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※誤字、脱字多かったらすみません。
ベッドに横たわりながら、最近令嬢達の中で流行っている恋愛小説を読む。煙草を禁止させられている今、私が出来ることなど限られている。
普段ならあまり恋愛小説は進んで読まないのだが、ルゥとの関係が少しづつ変わってきてる今、良い参考書になるかもしれない……と思ったが、私はあまり甘ったるい砂糖が詰まった小説は苦手みたいだ。
特にこのヒーロー役の男は意味がわからない。顔が整っていてモテるならばそれで良いではないか。それを有効活用すれば良いものを。周りに寄ってくる女は自分の顔しか見ていない、自分の心など見ていないと文章には書いてあるが、当たり前ではないか。人間がまず大概最初に見るのは顔や見た目だ。
自分の顔に好意をもたれて何が気に食わないのか。心を見て欲しいのならば、周りに自分の心を見て欲しいと吐露すれば良い。だがこのヒーローはそれをしなかった。それは何故か?薄っぺらいプライドを振りかざし、本当の自分を覗かれ、嫌われることを恐れたからではないだろうか。
まあ、この世の中に本当の自分を晒け出せる人間はどの位いるのだろう。
そこにありがちな平凡なヒロインが現れ、ヒーローの本質に偶然触れ、ヒーローはヒロインに興味を持ち恋に落ち、婚約者を捨てて結ばれる。だが、別にヒロインじゃなくても良かったのかもしれない。ヒーローの婚約者であった女の末路はどうなる?なんとも身勝手で本人達だけが甘い愛だ。
ヒロインは道端に咲く花の様な人間で 、ヒーローが気付かなければ無意味なただの花だ。正にシンデレラストーリー。……だが婚約者の女に自分の心を吐露していれば、また違った結果があったかも知れないのに。
私が婚約者であったのなら、私の邪魔をするならば道端の花など踏み潰す。
だが、作者がそうしたかったのだからしょうがない。これは私の感想で押し付けだ。
読んでいる途中で頭が痛くなり本をとじる。この本の結末はお決まりの主人公達だけが幸せな結末だ。この本のヒロインによれば『人生には幸せが満ち溢れている』そうだが、もしそうなら私が生きてきた道は人生とは呼べない代物だろう。
母に自殺され、父には狂愛を向けられ、幼馴染には加虐愛を、異母妹には脇腹を刺され……でもルゥの傍に居られる。私の歩んできた道端は幸せで満ち溢れてはなかったが、今は日々充実している……が。ルゥは最近、私に隠し事をしている。薄々気づいているが、恐らく王家絡みだ。大方、私に関する何かしらの打診でもきているのだろう。
もしも、公妾だとしたら誰が公妾などなるものか。あんな面倒な仕事をしながら、王妃に恨まれる愛人になどなりたくはない。王妃といえど、女は女だ。女は恋と復讐に関しては男よりも野蛮な生き物である事を周りは分かっていない。それに、私にはルゥがいる。いまさら離れろと言われても無理だ。
私が動けないうちにルゥはこの件を片付けるつもりだろう。ルゥなら上手くやるだろうが、少し胸騒ぎがするのは何故だ。この胸騒ぎの正体が分からなくて常に不安がつきまとい、いっそのこと公妾になってしまって、閨で陛下を毒殺くらいしてしまいたいくらいだ。腹上死に見せかけるくらいなんてことない。
私はロウ爺に処方されている苦すぎる薬を飲んだ後シーツを頭から被り、傷に気をつけながら、まるで胎児の様に膝を抱えて丸まり、理性と狂気を天秤に掛けて遊ぶ。
ルゥは陛下相手にどう出る?もし私が先程考えた案を出したら乗るだろうか。いや、乗らないだろう。最近のルゥは、私の行動をさり気なくだが監視している。そのルゥの行動に少しだけ嫌な懐かしさを覚える。
だが、伯爵家にいた時の檻と、ルゥの檻には違いがある。檻が閉まっているか開いているかの違いだ。出来ればルゥには檻を閉めないでいて貰いたいものだ。
クスクスと笑うと傷口が痛む。すると頭から被っていたシーツを誰かに捲られた。
「何を考えて笑っている。また碌でもない事じゃないだろうな」
「ルゥの事だよ?」
呆れたような表情で精悍な顔を歪ませ私を見下ろすルゥがいた。そんなルゥに蠱惑的に微笑み、まるで悪魔の囁きのように優しく話す。
「ねえ、ルゥ。私が陛下を腹上死にでも見せかけて死なせる?」
「絶対に駄目だ。一瞬たりとでもお前が誰かのものになる位なら、俺が殺す」
「ルゥ……人は変わっていく生き物だけど、ルゥは私の父の様にはならないでね」
「なるわけ無いだろ」
眉間に皺を寄せ不機嫌なルゥの目が一瞬揺らいだ。これはどうとれば良いのだろうか。この胸騒ぎの原因はこれなのか?ルゥには父の様にはなってほしく無い。私が好きなのは優しく暖かく、悪い大人のルゥなのだから。
「ナディア、俺を信じて大人しく療養しろ。絶対にお前を守ると約束する」
「……わかった。ずっとは無理かもしれないけど、待ってる」
まるで、小さな子供の頃にエルヴェと交わしたような些細な約束をルゥと交わした。
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