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第三章突入



今日は王太子殿下からのお誘いで王宮でお茶会が開かれている。王太子殿下と私だけのお茶会。王太子殿下はあの日からずっと私を心配していた様だが、心配はご無用だ。たわいも無い話をしながら紅茶を飲む。紅茶の毒味は既に済んでいる。


「ナディア嬢、私はどうしたら良いのでしょう……」


か細い声でぼそりと俯向き加減で私に何かを問う王太子殿下。大方、王宮での身の振り方だろう。


ルイーズ様が前国王の代わりに王太子殿下が成人するまでの後釜を務めている。そのせいで王妃の浪費が制限され、王妃が荒れていると噂で持ちきりだ。王太子殿下の肩身も狭くなるだろう。


「私には王太子という名前の道しか残されていないのに、いつそれが壊れてしまうのか怖いのです」


「……王太子殿下、私はかけがえのないものが嫌いです。他人は簡単に言う。『これ』がいなきゃ生きていけないとか、『これ』だけが生きる理由だとか、『これ』こそは自分の生まれてきた目的だとか、価値を付ける。なら『これ』が無くなったら自分の価値はなくなるのですか?その人の人生はそれだけだったのですか?………なんともつまらない」


「……ナディア嬢」


王太子殿下の縋るような視線を無視し甘ったるいクッキーを喰べる。人生もこんなにも甘かったら良かったのに。


新しく注がれた紅茶を一口含む。毒味した筈の紅茶から毒の味がするが、私には耐性があるので効かない。半分飲み干した所で注いだメイドを呼ぶ。

顔色が悪いようだが私には関係ない。


「ねえ、私紅茶の飲み過ぎでお腹がいっぱいになってしまったの。残すのも勿体無いし、貴女が飲んでくれる?」


「……そんな恐れ多い……お許しください……」


「どうして謝るの?飲み残しなのは申し訳ないけど……さあ、飲んで?」


メイドは震えながら私が差し出したティーカップを震える手で受け取り、息を飲む。そして決意したかの様に一気に半分残った紅茶を飲み干した。


……馬鹿な子。私が毒に耐性があるとも知らず、毒など入っていないのでは無いかと思い飲み干したのだろう。直ぐにメイドは血を吐き倒れる。紅茶半分程度だから死にはしないだろう。


「ナディア嬢!!直ぐに医者を!!早く吐き出して下さい!!」


「大丈夫ですよ、王太子殿下。毒は一種のスパイスみたいなものですから」


「……どうしてナディア嬢の紅茶に毒が……」


「ふふっ、王太子殿下は聡いので誰が犯人か分かってらっしゃるのではないですか?」


王太子殿下は俯き、小さい拳を震わせて黙り込む。それはそうだろう、自分の母親が私に毒を盛るように指示しているなんて信じたくないだろう。


メイドが血を吐き倒れた事でザワザワと人が集まり、メイドはそのまま医務室に運ばれていった。



私はそれを横目に上機嫌に歌を歌い始める。





どうして苦しみと哀しみの輪廻は 続くの


どうして哀しみと憎しみの連鎖は 止まらないの


滅び壊れていく記憶が 私に 囁く


逃げる事も 叶わず


哀しみと憎しみに囚われ 苦しみに縛られ


久遠の 夜を彷徨い歩き続けてる


砕け散る世界 静寂に溺れ


逃れられぬ悪夢 私の中を埋め尽くし


惑う心 歪み狂い乱される


狂った時が私を 呪縛し


壊れて 壊して、繋がり 繰り返す    』




どうせ、王妃が腹いせに私に毒を盛る様に指示したのだろう。


「王太子殿下、貴方はつまらない人間に成り下がるのですか?」


「私は……」


「王太子殿下、毒食わば皿まで……ですよ?」


まるで母親が子供をあやす様な優しい声で、私は悪魔の言葉を王太子殿下の耳元で囁く。それを聞いた王太子殿下はフラフラと私の腰元に抱きついてくる。まるで子供が母親に甘える様に。私は王太子殿下の頭を撫でながら嗤う。


「ナディア嬢、先程の歌をもう一度聞かせてください」


「ええ、良いですよ」


その場に座り込み、私の膝の上に頭を置き横になる王太子殿下の頭を撫でながら先程の歌を歌う。優しく囁く様、子守唄の様に壊れた歌を歌う。




どうして苦しみと哀しみの輪廻は 続くの


どうして哀しみと憎しみの連鎖は 止まらないの


滅び壊れていく記憶が 私に 囁く


逃げる事も 叶わず


哀しみと憎しみに囚われ 苦しみに縛られ


久遠の 夜を彷徨い歩き続けてる


砕け散る世界 静寂に溺れ


逃れられぬ悪夢 私の中を埋め尽くし


惑う心 歪み狂い乱される


狂った時が私を 呪縛し


壊れて 壊して、繋がり 繰り返す    』





王太子殿下は目を閉じ、涙を流しながら私に聞く。


「……何という名前の歌なのですか?」


「さあ……何という名前でしたか……王太子殿下の解釈で結構ですよ」


「ナディア嬢……貴女は優しく、残酷な人だ……どうか私の事はルネスとお呼び下さい」


「命令ですか?……それともお願いですか?」


「……お願いです」


私は嗤いながら王太子殿下の頭を撫でる。それは蜜の様に甘い毒。私はそれを与え続ける。


「それではルネス殿下……今は全て忘れて眠っても良いのですよ」


ルネス殿下は私のお腹にキツく抱きつき眠りにつく。願わくばルネス殿下にとって良い夢であるように。



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