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6-2

「かつてこの地には高度に発展した文明が栄えていたそうよ」

 トニアが聞きかじりのダンジョンの由来を教えてくれる。

「現代の私達よりもよっぽど進んだ技術を使っていたそうよ。それで、当時の最先端の学舎がこのダンジョンの元になった神殿だったんだって」

「神殿? 学舎?」

「神殿に併設された学舎ってことかしら。その当時は学問は宗教施設で教えていたみたいね。その学舎と信者や学生達の生活空間が地下に広がってるそうよ」

「へええ~~」

 しばらくはユリシーズが先頭に立ち、積極的に戦っていたが、次第にカミロとトニアも前に立つようになった。

 現在はカミロが先頭を歩き、ユリシーズとトニアが並び、殿(しんがり)をケントが歩く。


 ユリシーズは時々振り返り、ケントの様子を窺う。

「どうしたの?」

「うん……」

 それをトニアに聞かれるが、ユリシーズは煮え切らない生返事を返す。


「トニア、俺は腹を括ったぜ」

 カミロはそう言い、彼も得たアイテムを使い出した。トニアはそれにうなずいた。

「ああ、これを買い取ってもらえれば、当面生活に困らないはずなのになあ」

 ぼやきつつも、巻物を広げる。

「猛き風よ、わが敵を打ち払い給え。唸れ、爆風!」

 爆風が魔物を蹴散らしていく。

「お、おおお~~~~」

 カミロはその効果に目を見張る。

「あっ⁉ これがレベルが上がるってことか!」

「急にぶわっとくるよねー」

 カミロとユリシーズがレベル上げの感覚に盛り上がる。

「一緒にがんばろー! おー」

「おー!」

 などと二人して拳を突き上げたりしている。カミロはいい大人のはずだが、子供の姿になったユリシーズといい勝負であった。なおかつ、ユリシーズのかわいらしさにデレデレと脂下がっているので、どうにも格好がつかない。


「私も使う」

 トニアも巻物を広げる。

「我が元に進むべき道を示せ。照らせ、灯火!」

 トニアの前にぶわりと四角い形の半透明の絵が浮かび上がる。

「これ、もしかして地図⁉」

「この階層の全体図かしら」

「赤い点はなんだろ。動いてる」

「青い点はここに固まってる……これは、もしかして私達自身?」

「え、じゃあ。赤い点は」

 隣の区画にいた赤い点が動いて、青い点に近づいてくる。その時、角から魔物が現れた。

「赤は魔物かあ!」


 そこから戦闘に移る。現れたのは、鹿のようにも牛のようにも見える獣だった。凶悪なまでに大きな角を持っていて、その先端は中々鋭利だ。何より体がでかい。そして、動きは結構速かった。


「足止めをするから、横か背後に回って攻撃を」

 ケントが端的に指示を出す。カミロとトニアはそれにさっと従う。ケントが正面から攻撃を受ける間に、二人はそれぞれ別方向に動き、魔物の死角に回る。

 二人がかりでの斬りつけで魔物の体力を効率よく削っていく。だが、攻撃を受けて魔物が身をよじり、角を振り回す。

 二人はそれを避けるが、避ける過程でカミロが体勢を崩しかけた。

 そこを、ケントが追撃して時間を稼ぐ。


 三人での戦闘は、結果苦戦もなく終わった。


 ユリシーズは気づいていた。ケントの負担がかなり大きいということを。


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