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※誤字、脱字多かったらすみません。




机に向かい、二人の人物に手紙を書く。私とフローディアの終わりのゲームを始める下準備の為に。


私達のゲームの勝敗は前提や心理状態、そんな無数の変数で予測できないゲームみたいなものだ。だけどフローディア、この勝敗は始める前には終ってるんだよ。そして、貴女の考えている簡単な結末にはならない。


貴女の事だから何の準備も無く始めようとしてるはず。知っていて準備をしておけば、知っている人間の方が自分の望んだ結末に出来る可能性が高いのに。


ジェシカが紅茶を出しながら首を傾げ、手紙を誰に書いているのかと聞いてくる。私はあまり手紙を書く人間ではないから気になるのだろう。


「お嬢様、何方に手紙を書いてらっしゃるのですか?」


「んー……鍵を握る人かな」


「……鍵ですか?」


私は一旦手紙を書く手を止め、紅茶に口をつけて一息つく。あまり長々と文章を書くのは得意じゃないので疲れてしまう。本当に面倒だと感じる感情と、これをした事によって変わる結末にも興味がある。


そうだ、ジェシカにも頼まねばならない事があったのを忘れていた。


「ジェシカ、とある毒が欲しいんだけど頼まれてくれる?」


「……何方に使うのですか?」


「ふふっ、大丈夫だよ。私自身に使う毒だから」


「お嬢様!?何を考えてらっしゃるのですか……まさか……」


「大丈夫、安心して?」


「……分かりました。私はお嬢様を信じています」


ジェシカはどうして私という人間を此処まで信じられるのだろうか。人を信じるのはとても難しい事だというのに。でも、だからこそ私を信じるジェシカは私のお気に入りなのだ。まあ……私を裏切らない限りだが。


紅茶を飲み干して手紙の続きを書き始める。この手紙を読み、上手く私の掌で踊ってくれれば良いのだけれど。この世に絶対など無いのだから念には念を入れねば。


きっと私がしようとしている事を知ったらルゥは怒るだろうと思いながらも、やめる気は更々ない。それが正しいのか、正しく無いかなんて誰にも分からない。


手紙を書き終わり、便箋に入れて封蝋をする。これを出せば一つ目の伏線は大丈夫だろう。


「ジェシカ、もう一つ用意して欲しい物があるんだけど」


「なんですか?」


「真っ赤なマーメイドドレス。誕生日に着ようと思って」


「赤ですか……少し派手ではないですか?」


「赤が良いの。暗い色でも良いんだけど、誕生日だし気分的にね。それに赤い色もある意味色々隠せるから」




そう、色々とね。


首を傾げるジェシカを横目にソファに横になる。まだ風邪が治っていない状態なのでベッドで横になっていた方が良いのだろうが、私はソファの方が落ち着く。


精神的な調律の為と、考えを纏める為にテーブルに置いてある煙草を吸おうと手を伸ばすと、ジェシカに煙草を取り上げられてしまった。


「まだ風邪が治りきっていない内は煙草は駄目です。あと薬の時間ですよ」


「薬より煙草と毒が欲しい」


「何冗談言ってるんですか。ほら、ちゃんと飲んでください」


ジェシカに渡されたこの世の物とは思えない程の苦い薬を水で流し込んで飲み干す。煙草のほろ苦さは大歓迎だが、この苦過ぎる薬の味は何とかならないだろうか。でも、効き目は良いので良薬口に苦しと言う事だろう。


まあ、どんな良薬も度が過ぎれば毒になるのが面白いところでもあるが。


フローディアには薬と毒のどちらが効くのだらう。あの娘に毒を与えたら余計に酷くなるし、薬を与えても何の慰めにもならない。だからフローディアにとって薬であり毒でもある人物に手紙を書いた。片方が駄目ならどちらも与えれば良い。


そして、その人はどう判断して行動するのか見ものだ。その為に私は犠牲になろう。だが、過剰な興味と好奇心は身を滅ぼすから気をつけねば。


煙草を取り上げてられてしまったので、やる事も無く本を読む事にした。







むかしむかし、あるところに貧しい貴族の女の子がいました




父親は既に亡くなっており、継母と異母姉達に毎日虐められていました。




ある時、王子様の結婚相手を決める舞踏会があり、女の子も参加したのですが、女の子のドレスは古くて所々継ぎ足しした様な跡もあります。




女の子は会場の隅で隠れる様にして時間が過ぎるのを待っていると、なんと王子様が女の子のもとに来たのです。

                         』






「お嬢様、それは子供向けの絵本ですよ?」


「だからこそ詳しく書いてなくて面白いんだよ。だって、結局この王子様と女の子は恋をして結婚して終わるんだけど、本当に幸せな終わりだと思う?」


「はい、だって幸せになったと書いてますもの」


「家にいた頃に比べたら幸せかもね。でも女の子の身分や文章で読み取れる人物像では、この国には無いけど側室が妥当だし、王妃にはなれない可能性が非常に高い。それに欲望が渦巻く王宮で女の子は潰れずに生きていけるのかな。あと、裕福な王子と貧乏な女の子の価値観の違いとかね」


「そういった見方もありますね……」


本での結末はずっと幸せに暮らしたと書いてあるが、それは他者の視点からである。本人達のそれぞれの視点から見ると、違うものが見えてくるかもしれない。ずっと幸せになんて現実では無いのではないか。




ずっとなんて、永遠なんてこの世に無いのだから。





お知らせに書いた通り、ただ今作者はマイコプラズマ肺炎になってしまいまして気合いで治している途中です。


更新遅くなってしまいますが、お許しください(土下座)


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