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公爵視点※R15

※誤字脱字報告ありがとうございます!




父上を伴って王宮へと足を踏み入れる。王宮は無駄に煌びやかで目が痛くなる。ある程度の贅沢は良いだろう。だが、ここまで贅を尽くす必要は無い。これも王妃の浪費が原因だろう。


使用人に謁見室に通され、玉座に座る叔父、陛下を心の中で睨めつけ見据える。


「顔をあげよ。今日はナディア嬢の件で来たのだろう。態々兄上まで連れて」


「ええ、陛下。単刀直入に言わせてもらいます。ナディアは渡さない、何があってもです」


「ルワン、ルーファスの宝物を欲しがるのは良くない。ルーファスは本気だ……お前を玉座から引きずり落とす姿は見たくない」


父上が早々に切り札の王宮の闇が書かれた一部を陛下に渡した。陛下はそれを無機質な目で見る。


「よく調べたな。そんなにもナディア嬢を離したくないのか……益々欲しくなる。あの美貌、貴族を手玉に取る手腕……ルーファス、お前が望む令嬢を取り計らってやる。だからナディア嬢は私に譲ってくれないか?」


「言いましたよね、何があっても渡さないと」


「私はあの美貌が歪む姿が見たいのだ。組み敷いて滅茶苦茶にして、あの美貌の仮面を剥ぎ取りたい。さぞや美しいだろう」


「陛下……それ以上の冒涜は許しませんよ」


「お前もそうなのだろう?毎夜ナディア嬢を組み敷いて、その姿を暴いているのだろう?」


「……陛下、いえ、叔父上。これ以上冒涜するなと言いましたよね、……?」


ゆらりと感情の赴くまま立ち上がる。その瞬間、父上に腕を掴まれ止められる。


「ルワン、私の可愛い息子と『娘』をこれ以上冒涜するなら、私にも考えがあるよ?」


「ほう、どうすると言うのですか?兄上」


「非常に面倒だが、私が玉座につく方法は幾らでもある」


「ほう、あの面倒な事を嫌い、王の座を拒んだ兄上がそこまで言うとは……」


陛下は何か考えるように顎髭を撫でる。何故そこまでナディアに執着する?このままナディアを諦めれば、何事も無く事が終わると言うのに。それになんだ、このドロドロとした気持ち悪い執着心は……まるでナディアの父の様な歪さを感じる。


「ルワン……何故そこまで私の娘に執着する?何がお前をそうさせるのだ?」


「この腐った王家に何十年もいれば歪みもしますよ、兄上。ナディア嬢なら、理解できると思うのだ。暗闇の中、鳥籠に囚われ、堕ちていく私の気持ちが」


「ナディアは無理矢理、鳥籠に入れる人間の気持ちを汲んだりするほど優しくは無いですよ」


「ほう、ルーファス。お前ならナディア嬢を全て理解出来ると?」


「全て理解?私達は違う人間だ……理解は出来なくても側に居ることは出来る」


「お前達に分かるはずが無い。歪んだ世界で生きてきた人間の孤独が側に居るだけじゃ満たされない虚無感が」


「勝手にナディアで貴方の孤独や虚無感を満たさないで欲しい。まるで子供の我儘だ」


「はははは!!!!子供の我儘か。そんな可愛い物じゃない!!」


「ルワン、娘は何があっても渡さない。ルーファスに送った手紙は全て燃やさせてもらうよ。さあ、話は終わった。帰ろうか、ルーファス」


「……はい、父上」


ギロリと陛下を睨め付けるが、陛下は無機質に嗤うだけだった。このまま簡単に諦めるとは思えない。やはり陛下はナディアの父と似通った部分がある。




ーーーーーーーーーー




王宮から帰って来て思わずグラスを壁に投げ壊してしまった。何故こんなにも苛立つのだろう。


替わりのグラスに強めの酒を注ぎ、一気に飲み干す。喉が焼ける様な痛みがする。今日は心が落ち着かない……ナディアにはすまないが顔を出さず寝てしまおう。


寝室に行き、ベッドへと倒れ込む。陛下の中でナディアが汚されていると思うと怒りが湧き上がってくる。だが酒の力もあり、直様眠気が押し寄せてくる。俺は素直にその眠気に身を委ねた。


夢の中でナディアが優しい顔で俺の頬を撫でている。夢の中のナディアに手を伸ばし口付けようかと思っていると伸ばした手が握り込まれ、これは夢じゃないと理解した。


薄いネグリジェを身に纏い微笑む姿はまるで天使にも悪魔にも見える。目に毒なのでシーツをナディアに巻きつけ横になるが、ナディアはいつもと違った。


「……何のつもり?据え膳食わないなんて不能?」


「……まだ婚姻前だろ。頼むから俺を試す様な真似はやめてくれ、あと俺は不能じゃない」


「別に婚約者との婚姻前の行為は禁止はされてないよ?避妊薬も飲んできたし、別にルゥを試してる訳じゃないんだけど」


「どうした?母上に何か言われたのか?」


「いや?言われたのは私の中の『お父様』。ねぇ、ルゥ……私の胸の穴を埋めて?滅茶苦茶になって分からなくなるくらい」


「俺はお前を大事にしたい。馬鹿なこと言ってないで寝ろ」


「ねぇ、私が狂わない様に繋ぎ止めて。確かなものが欲しいの」


するりとシーツから抜け出し、生まれたままの姿になり俺にまたがる。


ナディアは天使の様に微笑み、ゆっくりと抱きついてくる。それを壊れないようキツく抱きしめる。ナディアは悪魔の様に囁く。


「ねぇ?ルゥ、全部溶けて一つになろう?」


どこか危うさを纏うナディアが壊れてしまわぬ様出来るだけ優しく抱く。陛下の言葉が頭をよぎるがナディアという存在の前では何の意味も持たない。


もう、言葉は要らない。


カーテンの間から見える満月だけが知っていれば良い。




お読みくださりありがとうございます!

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