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転生ぼっち  作者: Penjamin名島
118/121

STAGE☆118 「ぼっちとぼっちの一騎打ち」



 ブラックワイバーンの鱗は、緑と赤の飛竜とは違い、ジオウの剣を弾き返す強度をもっていた。


「かすり傷程度ってところか……、だったら」


 ジオウは黒飛竜の魔法耐性を見極めようと特大の火球を生みだす。


 さらに雷の魔法を火の玉に打ち込み、竜巻を発生させる。


「いけ!」


 更に無詠唱で魔弾を生み、風のバレルで加速して飛竜にぶち当たる。


「どうだ!」


 竜巻も魔弾も着弾し、爆炎が飛竜を包み込む。


「くっ!」


 飛竜の羽ばたきで煙は晴れ、ダメージがない事が確認できる。


「耐えたか……、ヤバっ!?」


 ブラックワイバーンはお返しにとブレスを吐く。


「避けられない!?」


 ジオウは盾を構える。天武の鎧と共に手に入れた堅護の盾だ。魔力を込めれば目に見えない大きな壁が生まれる。ブレスは勇者に届かなかった。


「いつまでもこんな足止めを受けていられるか!」


 ジオウは大きく地面を蹴り、一気に飛竜との距離を詰め、許容ギリギリの力を蓄えた聖剣を振り下ろした。






「まさかブラックワイバーンをこうも簡単に倒すとは……。もしかしたら赤龍や黒龍も倒せるんじゃあないのか」


 勇者は魔王を倒せる力を持っているかもしれない。


 ギブンは勇者の限界を知れるならと、かなりリスキーだが姿を現すことにした。


「……お前がここのぬしか?」


『……』


 仮面をつけたギブンは無言で佇んだ。


「やろうってのか? これ以上時間をかけたくないからな。速攻で殺すけど、恨むなよ」


 飛びかかるジオウの剣筋をギブンは辛うじて目で追う事ができ、偶然に振り上げた剣で受け止める事もできた。


 ギブンの剣の腕は仲間の中でも3番目、オリビアやバサラにはどうあっても勝てない。


 判断材料には十分ではないが、勇者の剣技は間違いなくギブン以上。ネフラージュ様の加護がなければ、今ので真っ二つにされていただろう。


『お前も女神の加護を受けているのか、勇者ジオウ』


「なんだなんだ、ボイスチェンジャー使ったみたいな、気持ち悪い声出しやがって」


 正にそれをイメージして作った仮面だ。これでジオウはギブンの性別の判断も付かないだろう。


「気持ち悪い奴だ」


 二度、三度と剣を交えるが、ギブンは圧されて半歩下がった。


「お前、魔王軍だよな。強いな! けど俺の敵じゃあない」


 ジオウは一気に勝利をもぎ取ろうと、頭上に剣を振りかぶった。


『何を焦っている?』


 膝をついたのは勇者ジオウ、気合いが張りすぎて動きが大きくなったところを、ギブンの生み出した火矢を打ち込まれて、避ける事もできずに十本が突き刺さった。


「俺が焦っている? ……そりゃあそうだろう。仲間の危機なんだからな」


 テンケの情報に寄れば、ジオウが死ねばセーブポイントまで戻される。その時にパーティーの仲間も一緒に戻るらしい。


 ジオウが気にしているのは、オリビア達をパーティーに入れた事で、外された3人の事だろう。


 ここでジオウが倒れれば、ダンジョンに3人は取り残される。それを気にしているのだろう。


『お望み通り、さっさと終わらせてやろう』


 ギブンは麻痺の魔法をかけ、逃げられないようにして、先ほどジオウがしたように剣を構え、躊躇なく振り下ろした。


「まだだ……」


 雷魔法を喰らって、指一本動かせないはずなのに、狙われた頭を逸らして左の肩で剣を受けた。


 肩宛が砕け散るが、ジオウにダメージはないようだ。


 痺れで落としてもおかしくなかった、聖剣を振るう勇者。


『まだそんな力が残っているのか』


 バックステップで回避できたが、ジオウが万全だったなら、今のでゲームオーバーだっただろう。


「くそ、まだ痺れが残ってやがったか」


 魔法の効果はあったようだ。けれど思っていたほどではない。


 最後に死に戻りを確認するつもりだったが、そう簡単ではない。


 ギブンは更に麻痺魔法を重複する。


「またか!?」


 今度こそ動けないであろう勇者に、剣に火魔法を付与して斬りつける。


「残念だったな。今度はお前が大振りになってるぜ」


 ジオウは制限なんて受けていない動きで、ギブンの左肩から右脇腹を斬り裂いた。


「なに?」


 ジオウに斬った感触はあった。


「オーガじゃないか!?」


 斬ったのは魔物、仮面の男はジオウの正面、10メートルも離れた場所にいる。


「……空間転移か」


 離れていく姿を見ていない。一瞬で身代わりを置いて移動したのだ。


『もしかして……』


 ギブンは透かさず遠距離発動魔法で火の矢を勇者に当てるが、矢は命中のと同時に分散した。


『その鎧、覚えた魔法を無効化するのが真の能力か』


「これは天武の鎧という。魔法耐性は見ての通りだ」


 だがおかしい。これまでの冒険で火魔法や雷魔法を受けた事がない。なんてことがあるはずがない。


 単に天部の鎧を手に入れたのが、ごく最近なのかもしれないが、同じ魔法が効かなくなったのは間違いない。


『厄介だな……』


「いいかげんにしやがれ! 俺は遊んでいる暇はないんだ」


 ギブンにとってもここが最終決戦場ではない。十分な情報も得られた。ここが潮時かもしれない。


 できれば死に戻りを見ておきたかったが、それは諦めよう。


 勇者をダンジョンと共に消せはするが、そうすれば救えない3人がいる。


『今日はここまでにしよう。このダンジョンは間もなく消滅する。決戦の場は魔王城だ』


 ギブンはダンジョンを操作し、勇者との間に壁を作りだした。


「いない! ちくしょ~」


 岩塊が降ってきてもおかしくない爆炎魔法で岩壁を吹っ飛ばすが、すでにギブンはおらず、ジオウは目の前にある通路に飛び込んだ。


 焦りのあまり考えなく走り出したが、仲間と合流でき、真っ直ぐ外に出る事もできた。


 脱出するまで様子を見守っていたギブンは、ダンジョンを消滅させた。


 突然の事にざわつきもしたが、攻略対象も消えてしまったし、勇者パーティーは町に戻る事にした。


 したのだが、町はバサラ率いる魔王軍の進軍で、見るも無惨に荒れてしまっていた。


 ボー然としながらも、ジオウは町に置いてきた仲間たちを見つけ、しばらく街の復興の手伝いをすることを決意する。






「お疲れさん。みんな無事で良かった」


 ギブンは合流場所にしていた移動要塞サルーアに戻り、待機していた助手のフリュイに悪戯をしていたエミリア、情報集めに奔走していたテンケ、魔王軍を率いていたバサラに、龍人兵団と参加していたビギナとレドーラが出迎えてくれた。


 周囲警戒のため、ゴーレムのエレはサルーアの運転席にいるらしい。


「それで魔王軍と龍人兵団は?」


「先に魔王城に向かわせた。龍人も一緒にな」


 バサラは全てを副官に任せて、ビギナとこちらに合流してきた。


「それじゃあ、話を聞かせてもらおうかしら」


 エミリアはセクハラをやめてテーブルに着き、紅茶を口にする。


 フリュイは急いで乱れた衣服を正して、逃げるように運転席に入っていった。


「それで、勇者はどうだったの?」


 ギブンはエミリアの前に座り、残りのメンバーも腰を下ろした。


「すごかったよ。追いつめる事はできたと思うけど、あの対応力は恐るべしだね」


「そう、なにか対策が必要なようね」


「テンケ、なんかいい情報はないか?」


「いい情報ってなんすか」


 余裕がありそうなギブンのいいかげんな質問に、鼻で笑ってテンケは勇者情報を知る限りを語った。


 説明が終わるまでギブンは黙って聞いていた。そしてなるほどと頷き。


「つまり女神アブローシュアンと女神ネフラージュ様の恩恵は、どちらも同じくらいってことだな」


 それは当然である。ゲームバランスを考えるなら、どちら側のプレイヤーも公平でなければならない。


 問題なのは最初から最終の装備を受け取ったギブンとピシュと違い、ジオウが勇者装備を手に入れたのはホンの数日前の事。


 だから旅半ばまでしか同行していないテンケには、その装備の性質は分かっていない。


 ここ数日の聞き込みで手に入れた情報に、魔法をキャンセルするらしいという噂はあったらしいが。


 ギブンが想像した通り、どれも厄介な装備らしい。


「とりあえずは魔王城に戻って、最終決戦に向けて作戦を立てないとだな」


 ギブンはサルーアをグレバランスに向かわせて、バサラ達の戦果みやげばなしを聞かせてもらうのだった。

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