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※誤字脱字報告有難う御座います!



その後、ルゥも王宮での仕事と普段の公務で忙しそうだ。でも、必ず屋敷に帰ってきて私と一緒に寝ている。ルゥはすぐ泥のように眠ってしまうのであの日以来手は出されていない。


足りない、ルゥが足りない。此れが寂しいという感情か、ただの生理的欲求の欲求不満というやつか。まあ、何方にせよ私の中の欲求が膨らむ。


壊したい、壊されたい。普通なら愛したい、愛されたいなのだろう。だが、私は違う。時々無性にルゥを壊したくなるのだ。私だけを見て、私だけに言葉を紡ぎ、私だけに触る。他のものを見るルゥの目を抉り出したい、他の人に話しかける声を潰してしまいたい、私以外を触る手を切り落としてしまいたい、逃げられないよう足を切り落としたてしまいたい。勿論そんな事はしないが。


やはり私もあの父の娘なのだろう。私もまた歪んで狂っている。皮肉なものだ、容姿だけではなく他の所も似てしまったらしい。


隣で眠るルゥを見ながら、起こさない様にルゥの目の下にあるクマを撫でる。疲れているだろうに態々屋敷に毎日帰って来なくても良いのに。するとルゥの瞳が開かれ瞳の中に歪んだ笑みを浮かべる私がいた。


「起こしちゃってごめんね?」


「また何を考えてた?」


「ルゥの目玉をくり抜きたいって思ってた」


「えげつないな。もう少し可愛らしい事は言えないのか?」


「ルゥの手足を切り落として、私だけのものにしたい。どう?可愛らしい?」


「よりえげつなくなってるぞ。ったく、さっさと寝ろ」


「もう少ししたら寝るから」


ベッドからするりと抜け出して煙草に火を付ける。やはり煙草は良い。感情を鎮めるのにはやはり煙草がなければ。吸っている間は心が凪の様に静まる。


するとルゥもベッドから抜け出して煙草を吸い始めた。ぼんやりと外の月を見上げている。


幸せな日々を過ごすほど、飢えた獣の様になる。足掻いて、足掻いて血塗れになる。でも私は変わらない。全て知った様な口ぶりでいつも生きているが、私は弱虫で本当は一人じゃ何も出来ない。


本当は知っている。幸せの中で孤独を演じてる私がいる。解ろうともせずに何時も誰かのせいにしてるだけで。でも、ルゥとずっと一緒に居たいのは本当だから。こんな私でも良いなら側にいさせて欲しい。

 

煙草の煙を燻らせながらそんな事を考えていた。私もルゥから視線をはずし、ぼんやりと月を見上げる。ルゥて初めて話した日もこんな月だったなと思う。


「お前と初めて会話した日もこんな夜だったな」


「ふふっ、私も今同じ事を考えてた」


「そうか……今はまだ忙しくて婚姻が出来てないが、必ず立派な式をあげるから待っててくれるか?」


「んーー……どうだろう?待ちくたびれて逃げるかもね」


蠱惑的に微笑むが、嘘だ。ただ、私は幸せから逃げているだけ。怖いのだ。大事なものが掌から零れ落ちて壊れるのが。 


「怖いか……?」


「何が?」


「大丈夫だ。お前はちゃんと分かってる筈だ。だから大丈夫だ。それでも怖いなら俺に全部吐き出せ、聞いてやるから」


「……そのうちね」


誤魔化す様に、煙草を灰皿に押しつけて消す。恋愛感情とは本当に厄介だ。若干の狂気を含むから……だが、狂気の中にも若干の理性が含まれる。だから私は私の心を持て余してしまう。


感情を理性でコントロールするのは難しいというのに。だから私はこれまでも、これからも感情と言う名の狂気を殺しながら飼い慣らす。


ベッドにルゥと二人で入り私はルゥに背中を向けて横になる。すると、後ろからすっぽりと抱え込まれるように抱きしめられる。温かい……このままずっと朝が来なければ良いのに。貴方が私を弱くする。


何故か涙が溢れ、この感情はなんなのだろうと考える。でも今はこの感情に名前を付けるのは辞めておこう。こんな形で私が壊れてしまわぬように。私は滅茶苦茶に何も考えられない程壊れてしまいたいのだ。


「ねえ、ルゥ……私の事愛してる?」


私の問いにルゥは私をキツく抱きしめてくる。まるで私に縋るように。


「……愛してる、俺はお前を……愛してる」


「そう……」


ルゥと出逢ってから全ての事に意味があることを知った。ルゥは私を愛してくれている。私は……?


体の向きをルゥの方に向ける。私は両手を優しくルゥの首を捉えて優しく締め付ける。涙で歪んだ顔で、震える声で言葉を紡ぐ。


「ルゥ……私もルゥの事、愛してるよ」


ルゥは嬉しそうに笑いながら、私の体を抱き寄せ隙間が無いほどキツく抱きしめる。


「物騒な愛の言葉だな」


「……嫌?」


「いいや、嬉しい。お前の口から聞けて嬉しい」


ルゥは自分の顔を私の顔に近づけ、額を合わせる。ルゥは本当に嬉しそうに笑い私の涙を拭う。

この人は何故ここまで温かくて優しいのだろう。今さっき首を絞められたというのに。


そのうち目蓋が段々と重くなってくる。私はそのまま温かな腕の中で眠りにつく。


















「ナディア、お前は俺のものだ。誰にも渡すものか」


※お読みくださり有難うございます!


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