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※誤字、脱字多かったらすみません。
新人物登場
鏡の中には目の色が分からない程曇った丸眼鏡を掛けた、薄茶色の髪をした身なりの良い青年がいる。ジェシカが腕に縒りを掛けただけある。丁寧に化粧でそばかすも再現するとは、これならば誰も私と気付かない。
「身長はどうにもなりませんので、少年を抜けたばかりの青年を想像して再現してみました」
「流石、ジェシカ。ありがとう」
「この程度なら朝飯前でございます」
達成感に包まれるジェシカの頬を微笑みながら撫でると、顔を真っ赤にして鼻を抑えてしまった。
扉をノックする音が聞こえ、ルゥか部屋に入ってくると驚愕したように固まり動かなくなる。私の姿を知っていればこの変わり様は驚きだろう。声色と一人称を変えて話しかける。
「僕の姿、結構いい感じだと思わない?」
「声色まで変えられるのか……別人にしか見えない。ただ、お前の独特の雰囲気だけはそのままだな」
苦笑いのルゥと一緒に、お忍び用の馬車に乗って目的の場所へ向かう。御者も口の堅い人物だとルゥのお墨付だ。
馬車の中から外の様子を眺める。様々な人が行き交い、様々な想いを抱きながら日々生きている。広場で仲良く手を繋ぎ遊んでいる男の子と女の子は、将来憎み合う関係になるかもしれないし、結婚して幸せな家庭を築くかもしれない。想像するだけで少し楽しい。
暫くすると目的の場所に着いた。豪華で大きな建物で、身なりの良い人達の出入りも多く賑わっている様だ。
そう、此処は賭博場。
貴族や裕福な商人、様々な富裕層が集まる公的な娯楽施設でエルヴェから話で聞いて興味があった場所。
殆ど屋敷に閉じ込められていた私の暇潰しは、本や煙草、そしてテーブルゲーム等だった。相手はエルヴェだけだったが中々に面白い。
最近、蜂蜜に浸かっている生活なので少しばかり毒が欲しい。欲望、騙し合いという毒が。
これも毒沼の生活に浸かり過ぎた後遺症とでも言うべきか。
それとも私という人間の本質か。
賭博場の中は豪華絢爛な装飾で、煙草や酒の匂いが漂っている。どのゲームをしようかと周囲を見渡すと、一人の男が片手を挙げて近寄ってくる。あれは確か騎士団の副隊長だったか。
「久しぶり、ルーファス。君が此処に来るなんて珍しいね」
「シエル、お前こそ何で此処にいる」
「騎士だから賭け事をしてはいけない決まりは無いよ。休日だし、情報収集も兼ねた息抜きだよ」
「お前も相変わらずだな」
アグロン侯爵の三男、シエル・アグロン。
ハニーブラウンの長髪を肩の辺りで結び、女性の様な綺麗な顔をしていて騎士団の副隊長。噂ではルゥと幼馴染と聞いていたが本当みたいだ。
「君はルーファスの連れかい?私はシエル、気軽にシエルと呼んでくれ」
「僕の事はディオと呼んで」
私は偽りの名前を名乗り、お互いに微笑みながら握手をするが、シエルの方は私を面白そうに観察しているのが分かる。人当たりの良い雰囲気を装ってるが結構腹黒そうだ。握手をする際に私の手を見て一瞬視線が鋭くなったので、もう私の性別の予想がついている筈。
「折角此処で会ったんだ、一緒にカードゲームでもしよう。ポーカーなんてどう?」
「……ディオやるか?嫌なら断われ、寧ろ断わってくれ。此奴は異常に強い」
「異常は言い過ぎだよ、ルーファスだって同じくらい強いだろう」
「やるよ、手加減無しね」
「いいね、本気でするとしよう。ルーファスも本気でしてくれよ?」
強さは分からないが、楽しめそうな事は分かる。
カードゲームのテーブルに行き、周囲の人にも声を掛けて総勢六人でゲームをする事になった。
ポーカーは運なんて存在しないゲームだ。
相手の思考を読み、役をつくり、チップを奪い合う。
ゲームが始まり、私は煙草を吸いながら全員の表情、動作、カードを見る秒数、心理状況、性格、役の計算などを常に把握する。
ルゥとシエルは中々強い。二人とも表情は変わらないし、動作も一定で淡々としていて、判断も早い。だから私は常識外れなプレイをして周囲を掻き乱し、最高の勝負の舞台を整えた。
今、とんでもない賭け金が場に出ている。
ルゥは早い段階でこの勝負を捨てた。シエルは静かに微笑み強気な姿勢だ。他の人もシエルと似たり寄ったりの反応だ。
「いいの、シエル。貴方ならまだ降りれるんじゃないか?」
「降りないよ。君のカードはブタの可能性が高いからね。君は弱い役なのに掻き乱すのが得意な様だし。それに私のカードの役なら君に負ける可能性は低い、奇跡が無い限り君は勝てないよ」
その言葉に歪んだ笑みが浮かぶ。
それを見たルゥがこめかみを抑え、シエルは表情を変えない。私達はゆっくりと自分のカードを捲る。
他の人も中々強い役のカードだが、私とシエルはストレートフラッシュという一番強い役だ。だけど、私のストレートフラッシュは更に強い組み合わせのカード。
「……参ったな。まさかロイヤルストレートフラッシュだなんて完全に予想が外れたよ。……君を読めなかった私達の負けだ」
「ご馳走様」
ルゥと他の人の命運が別れたのは、私という人間を分かっているかいないかの違いみたいだ。
ナディアちゃん強し
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