第99話 喜ばれました
次の日、モードンさんがケーキを取りにやってきた。
「予約させてもらったものを取りに来ました」
「はい。お待ちしてました。こちらが予約していただいた、ケーキになります」
俺は型紙で作った箱の中にケーキを入れてモードンさんに手渡す。
「お伝えしていたと思いますが、お早めに食べるようにお願いいたします」
「はい、承知しています」
そう言うとモードンさんは布製の袋を取り出した。
モードンさんがいつも買うときに持ってくるマジックバックだ。
ある程度の上限があるが、時間経過無しで収納できる優れものだ。
一般に流通しているものではないから、かなりの高級品だ。
流石フストリア家に仕えている執事だなって思う。
「確かに受け取りました。こちらがお代になります」
モードンさんから4000クローネを受け取る。
「では、これにて」
モードンさんが店を後にした。ソフィア様も気に入ってもらえるといいな。
ーーーーー
その日の夜、会長室にいると
「会長!」
夜のシフトに入っていたアレンが急いでやってきた。
「アレンどうした?」
「店の前にフストリア家の馬車が来ました」
「セレド様かな」
もう何回かこの店にやってきたからね。割と慣れてきた。
俺がマイマイ村に行っている間にも店に来たらしいし。
「セレド様もいらっしゃるのですが、他にもいらっしゃった方がいて」
「他にも」
「ソフィア様です」
それを聞いて俺はすぐに下へと向かった。
ーーーーー
同じく話を聞いたサラと一緒に入り口に着いた。
「セレド様、ソフィア様」
俺は馬車から降りてきた2人に挨拶をする。
「リュウ様!お久しぶりですわ!」
ソフィア様が俺に気付いてくれた。
セレド様と同様に西洋系の彫が深い顔で、美人だ。
髪は金髪の巻き髪で、今日はシンプルなデザインのドレスを着ている。
「お久しぶりです。セレド様の食事管理を手伝っていただきありがとうございました」
「いえいえ、お兄様のためですわ」
ソフィア様にはセレド様のダイエットを手伝ってもらった。
助けてもらわないと、セレド様が元の姿に戻れなかったかもしれないな。
「耳が痛い話だね」
セレド様が気まずそうな顔をする。
「ところで、本日はどのようなご用件で」
「今日はソフィアが食べたケーキについて頼みたいことがあるんだ」
「なるほど。それでしたら中でお聞きしますね」
俺はセレド様とソフィア様を会長室へとお連れした。
部屋に俺、サラ、セレド様、ソフィア様の4人で入る。
モードンさんも来ていたけど、部屋の外で待つということだ。
全員がソファに座ると
「いきなり本題なんだけど、あのケーキと言うものはリュウが作ったのかい?」
早速セレド様が質問してきた。
「レシピを作ったのは自分ですが、作ったのは別の人です」
「なるほど。その人は今いたりするかい?」
「クトルですか?いるはずです」
確か夜のシフトで入っていたはずだ。
「申し訳ないのだが呼んで欲しい」
「分かりました。呼びに行ってきます」
というわけで、サラがクトルを呼びに行った。
「ケーキを作ったクトルといいます。わ、わたし。なにかしましたでしょうか?」
連れてきたクトルが完全にビビっていた。
領主様に呼ばれたんだもんな。
俺も初めてセレド様に呼ばれた時は緊張したし。
「落ち着いてもらって大丈夫だよ。むしろ君にとってもいい知らせだから」
セレド様の言葉を聞いてクトルは少し安堵する。
クトルが席に着くと
「クトル様。あなたの作ってくださったケーキ。とっっっっても美味しかったですわ!今日はそのお礼を言いに来たのですわ」
「え?」
「一口食べた瞬間にまるで恋に落ちた気分になりましたの」
ソフィア様が味を思い出すようにして言う。
「ひんやりとした白くて甘いふわふわの物に、イチゴ、そしてまた違ったふわふわの黄色い物が合わさって口の中が本当に幸せでしたわ!」
ソフィア様が饒舌に語る。
この言い回し、セレド様に似ているな。
流石兄妹だね。
「ソフィアがここまで気に入ることは珍しくてね。そこでなんだけど、僕の方からケーキの予約をしたいなと思っているんだ」
「予約ですか。それでしたらわざわざお越しいただかなくても」
連絡さえもらえれば作れるからね。
「実は、3ヶ月後にソフィアが18歳の誕生日を迎えるんだ」
「それはおめでとうございます」
「ソフィアも成人になる。だから盛大な誕生会を開きたい。そこで、ケーキを注文したいんだ」
なるほど、誕生日ケーキか。
「実物はソフィアに見せてもらったけど、あれよりも大きなものは作れたりするのかな」
「そうですね……やってみないと分からないです」
調理魔法から作れるものは3号サイズだ。
それより大きなものを作ろうとすると自分で作ってみるしかない。
幸い材料や分量、調理方法は大体知っているんだけど、実際に調理した経験はないからな。
かなり試行錯誤する必要があると思う。
ただ、この前レベルアップをしたときにある素材が作れるようになったからいけるはずだ。
「出来ることなら、大きなケーキを招待した人に見てもらいたいんだ」
確かに大きなケーキのインパクトはすごいからな。来た人も驚くはずだ。
「分かりました。挑戦してみたいと思います。ただ、うまく行かなかったときには従来通りの大きさの物を提供させてください。もちろん数はお作りします」
「うん、それで十分だよ」
期間はそれなりにあるけど、作れる確証はないからね。その条件で納得してもらう。
「高い注文になると思うけど、ソフィアの成人の祝いは一度だけだ。是非ともお願いしたい」
「かしこまりました。クトルもそれでいい?」
「はい!このクトル。全身全霊、最高のケーキを作ります」
うん、クトルもやる気になってくれた。
「お二方とも感謝いたしますわ!」
ソフィア様も嬉しそうだ。
「うん、よろしく頼む。あ、そうだ」
「どうされました?」
まだ、何かあるのかな。
「リュウ、サラはサート商会の会長、副会長として正式に誕生会に招待するから」
セレド様がとんでもないことを言い出した。




