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12※残虐な描写あり

※誤字、脱字多かったらすみません。

残虐な描写があるので閲覧注意です。



暖かな光の真っ白な空間で私は佇む。

真っ白な空間の遠く先には暗闇が見える。


目の前には夢に何度も出てきた幼い私がいる。

私も幼い私も同じ様な純白のドレスを着て見つめ合うが、もし此処が死後の世界だと言うのなら、なんとつまらないのだろう。


幼い私が嗤いながら首を傾げながら私に問う。


「嫌なの?ここは、望んでいた静寂しかない場所だよ?もう悩む事も、苦しみも、悲しみも、憎しみも、狂気すらないのに」


「ある適度の負荷なら楽しいし、必要不可欠だと思うよ?所詮人生なんて人間同士の張り合い、それすら無い世界なんて不健全じゃない?」


「わたしが生きていても、きっとまた誰かが狂うだけかもしれないよ」


「何故狂っていくんだろうね?私が直接狂わせてるつもりは全く無いのだけれど、知らず知らずに狂わせてるのかな」


「さあ、それはわたしにも分からない」


私達はお互いに嗤いながら首を傾げる。

やはり此処はつまらない。それにルゥが居ない。この場所の暖かさとは全然違う、あの人の暖かさの方が良い。


私の頭を撫でる大きな手も、私を抱きしめる腕も、垂れた目も、落ち着く低い声も、ほのかに香る煙草の匂いも、私だけに空回る様子も、私に関する面倒事を何も言わず不敵に笑って片付けてしまう所も……会いたい。ルゥの傍にまだ居たい。


煙草の様に、いつの間にか私の中に染み付いて離れない。いや、私が離れられない。


「わたしが傍に居たらあの人も狂っていくよ」


「……さあ、どうだろう。私は神様じゃないから未来の事なんて分からないじゃない?」


私はゆっくりと幼い私に近づいて、白い床に押し倒す。白銀の髪や純白のドレスが広がり、嗤う幼い私の頬を微笑みながら撫でる。


「殺すの?無理だよ、だって私はわたしなんだもの」


「ルゥにね、言われたの。切り離すなって……だったら喰べて取り込んでしまえば良いんだって思って」


「……たべる?」


私は優しく微笑んで、驚愕する幼い私の喉元に文字通り喰らい付いた。肉を噛みちぎり、目を抉り飲み込み、腕や足を引き千切り、腑も、心臓も全て咀嚼し喰べ、骨を噛み砕き、噴き出す血を浴びて血を飲み干しながら『私』を取り込んで行く。不思議な事に熟れすぎた果実の様な、腐りかけの甘い味がする。


白い床も、純白のドレスも、白銀の髪も、顔も私の全てが鮮やかな赤に染まる。一通り喰べ終わり、立ち上がりながら口元の腐りかけの甘い血を舌舐めずりする。


そして私は血を拭う事もせずに遠くに見える暗闇へと歩き出す。私が踏む白い床には、鮮やかな赤い花が次々と狂い咲いて行く。

それが少し楽しくて、くるくると回ってみると血塗れのドレスが広がり、それと同時に真っ白な空間の全てに赤い花が咲き乱れ、赤一色になる。


綺麗な景色だが、私が欲しいものは此処には無い。

また私は暗闇へ歩き出し、ただひたすらに前へ進む。


もしも神様や死神が存在していて、目の前に現れて此処に居ろと言ったとしても、私は其奴らを喰ってでも進み続ける。


どんな綺麗な花だって、いつかは枯れ果てて散る。だったら私は枯れ果てるその瞬間まで狂い咲いてみせる。本当に私はしぶとく、往生際が悪い。


死の道を素直に進まず、逆走して抗うなんて。

きっと私の行動は狂って見えるだろう。私も狂ってると感じる。だけど、一方で人間として普通で本質的にありきたりな行動だとも感じる。


自分という怪物を喰らって、神や死神すらも喰らって生きようとする事が罪だ悪だと言うならば、言った人間自身が狂っているのではないだろうか。そんな人間の常識や道徳など、実際自分に降りかかればすぐに棄てるられるものではないか。


どのくらい歩き続けたのだろうか。時間の感覚もない場所を歩き続け、やっと暗闇の入り口に辿り着いた。中を覗き込むが真っ暗で先なんて何も見えないが、それでも私は笑う。何一つ怖いことなんてない。だってこの闇の先に私の欲しいものがある。


私は迷わず闇の中へ飛び込むと、堕ちて行くのではなく上へと引っ張られて行き、徐々に私の欲しいものが近づいている気がして手を伸ばす。すると、確かに手を握られている感覚がして煙草の匂いもする。あの人は、ルゥは私の側にいる。早く、早く戻らねば。


その時、目の前に鮮やかな青い蝶がヒラヒラとまるで道案内をしているかの様に飛んで行く。私は何故か其の蝶がエルヴェなのだと分かった。


「……エルヴェ。前にくれた花の意味に死んでも離れないってあったけど、本当に離れないね。でも……今はありがとう」


私は青い蝶と少しばかり戯れた後、右手に感じる確かな温かいものを握り返す。すると、少し強い力で握り返されたので思わず微笑んでしまった。


一度目蓋を閉じ、ゆっくりと目蓋を開ける。

すると、折角の精悍で色男なルゥの顔が、髭が伸び、すっかりやつれてしまって目の下にはクマもある。濃い茶色の髪もボサボサで、まるで浮浪者の様な姿で私の手を握っていた。


「……ナディア!!」


「……おはよう、ルゥ」



私の言葉に、ルゥの目から温かい雨が降った。




ナディアちゃんの残虐な部分のほんの一部分です。


執筆するモチベーションが上がる為、感想・評価・ブックマークをしてくれると嬉しいです。

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