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※誤字、脱字多かったらすみません。
目が覚めて、直ぐに医者のロウ爺に診察してもらったが、毒による後遺症もなし、刺された場所も応急処置が良かったおかげで大事にならなかった。またベッドと車椅子生活が暫く続くが。
ロウ爺はやはり年の功か、変に気取ってなくて私は密かに気に入っている。前に実家から救出された時の主治医もロウ爺だった。
「今まで色んな患者を治療してきたが、お前さんみたいな毒を自ら飲んで止血剤代わりにするとんでもない患者は初めてじゃわい」
「でも其れで助かったでしょう?」
「お前さんなら殺されても死にそうにないがな。自分でした応急処置も完璧、何処で覚えたのか飲んだ毒も、止血剤より強い効果を持つ毒……」
「確か本だったかな?無知は罪だから、自分の無知を認めて知識を吸収する。これって結構大事な事だと思うんだけど」
私にとっては無知は罪だ。
お母様の事をもっと知っていればあんな結末にはさせなかった。もっと何か出来たはずだ。前提や心理状態等の無数のみえない変数。予測できない感情。知ってれば1の可能性が100に変わるかも知れない。
「儂は怪物を診察している気分じゃ。刺された跡も少し経てば薄くなって見えなくなるじゃろう。それよりも刺されたお前さんじゃなく、ルーファス様の方が重篤に見えるわい」
ロウ爺が診察をする為、部屋から出そうとしたのだが、絶対に傍に居ると聞く耳を持たなかった。なので、部屋の隅に椅子を置いて大人しく待っているルゥを見ると、顔色が悪く、窶れて、髪もボサボサ、目の下のクマも相まって、公爵当主というより浮浪者だ。
「ロウ爺、診察が終わったなら少しナディアと話がしたい。二人っきりにしてくれないか」
「はいはい、痴話喧嘩は程々にな。ナディア様も目が覚めたばかりだから無理をさせるんじゃないぞ」
「ありがとうロウ爺、また何かあったらよろしくね?」
鞄を持ち、しっかりとした足取りでロウ爺は部屋から出て行った。ルゥは部屋の隅に置いていた椅子を、ベッドの横に置き座る。やはりどう見ても浮浪者だ。風呂に入ってからでも話は出来るのに。
私はルゥの右手に手を伸ばし、自ら手を絡ませる。ルゥも優しく手を絡ませて握りしめる。やはりこの温かさが良い。
「……ナディア。二度と自分を犠牲にするような、あんな真似をするな」
ふむ、誤魔化されてはくれなかったか。まあ、今回の事は仕方ないと目を瞑って欲しかったが。さっきよりも少し力で握りしめられながら、私も言葉を返す。
「出来るだけそうする。今回の事は……まあ、壮大な姉妹喧嘩だと思っておいて」
「殺し合う姉妹喧嘩ってな……」
「もう、あの娘は私に縋る事もないでしょう。マルセル様がいることだし。それに私の家系は少し過激だから」
「過激どころじゃないだろ。頼むから、俺を刺す様な真似はしないでくれよ」
私はその言葉にルゥを私の方に引っ張り優しく抱きしめる。そしてルゥの耳元で優しく囁き、伸びた髭の上からキスを贈る。
『私を裏切らない限りは私も裏切らないし、好きだよ。でも、裏切ったら私のやり方で潰す。だから裏切らないでね?』
離れたルゥは上等だと口角を上げて言って不敵に笑った。もうゴロツキにしか見えないが、きっとルゥは裏切らない。 それよりも、ルゥに聞かないといけない事があった。
「ねえ、ルゥ?そういえば、カロリーナ様の件を聞いてないんだけど」
「あー……愛する人が出来たから婚約を解消してくれと言われたから解消したんだが、その後に相手に捨てられたらしく、何度も再婚約を屋敷に来たりして迫ったんだよ」
「へえ……その割には噛みごたえが無かった人だったけどね」
「お前何をしたんだ?あいつ、何も言わずに諦めるとだけ言って……結構気性が激しい所があるの……っ!!!!」
「私の前で他の女の詳しい所は話さないで。話すたび、その口塞いで黙らせるから」
私はルゥがカロリーナ様の性格を言った瞬間に、ルゥの胸ぐらを掴んで引き寄せ、私の唇でルゥの口を塞いだ。言わば接吻、キスだ。
なんともロマンの欠片もない。それも、身なりの整ったルゥではなく、浮浪者やゴロツキの様なルゥにだ。初めてのキスが煙草の味だったのは良かったが。
「まあ、カロリーナ様には少し殴られたから、お返しにお仕置きしただけだから安心して?」
「……お前があいつにした事が分かった気がする。それと、その黙らせ方は俺にとっては大歓迎なんだが」
「……ルゥ、格好付けてるけど顔真っ赤」
「お前な、こういうのはもっとムードがある所でするもんだろ」
「寝室に男女二人っきり、女はベッドの上。文字通りならムードがあるんじゃない?」
まあ、私は脇腹を刺されて横になってるだけだが。ルゥがこめかみを抑え溜息をついたが、直ぐに真剣な表情になった。
「……ナディア。俺達の結婚を先延ばしにしたい」
「……怪我が原因?」
「それもあるが、それだけじゃない。少しややこしい人物がお前に前から興味を持っていて、今俺が手を尽くして躱している状態だ」
ルゥの顔を観察すると、きっと今ルゥが言った人物はそう簡単に躱すのが難しい……とういう事は……また私は面倒を引き寄せたらしい。
「内容はその内話すし、何とかしてみせる。だから今は安心してちゃんと療養しろ」
私の頭をグシャグシャに撫でてルゥは部屋から出て行ってしまった。
一抹の不安を残して。
不穏な空気が・・・
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