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※誤字脱字多かったらすみません!
恐る恐る開かれた扉からひょこりと顔を出したのは金色の髪に碧眼の瞳を持つ少年、王太子殿下だった。何故彼がここに?と顔を傾ける。
「ナディア嬢、今すぐここから出しますね。父上の部屋からこの檻の鍵を盗んできました」
「私としては有難いですが、そんな事をして王太子殿下は大丈夫ですか?」
「貴女はこんな異常な状況でも優しいのですね。大丈夫です、父上は私に興味の欠片もありませんから、どうにでもなります」
王太子殿下はカチャカチャと何重もの鍵を開け、メイド服とかつらを渡して来た。用意周到だなと思いながら趣味の悪いドレスからメイド服に着替える。その間、後ろを向き目を手で塞いでる仕草がルゥと重なって見え、可愛く思えた。
「さあ、ナディア嬢。すぐ王宮から逃げて下さい。……父上は異常です。こんな事許される筈もないですが、申し訳ありません」
「王太子殿下が謝る必要はありませんよ?でも、どうして助けてくれるのですか?」
「……は、初恋の人には幸せになってもらいたいからです……」
「そうですか……貴方は良い王様になれますよ」
王太子殿下の頬にキスを贈り、鬘を被ってメイドの完成だ。王太子殿下は真っ赤になりながらも人目がつかない様、王宮の王族だけが知っている逃げ道まで案内してくれた。
十歳なのにしっかりとしてる。きっと良い王様に彼はなるだろう。
「ここから先は暗いので気をつけてください。しばらく進めば王宮の外に出られます。私は父上の注意をそらす様動きます。それではナディア嬢……お気をつけて」
「王太子殿下、有り難うございます」
王太子殿下に礼をし、暗い道へ足を踏み入れる。転ばぬ様手探りで道をどんどん進めていく。きっとルゥが心配している筈だ。早く行って無事な事を伝えないと、ルゥが陛下に何をするか分からない。ファミア様の無事も確かめなければ。
焦る気持ちを抑え、確実に道を進んでいくと王宮から離れた場所へと出られた。此処から公爵家までは近い。慎重にメイドが使いに出されたようなフリをし公爵家へと向かう。
公爵家の近くまで行くと物々しい雰囲気になって来た。まるで内乱を起こすかの様な。私は顔を下に向けながら涼しい顔をして公爵家の門番のところまで行く。
「そこのメイド、誰からの使いだ?」
私は鬘をとり門番に笑いかける。門番は血相を変え頭を下げた。
「ナディア様!!申し訳ありません!!ファミア様がナディア様が連れ去られたと仰っていたので……」
「私を逃してくれた可愛い男の子がいたから、私は大丈夫。屋敷へ通して?」
門番に門を開けてもらい、ツカツカと屋敷へ入る。使用人達が私を見てホッとしているのが分かる。だが、ルゥの執務室からは何かが割れる音と怒鳴り声が聞こえてきた。思うところ、ルゥが怒っているのだろう。
ルゥの執務室をノックし、返事も待たずに部屋へ入る。執務室にはルゥとルイーズ様が居て、ルイーズ様がルゥを宥めていた様だ。二人とも私を見て驚き固まった。私はコテンと顔を傾け笑う。
「ただいま、ルゥ、ルイーズ様。王宮から無事逃げ出して来ちゃいました」
「ナディア!!無事か!?怪我は?何かされてないか!?」
「痛いよ、ルゥ。趣味の悪い檻には入れられたけど王太子殿下が助けてくれたの」
「王太子が?なんにせよ、良かった……」
ルゥはキツく私を抱きしめる。私は優しくそれにしがみついて笑う。私の帰るべき場所はやはり此処だ。何処に行こうと、何をしていても私はこの場所が良い。温かな腕の中、顔を埋める。
「二人の邪魔をする様で悪いが、ナディア嬢……早速で悪いが話を聞かせてもらえないかい?」
「はい」
名残り惜しいがルゥから離れ一連の出来事をルイーズ様に話す。ルイーズ様は顔をしかめ何かを考えているようだ。この方は本当に何を考えているか分からない人だ。敵には回したくないタイプだな。
ルイーズ様は溜息をつき、項垂れる。
「私が腐った王家を嫌い、逃げたツケが回って来たようだな……。幸い王太子は十歳だ。成人するまで私が玉座に座ろう。弟には病気という名目で遠い領地で厳重に監禁しよう」
「はあ……私も言ったのですがね……善も悪もいつか報いを受けると」
「父上、陛下はこのまま大人しくしている様な人間ではありませんよ?」
「分かっている。だが、この国の根本を正さねば、王太子もいつか弟の様になってしまう。これは私の責任だ。そして、お前達の幸せを守る為でもある」
ルイーズ様は早速王宮へ向かう為の準備を始めた。ルゥもそれについてゆくみたいだ。
「今日は何があっても部屋から出るな、何かあったら直様叫べ。見張りのものも付けるが許してくれ、お前を守るためだ」
「分かった、行ってらっしゃい。もし王太子殿下に会ったらよろしく伝えておいてね?」
背伸びをし無事を願いルゥの頬にキスを贈る。あの陛下にどう出るのかは分からないが感情的にならず淡々と物事を進めて欲しい限りだ。
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