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13-2

「海辺の町には海神を奉ってあるんだが、そこに祀られてある神様の愛人がここの女神だとされてるんだ」

「えええええ」

 突然明かされた話にユリシーズは驚く。

「で、その海神の正妻である女神に怒られて恐ろしい魔物の姿にされたってのが、伝わってる話なんだ」

「その魔物の姿を魔除けとしてこの辺では使われてるんだよ」

「へえええ~~」

「でも、よくよく調べるとその魔物化した女神の存在は海神の正妻が信仰される前からこの地で信仰されていたっぽいんだよなあ」

「え⁉」

「どうも政治が絡んで信仰の形が変わって伝わってるんじゃないかなぁ」

「国が引っ付いたり分裂したりしてるからその関係でね」

「はあぁ……」

 研究者たちの話がおもしろくて、ユリシーズは夢中になって聞いている。


「はい、これ。謎の草炒めたやつ」

「謎の草?」

「ダンジョン内で採れたやつ。たまに、魔物化してるけど、これは普通に生えてた」

「あと、謎のキノコね」

「おお……キノコはちょっと怖い」

「毒が有ったら、俺らが先に死んでるからね」

「……こんな地下で育ってるんですか?」

 ケントはユリシーズが口にする前に毒見しようと思っていたが、目の前で作った本人たちが真っ先に口にしているので大丈夫かと思いつつ、疑問をこぼした。


「吹き抜けみたいになってて、上から光が届いてるとこが何か所かあるんだよー」

「やっぱり人間には光が必要だからねえ」

「この辺は上にあった神殿の寮みたいな感じじゃなくて、街みたいになってるから、そういうところを何か所か用意してるんじゃないかな」

「なるほど……」

「ハーピーがいたとこも本当は吹き抜けになってるんだよね」

「あそこ、いつの間にか上が塞がってるんだよな。真上で誰か建築でもしたのか」

「じゃあ、暗いのはそのせい」

「ひどいことするよね!」


「えー! 君ら石化の呪い避けアイテムも無しにここまで来たの!」

「すごいゴリ押ししたねえ」

 ユリシーズ達は石化対策を彼らに問うとそんな反応が返ってくる。ユリシーズはやはり、と思う。石化対策ができるアイテムが存在する。

「あの……石化回避アイテムって余ってないですか?」

 ユリシーズは思い切って尋ねてみた。すると、微妙な沈黙が返ってくる。おしゃべりな二人が妙に目配せをしている。


 ユリシーズはそれを見て、『ある』と思う。

「あれを手放すチャンスじゃ……」

 それまでずっと黙って食事をしていた護衛の彼が突然喋った。

「あっ! 馬鹿!」

「交渉しどころだったのに! 手放すチャンスだとか言っちゃってぇ~~」

「いい加減、枠を解放したいんだよ」


 枠とは? とユリシーズは疑問を浮かべる。すると、護衛の彼は自分の荷物から収納のカップを取り出した。その中に手を突っ込んで何かを取り出す。

「ほら、これ」

「でっっか!」

 出現したものの想像を超える大きさに、ユリシーズは声を張った。現れたのは、巨大な鏡……のように見える盾だった。大きさはフーゴの身が半分隠れるほどある。屈めば、全身を隠せそうだ。

「何これ……鏡でできてるの?」

「素材は何だろな。普通に盾として使える強度はある」

「へえ。これが、石化の呪い避けになるんだ」

「そう。で、俺達が実際に使ってるのはこっち」

 研究者コンビが見せたのは、同じく鏡のように見える額当てと小手だった。

「これを顔の前に持ってくると、目が合っても石化しなくなる」

「へええ~~! 譲ってもらえるんですか⁉」

「タダではねええ~~~~」

 渋って首を振る研究者コンビに、まあそりゃそうか。とユリシーズは思う。


「お値段5000ドラクになります!」

 まあ、払えるか。とユリシーズは財布を取り出す。それをケントが押し留める。

「そんなあっさり払っちゃダメです。まずは値下げ交渉できないか、物々交換できないか、とかを話し合うもんです」

「あ……」

 ケントの指摘に横で同じように財布を出そうとしていたフーゴも止まる。



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