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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
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STAGE☆03 「ぼっちのバトル」



 迫ってきたのはオオカミに跨ったゴブリンの大群。


「ゴブリンライダーってやつか」


 数は10、20、28対。狙いはこの馬車で間違いない。


「そんな、護衛の方々はどうなされたのです?」


「出るな。中にいろ!」


 様子を見に出てくるメイドに鞘を持たせて押し戻し、扉を閉める。


 一瞬の隙をついて、先頭のゴブリン3匹がギブンを襲う。


「あれ? 遅いぞ、こいつら」


 大袈裟ではなくスローモーションのように見える魔物の首を、3匹もろともに斬り落とす。


 主を亡くしたオオカミが反転してくるが、またも3匹もろとも真っ二つに斬り捨てる。


「そうだ。魔法も試してみよう」


 と思ったが発動条件がまたまた分からない。


 この一大事にもピシュは応えてくれない。


 火だ、火の玉だ! と思い浮かべた途端に、2対のゴブリンライダーが炎に包まれた。


「おお、念じるだけで使えるのか。便利だな」


 ギブンは勝ちを悟って、ゴブリンの輪の中に突っ込む。


「ははは、最初の森で獣を狩った時よりも楽だな」


 離れた相手には魔法を、近付くものは剣でバッタバッタと。


 ギブンは一呼吸を付き視界を拡げる。ゴブリンは片手で数えられる程になった。


「逃がさないって」


 背中を向けたゴブリンライダーに水流を飛ばす。


 魔法の洪水に飲み込まれた逃亡者は、まとめて窒息死した。


「片づいた、よな」


 念のために安全確認したいが、残り1つのスキルポイントを使うべきなのか、悩むところだが。


「しょうがないか……」


 取得した索敵検索スキルを使い、敵意を探るが、なにも引っかからない。


「大丈夫そうだな」


「騎士様!」


 深くため息をついてホッとしていると、最後に蘇生を成功させたメイドが駆け寄ってくる。


「ど、どうなされた?」


「はい、御礼も後回しにして申し訳ございませんが、エンザを、御者のエンザをお救いください」


 御者と言えば、最初にゴブリンの餌食になり、首から上と下に食いちぎられた彼の事か。


 メイドの様子からして、親しい関係なのかもしれないが……。


「時間が経ちすぎたか、修復不能な致命傷だからか。くそっ!」


 頭を体の側に置いて、スキル発動を10回続けたが、少しの変化も起こらない。


「そう、ですか?」


「すまない」


「いえ、騎士様のせいではありませんので……」


 やはりただの知り合い程度ではないようだ。


「騎士様」


 ドレスのお嬢様が、ギブンの剣の鞘を持ってきてくれた。


「感謝する」


 一言を紡ぐ度に神経を削られるが、この喋り方ならなんとか耐えられそうだ。


 “放浪の騎士プレー”をこれからも続けていこう。


「立派な魔法石。最上級の魔法の杖に使われる素材ですね」


 少なくとも鞘に装飾として使われるような物ではない。そうだ。


 もう少し詳しく聞きたかったが、どう考えても長くなりそうな話を、続けられるはずがない。


「お嬢様、馬もダメですね。幸い町まではさほど遠くありませんし、歩くしかないでしょう」


「私は構いませんが、エレラは……」


 御者の亡骸から離れず静かに涙する姿に、ギブンも心を打たれる。


「今の戦闘でレベルが、6から10に上がっている。他は……」


 ギブンは覚えたての癒しの魔法を、心の中で鎮魂代わりに唱えた。


「ああ、ああ~……」


 エレラと呼ばれるメイドは号泣する。


 彼は生き返ったわけではないが、無惨だった亡骸が綺麗な姿に戻った。


「しまった!」


 生き返るのならともかく、その叶えられない希望を持たせてしまった。


 ギブンは彼女の壊れかけの心に、トドメを刺してしまったのではと、胸が苦しくなる。


「ありがとうございます騎士様。これで、これで彼の魂は浄化されます。本当にありがとうございます」


 エレラはギブンの手を取り、心から感謝した。


 それがギブンの心臓を止める行動とは気づきもせずに。






 死んでしまった馬を街道沿いに埋め、しばらく護衛が来るのを待ったが来ない。


 100匹以上のゴブリンの群れに遭遇し、襲い来る魔物を馬車に近づけまいと、その場に留まり足止めをしてくれたが、合流する事はなさそうだ。


 安否を確かめる必要もあるのだろうけど、3人を残して見に行くことはできないし、危険が残る恐れのある場所に連れていくこともできない。


 後ろ髪を引かれながら、町へと歩き出そうとするお嬢様方の足を止めさせ、ギブンは馬車に乗ってもらう。


「何をなさるのですか?」


「まぁ、見ていてください。お嬢様」


 すると馬に代わって、ギブンは馬車を引っ張ると、馬よりも早く町にたどり着いた。


 なんとはなしに馬車に結界を張った。それが功を奏したのか、衝撃はほとんど感じず、お嬢様方は快適に過ごす事ができたそうな。


「先ほども今も、大変失礼しました」


 さっきギブンを追い出した門番に、頭を下げられてしまった。


「まさか領主様のお客人とは知らず、申し訳ございません。どうぞこちらへ」


 見事な掌替えしだが、そんなギブンに待っていたのは、新たな鑑定の洗礼だった。


 とその前に。


「領主様ぁ~!?」


「の娘です。名代として赴いていた王都からの帰りに、ゴブリンの大群に襲われてしまったのです」


 年の頃で言えば13歳。フロワランス・フォン・エバーランス嬢は、ぜひ領主である父親に会って欲しいと言うが、身分が証明されていない者を、町の中に入れるわけにはいかない。


 これは領主が定めたルールで、たとえそのお嬢様であっても覆す事はできないと言われてしまった。


「まずいよな。ピシュ様、どうしようもない時は呼べ。って言ってましたよねぇ~」


「どうかなさいましたか、ギブン様」


「いや、こちらの事だフラン嬢」


 今度の鑑定は神具“審判の宝珠”を使ってのもの。


 ギブンが取得する隠蔽のスキルが、たとえ女神の加護を受けていようと、誤魔化しの利かないアイテムだという。


「すごいですね」


 フラン嬢は可能な限りの権力を行使して、鑑定現場に立ち会った。


「レベル10でこのステータスは驚きだが、それよりもこのレベルではあり得ない魔法が使えて、剣も達人級なんだすよね」


 ギブンはステータスは女神の力と本人の魔力で、神具をも騙し、レベルに見合った数値を映し出した。


 お嬢様が嬉しそうにペラペラ喋らなければ、目立たずに済んだはずなのだが。


「剣と鎧のお陰だ」


 女神からもらった武器を家宝と偽り、全ては装備の為だと誤魔化した。


 ギブンは「自分はまだまだ駆け出しなので、そっとして欲しい」と、ここまでを伝えるのに10分もかかったが、門番は苦笑いしながら首を縦に振った。


「これが身分証明です。これがあれば、王国のどの町に行っても、不審者扱いをされる事はありません」


 なるほど、不審者として町を追いやられたのかと、この時初めて知るギブンだった。


「それではギブン様、我が家へ参りましょう」


 森の中の出来事を、領主に報告しなくてはならないと言われる。


 これもまた鑑定以上に外せないイベント。そう、ゲームイベントと思えば、なんとか心臓を落ち着ける事ができる。


「ナビア、屋敷に戻ります」


「かしこまりましたお嬢様、新しい馬車と御者も来ております。こちらへ」


「行きましょう、ギブン様」


 第二の人生、新しい自分。新たな世界と胸躍らせながら緊張していた。


 できる事なら目立たず生きていきたい。


 冒険者ギルドなんかがあれば登録して、細々とその日暮らしのクエストをこなして、森をさまよっていた間はそう思っていたのに。


 思いの丈とは裏腹に、流されるままに馬車に乗せられ、領主の住まう邸宅へ。


 この時ギブンは今までのどの場面よりも、ピシュの存在を欲して、相談したいと願ったが、天使が応えてくれる事はなかった。

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