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※誤字、脱字多かったらすみません。



「ルーファス、少しの間ディオを貸してくれないか。チェスをしたいんだ」


ポーカーが終わり、さて次はどのゲームをしようかと思っているとシエルがチェスに誘ってきた。私に何か用があるのだろう。シエルの言葉にルゥが見たことが無い程、無表情になりシエルを睨め付ける。


「シエル……ディオに何かするならお前でも許さないぞ」


「大丈夫だよ、ただチェスをしながら話をしたいだけだから」


「ルーファス様、チェスをしながら話すだけなので大丈夫ですよ。貴方は少しの間近くでゲームでもしていてください」


安心させる様に微笑んで頬を撫でると、ルゥは何か言いたそうにしながらも私達から離れていった。


シエルとチェスができる場所に移動して椅子に座る。シエルは微笑みながらチェスの準備を手際よく進め、私は後手の不利な黒の駒を選びゲームを始める。


「ルーファスはもっとスマートな男だと思っていたんだけど、今は君に恋する大型犬に見えるよ。ディオ……いや、ナディア嬢」


「……さあ?」


「彼奴は人を転がすのが上手い。なのに君の掌で転がらされっぱなしに見える。そんな真似が出来るのは君くらいしかいないだろう」


私は何も答えずに駒を進める。シエルは相変わらず静かに微笑んでいるため、何を考えているか読みづらい。


ルゥが犬なら、シエルは蛇だ。

ゆっくりと近づいて噛み付き、毒を流し込んでくる。


「ルーファスは大事な友人なんだ……もし裏切る様なら私は君を許さない」


「チェック」


「ルーファスは良い奴だ。君みたいな人には合わない。……そう、君には亡くなったエルヴェ・ブランセット辺りがお似合いだ」


「チェックメイト」


さて、ゲームは私の勝ちだ。

シエルの言葉の毒は生易しくて可愛いものだ。もっと猛毒でも流してくるかと思ったが……この程度か。


私がルゥを選んだのでは無い。ルゥが私を選んだのだ。私に言うのではなくルゥに言えばいいものを、態々私に生易しい毒を流し込んで何がしたいのだ。


煙草の煙を燻らせながらシエルを観察すると、微笑んでいるが私への警戒心、疑心、微かな恐怖。


「……君は人間として大事なものが欠けているみたいだ。私には君が悪魔か何かに見えるよ」


私が悪魔か。

シエルは悪魔を見た事があるのだろうか。私はある。

理性も良識も何もかも通用しない悪魔を。


「そこまでだ、シエル」


私達のゲームが終わった事に気付いて来たルゥが、シエルの肩を掴み言葉を止める。凄い力で掴んでいるのか、シエルの顔が痛みで歪む。若干シエルの骨が軋む音が聞こえたのは気のせいだろうか。


しょうがない、助け船を出してあげよう。

こんなくだらない事で仲違いなんて馬鹿らしい。


「ルーファス様、僕とシエルは楽しいお喋りをしていただけです。とても有意義な時間でした」


ルゥに優しく微笑むと、眉間に皺を寄せながらも渋々シエルの肩を離した。


「ディオ、そろそろ帰るぞ」


ルゥは私の腕を掴んで賭博場から出て行く。遠ざかるシエルを見ると、複雑な表情で私達を見送っていた。まあ、私への言葉はルゥを心配しての事だろう。


「ルゥ、良い友達を持ったね」


「……ただの腐れ縁だ」





ーーーーーーーーーー




「ルゥ……まだ拗ねてるの?」


帰ってきてからずっとルゥは不機嫌だ。別に言葉に棘があるわけでも顔に出ているわけでもないのだが、なんとなく不機嫌な雰囲気がするのだ。


屋敷の人達が寝静まった頃にルゥの部屋を訪ねると、ルゥは寝巻き姿で煙草を吸いながら一人酒をしていた。ルゥの向かい側のソファに座り、ルゥの煙草を一つもらい煙をゆっくり肺に入れる。


「お前は確かにどこか歪んでる」


ルゥの言葉を聞きながら肺の煙を吐き出す。

酷く苦くて、肺が重くて、喉が痛い。


「でも、大事なものをちゃんと持っている……優しさだ。悪魔だったら優しさの欠片すら無いぞ」


「……私が優しい?」


「ジェシカには勿論だが、この屋敷の使用人に土産を買ったり、体調の悪い奴には声を掛けて休みをやったりしていただろう。他にもまだまだあるぞ?」


「打算塗れの優しさなのに」


「俺には全てがそうとは見えないけどな」


ルゥは真っ直ぐ私の目を射抜き不敵に口角を上げる。

まただ、また胸が騒つく不快感が湧き上がる。

私はそれをいつも通り切り離しそうとすると、ルゥに煙草持っていた手の手首を優しく掴まれた。


「切り離すな、どんな感情だろうとそれはお前の心だ。自分の心を思考で殺し続けるのはやめろ」


「……そろそろ部屋に戻るね。おやすみ、ルゥ」



ああ、苛々する。

(事実を言われただけだ)


ルゥに私の何が分かる。

(人が人を完全に理解する事など不可能、それをルゥにぶつけるのは間違っている)


ルゥの取り巻く環境が良かったから言えるのだ。

(それは私の押し付けだ)



落ち着け、切り離せ、そして思考しろ。

そうすれば感情に振り回される事なんてない。




十八歳とは思えないナディアちゃん


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