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※誤字、脱字多かったらすみません。
今日はルゥのご両親である王兄殿下夫妻が来る。ルゥを産んで育てたご両親、緊張よりも興味の対象である方が強い。どんな『家族』なのだろう。
「ナディア様、体調が良いからってあまり歩き回らないでください」
「ジェシカ、もう体は大丈夫なんだからそんなに心配しなくても」
「もう!隠れて煙草吸ってるの知ってるんですからね!」
「流石ジェシカ、よく分かってる。大丈夫、今日はまだ吸ってないから」
そんなやり取りをしながら鏡で全身をチェックする。下品にならない様な薄緑色のドレスに、髪はジェシカに任せたらドレスに合う様に結い上げてくれた。
すると屋敷が騒がしくなってきた。遂にルゥのご両親が来たのだろう。一度深い深呼吸をし、ゆったりとした動作で玄関口に向かう。すると、ルゥにそっくりな壮年の男性と、上品な黒髪の女性が此方を見つめていた。私はカテーシーをし、二人に近づいていく。ルゥの父親であろう王兄殿下、ルイーズ殿下と母親であるファミア王兄妃が何故か悪意も打算も無いキラキラした目で私を見てくる。
「君がルーファスの宝物かい?」
「初めまして、伯爵家のナディア・エヴァンズと申します。ルーファス様の宝物かは、分かりかねますが」
困った様に首を傾げ笑いかける。すると、ファミア様が少し興奮したように私の手を取った。突然の行動に悟られないよう一瞬警戒する。ファミア様は目をキラキラさせ嬉しそうに笑う。
「ナディアちゃん、ずっと会いたかったのよ!!ルーファスがナディアちゃんに中々会わせてくれないから、屋敷に乗り込もうとしてたくらいなのよ」
「有難うございます、ファミア王兄妃様」
「やだ、もうお母様って呼んで頂戴!!こんな可愛らしい子を射止めるなんて中々やるわねルーファスも」
「ファミア、ナディア嬢が驚いているからその辺にしておきなさい。それと私の事はパパと呼んでくれると嬉しい」
「あらやだ、私ったらつい。ずっと娘が欲しかったから興奮しちゃって。ナディアちゃん、許してね」
「は、はあ……パ…パ?……お母様……?」
私は余りの勢いに思考が停止してしまった。まだお母様なら分かるが、ルイーズ王兄殿下の『パパ』はどうかと思う。ルゥからも聞いていたが、かなり変わっている。今まで会った事の無い人種だ。特にルゥとそっくりなルイーズ王兄殿下をパパと呼ぶのは複雑だ。
困惑していると、背後から小走りでやって来たルゥが助け船を出してくれた。
「父上、母上、ナディアに会えて嬉しいのは分かるがあまり天然な言動で困らせないでやってくれ」
「別にいいだろう。もう娘の様なものだ。長年の夢だった娘にパパと呼ばれる事が叶ったんだから」
「そうよ、今迄こんな可愛らしい子を隠すなんて。ルーファスったら大事なものを隠す癖直しなさい!!」
これがルゥの『家族』、見た事の無い形の『家族』。何故だろう、ルゥに羨ましいと、憎らしいと感じてしまったのは。私が父に似てなかったら、生まれが違かったら……思考が仄暗い方へと引っ張られる。
「ナディアちゃん、私と女二人だけでもお茶しない?」
ファミア様が片目を瞑りウィンクをする。私は思考の海からハッとし、人形の様に優しい笑みを浮かべ、頷く。ルゥとルイーズ様が何か話があるのだろう、ファミア様が気を利かせてくれたのだ。
庭のサロンでお茶会の準備の指示を使用に出して、ゆったりと庭へ向かう。その間もファミア様からのキラキラした無害な視線が少し居心地が悪かった。
庭のサロンに着き、ジェシカが淹れた紅茶を飲んで一息つく。
「有難うね、私達のルーファスを選んでくれて。昔の婚約破棄からあの子ったら女嫌いの気があったから、結婚できるか不安だったのよ」
「いえ……ルーファス様が私を選んで手を伸ばしてくれたのです」
「いいわあ……お互い思い合ってて。私なんて厳しい王妃教育を何年も受けたのに、ルイーズ様ったら王になる権利を捨てたじゃない?流石の私も顔引っ叩いてやったわ。どれだけ私が苦労したか……でもね、これで良かったとも思うのよ」
クスクスとファミア様が笑い綺麗な動作で紅茶を飲む。流石、王妃教育を受けただけある。最初は驚いたが、節々の動作が洗練されているのが分かる。
「そのせいで最初は険悪だったの」
「そうなのですか?私には仲睦まじく見えましたが」
「お互いが少しずつ歩み寄って、今の形があるのよ」
「そう……ですか。……その形は愛ですか?」
「ナディアちゃんはどう思う?」
分からない。私の知らない『家族』の形。それは家族愛なのか?それとも親愛か?それとも、父が言っていた真実の愛とやらか?
「ナディアちゃん。自分が信じたものが愛なのよ?きっといつか分かる時がくるわ。ああ、これが愛なのかって」
「そう、なんですか……」
「少なくともルーファスに気があるなら大丈夫よ。あの子ナディアちゃんにベタ惚れだから」
その言葉に思わず苦笑いを浮かべてしまった。自分が信じたものが愛とは、私は少し恐ろしくも感じてしまった。私がもし信じた愛が父や母の様なものだとしたら。
私は狂わずにいられるのか。
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