すいません」
「あなたたちはどうしてここに?」
「仕事でケンドットまで来ました」
「そう、てっきり観光かと思ったわ」
まあ、現状酔っぱらった人を抱えた男女二人組だから、誤解されてもおかしくないかも。
「実はこの街で店を出せたらと考えていまして」
ジーナさんに事情を説明する。
「そう。ということはしばらくこの街にいるのね。あたしはこの砂浜によく来るから、また会ったらよろしくね」
「はい、こちらこそ」
「もう日が暮れそう。そろそろあたしは失礼するわ」
「ありがとうございました」
ジーナさんは俺たちに手を振ると、海の中へと泳いで消えていった。
「拾ってもらえてよかったな」
「……」
「あれ?サラ?」
サラから反応がない。
「……zzzz……」
サラが俺の背中で寝息を立てていた。
眠ってしまったみたいだ。
サンダルが見つかって安心したんだろうな。
俺はサラを抱えて宿へと戻った。
サラの部屋のベットにサラを運んだあと、俺も酔いがまわってきたので自分の部屋に戻ってそのまま眠ってしまった。
ーーーーー
次の日、
「サラおはよう」
朝食の時間にサラと食堂で合流した。
「……」
サラがうつむいている。
「体調は大丈夫か?」
昨日は大分飲んでいたからな。
「はい……。あの、昨日はすみませんでした……」
サラが顔を真っ赤にして謝ってきた。
「全然大丈夫だよ」
「リュウさんにおんぶしてもらって、サンダルを蹴り飛ばして、拾ってもらった上にお礼もせずに背中で爆睡……人生最大の失敗です」
サラは酔った時の事を覚えているタイプなんだな。
「気にすることないって」
俺だってお酒を飲んで失敗したことはあるけど、サラの失敗なんて可愛いもんだ。
「拾ってくださった人にもちゃんとお礼を言わないといけませんね」
「よく砂浜に行くらしいから、また会えると思うよ」
「はい……しばらくお酒は控えますね」
「うん、俺も控えるよ」
俺も真面目モードで行こう。
ーーーーー
朝食を食べた後、俺たちは再び浜辺へと向かった。
目的は店の再調査だ。
今度はお酒なしで真剣にやろう。
「やっぱり、冷たいものの売れ行きが良さそうですね」
売っている食べ物もビールや冷たい飲み物と相性が良さそうなものも多く売られている。
「そう考えると、冷たいおつまみなんかもいいかもしれないな……胡瓜の一本漬けなんか面白そうだ」
「一本漬け?」
「胡瓜をそのまま漬物するんだけど、冷たくて美味しいんだよね」
夏になると、キュウリの一本漬けは無性に食べたくなるんだよな。
夏バテしてても、無限に食べられるし、大人になってからはビールのお供としても大活躍だ。
他のメリットとしては子供も食べやすいこと。
俺は小さい頃、漬物は苦手だったけど、これだけは食べられた。
「いいですね!私も食べてみたいです」
「よし、まずはそれを作ってみるか」
少しずつ屋台計画が動き出してきたな。




