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幼馴染視点

※誤字、脱字多かったらすみません。



母親が死んでから、ナディアは変わった。それまでは、頬を染めて、はにかむような優しい子供だった。なのに、恐ろしい程の余裕と達観したような姿。普通なら母親が死んだら嘆き哀しむものなのに。


同じく俺も変わってしまった。侯爵家の次期当主としての周囲からの期待と重圧。俺はそのストレスをナディアを精神的に甚振る事で解消するようになった。それでもナディアはただ嗤うだけ。


それが段々と癖になり、いつの間にか伯爵と手を組みナディアを甚振るようになっていた。


お互いが変わってしまう前の幼い頃は、純粋にナディアが好きだった。くだらない事で笑い、手を繋いで遊び、悲しい事があれば慰め合った。


それが今では、歪んだ思いに変わっていた。


壊したくて、傷付けたくて、縋り付いて欲しくて。自分でも、もう何がしたいのか分からなくなっていた。


俺は表では善人の仮面を被り、陰湿な事をする様になっていた。






ーーーーーーーーーー




「……エルヴェ様。もうナディア様は公爵様の婚約者になったのです。……諦めましょう?」


「……お前に俺の何が分かる」


この女は侯爵家の使用人だ。そして、割り切った関係の女の一人。割り切った関係だというのに、度々口を挟んでくるので、そろそろ終わりにすべきか。


「エルヴェ様はナディア様の事になると、おかしくなってしまいます!!ナディア様は人を狂わせる魔性のような方です!!」


「お前がナディアを語るな!!」


何も知らない奴が俺やナディアを語るなど、反吐がでる。全て分かったようにしている姿に腹が立つ。

やはりこの女は終わりだ。


「もうお前との関係は終わらせる。今すぐ部屋から出て行け」


「……そうですか。……分かりました……私が……ナディア様への愛を終わらせて差し上げます」


そう言った女は俺の懐に飛び込んで来た。咄嗟のことで反応できず、女の行動を許してしまった。腹部に激痛を感じ、一瞬思考が止まる。


ゆっくりと視線を下げると、女が仄暗い笑みを浮かべながら俺の腹部をナイフで刺していた。ナイフが刺さっている場所が徐々に赤く染まっていく。そのままナイフを捻られ、痛みのあまり呼吸ができない。


「……エルヴェ様が悪いのです。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、私は貴方を支えてきたのに!!なのに!!道具のように捨てるなんて!!!!」


そう叫んだ女はナイフを引き抜く。夥しい量の血が流れているのが分かる。俺は床に倒れ込み、動くことも声を上げることも出来ない。脂汗が出てきて、体が震え、血が流れていくのと同時に体温が下がっていく。


「どうして、どうして、どうして……」


女はぶつぶつと呟きながら俺に近づいてくる。

だが、俺が感じたのは恐怖では無かった。


(殺されるのならナディアの手が良い)


この女の言った通り、俺はナディアの事になると頭がおかしくなるみたいだ。


走馬灯とでもいうのだろうか。まだ幸せだった頃の二人の思い出が溢れる。


優しくて、少し恥ずかしがり屋で、お菓子より果物が好きで、虫が苦手で、あまり運動が得意じゃなくて、どこか寂しそうな顔を時々していて……他にも色々……。


……俺はどうして忘れていたのだろう。

子供の頃は、自分がナディアを守るのだと、笑わせてあげるのだと思っていた、大事に思っていたのに。


「ナ……ディ……ア……」


俺が名前を呼ぶと同時に、女の叫び声に気付いた屋敷の使用人達が部屋に入ってきた。暴れる女を押さえつけるが、女は叫び続ける。


遠くなる意識の中、幼い頃のナディアが、優しく俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。






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