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公爵視点

※誤字、脱字多かったらすみません。



ナディアが婚約者になり、この屋敷に住むようになってから使用人達が色めき立ち、料理人はナディアの好き嫌いをこと細かく調べ、使用人達は掃除などホコリひとつ落ちてないほど磨き上げ、庭師はナディアの好きな花に全て植え替えてしまった。好きにして良いと言ったがここまでする必要があるか?


この屋敷に来た当初は骨と皮だけで死んでしまうのではないかと毎日部屋に顔を出して様子を見に行った。使用人達にもナディアの家庭環境は噂になっていたので、何も言わずに接しているうちに何故かナディアを崇拝する様になった。


初老に入ったばかりの執事のジェイは人を見抜く才能があるが、そのジェイすらもナディアという人物が読めないらしく、逆に手玉に取られるらしい。だが、珍しくジェイがナディアを気に入っているので二人なら上手くやるだろう。


このまま穏やかな時が続けば良かったのだが、ナディアの父、幼馴染、継母が相次いで亡くなり、その後始末に追われた。ナディアの身内の醜聞が広まるのはあまり良くない。


異母妹はナディアが少しばかり気にしていたようなので、継母の件は済ませた。後は自分がどう生きていくか次第だが……この胸騒ぎは何だろう。


暫くすると、元婚約者である侯爵令嬢のカロリーナ・オースティンがまた屋敷に来たらしい。カロリーナは恋人に捨てられてから何度も屋敷に来ては俺の婚約者面をする。何度言っても聞く耳を持たず、父親である侯爵にも言っているのだが、父親の話も聞かないらしい。


それがナディアと対話したらしく、その後潔く今までの行動を詫びて修道院に入ると言い出した。恐らく、ナディアは言葉ではなく、何かしら行動したのだろう。何をしたのかは聞きたい様な聞きたくない様な。


見舞いのつもりで毎日花をナディアの部屋に飾ったのだが、ナディアに部屋を花屋にするなと言われてしまった。確かに花の色々な香りが混ざりあって若干気持ち悪い。


カロリーナの騒ぎの途中にナディアの異母妹から手紙が来ていて、胸騒ぎが嫌な予感に変わり、手紙を読んだナディアは行くと言った。


ナディアの意思を尊重したい、だが行かないでほしい、行かせたくない。いっその事ナディアを屋敷に閉じ込めてしまいたいというどす黒い感情が渦巻く。でも、それではナディアの父親と一緒になってしまう。俺はその感情を押し込めてナディアを行かせた。


だが、侍女のジェシカから渡された手紙を読み、俺は本気でナディアを閉じ込めて置けばよかったと思ってしまった。しかし、ナディアからの手紙に書いてあった一つの文に横っ面を殴られた気持ちになる。


『愛か恋か執着かなんて分からない。でも私はただ、貴方の傍で生きていきたい。欲しいものは唯一つ、唯一つ貴方だけ』


こんな最高の殺し文句一つで目が覚めるなんて。俺はナディアを行かせたのは間違いじゃなかった。ナディアは俺を信じてくれている。だから俺もナディアを信じて、俺がしなくてはならないことをしよう。


直ぐ様医者のロウ爺を呼びエヴァンズ伯爵邸に忍びつつも、大急ぎで向かう。ナディアはいつも自問自答を繰り返し、自己完結してしまう部分がある。きっと今頃、異母妹の為に犠牲になっているだろう。異母妹とはいえ、やはり同じ環境で長い間過ごしてきたという少しの情があるのだろうか。


伯爵邸に着く。使用人も数人しか居らず、前伯爵や夫人も居ない。ナディアの手紙に書いてあった通りだ。急いでナディアの部屋に向かい入ると、真っ赤なソファの上に横たわり、脇腹にはナイフが刺さり、口や鼻からは血を吐き出している状態だった。


でも、何故だ。何故その姿に一瞬見惚れたのか。


急いでナディアに近づく。刺さっているナイフは破ったドレスで固定しているみたいだ。そして、出血が異様に少ないのはナディアが飲むと言っていた毒の副作用だろう。こんな応急処置が出来る令嬢はナディアくらいなものだろう。


「……わたし……ルゥのこと……好きみたい……」


「……ルゥ……おやすみ……」


どうして今みたいな状態でこんな言葉を言うのか。いつも俺はナディアに対してから回ってばかりなのに。何故、好きだと、おやすみと、まるで別れの言葉の様な事を言うのか。


駄目だ、死なせない。絶対に死なせない。


俺はナディアと共に生きていきたい。


ロウ爺が来てナディアの応急処置に感心しながら適切な処置をしていく。処置が終わった後は解毒薬を飲ませて、ロウ爺には反対されたが公爵家の屋敷へとそのまま連れて帰った。彼処にはナディアを居させたくない。


夜中に少しだけ危ない状態にはなったが、それを乗り越えた後はもう命の危機は無いと言われホッとした。もしも、ナディアが死ぬ様なことがあれば、俺は公爵という身分や責任を全て投げだし後を追うかもしれない。それだけ俺はナディアに心底惚れている。


ナディアが目を覚ますまで気が気じゃなく、髭を剃る事も、食事をする事も出来なかった。まるで浮浪者の様な自分の姿に苦笑いが浮かぶ。


俺はある意味ナディアに対して狂っているのだろう。



ルーファスは狂っているのかいないのか、それともこれから狂うのか


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