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2-2

「砂漠の国って、植物とか育つの? 何か名産あるの?」

「知らないけど、何かしらはあるでしょ。人が住んでんだから」

「名産で知られてるのは織物ですわね。グーダルでも売ってましてよ。素敵なじゅうたんを見つけて買いましたわ」

「へえー」

 女性の観点は非常に助かるとユリシーズは思う。ドロシーへのお土産選びが捗りそうだ。


「グーダルの市で目玉なのは、やっぱりダンジョン産のアイテムだよな。何に使うのかさっぱりわからないものがほとんどだけど、火入れしなくても使える灯りとかマジで重宝してるよ」

「え! いいな、それ!」

「どういう仕組みなのかはわからないけど、石みたいなのを交換して使うんだ。煤で汚れたりしないし、向こうに行くたびに似たようなの探してるよ」

「うわあー。欲しい」

 グーダルに関する話題でしばらく盛り上がる。グーダル行きの馬車は朝に出るそうなので、今日は泊まっていけと言われる。ユリシーズ達はありがたくその申し出を受け入れるのだった。



「じゃあ、気を付けて行けよー」

「ありがとう。またねー」

 クルトとユリシーズはいつも通りの気安いノリで別れの言葉を告げる。しばらく黙っていたビルギットが口を開いた。

「昨日はお伝えし損ねてしまいましたが、解呪屋をお探しなさいませ」

「解呪屋?」

 聞き慣れない単語にユリシーズはオウム返しに問い返す。

「そのお姿、呪いか何かだと思いますわ。ダンジョンでは珍品が手に入りますが、呪いがかかっていてそれを解かないとまともに使えないということもよくあるそうです。それを解くことを専門にしているのが解呪屋ですわ」

「へえ。確かに、うちのとこのダンジョンも呪いの剣とか出てきてたな。それ、人間にも有効なんだ」

「ええ。必ずお探しして元のお姿にお戻りくださいませ」

「ビルギット嬢は元の姿の方がいいんだ」

「変わんねえって。どっちでも」

 クルトのからかうような発言にビルギットはくわっと目を見開く。

「いいえ! 人類の損失ですわ! 私、野望がありましたの! 私とクルト様のお子とユリシーズ様とドロシー様のお子を婚約させるのですわ! お二人のお子は絶対におかわいらしいこと間違いありませんもの! 美男美女のお子ですから!」

「……君らも美男美女だよ」

「イエーイ美男美女ー」

「おほほほほ! その通りですわ!」

 ユリシーズの誉め言葉に二人は謙遜もなく調子に乗る。こういうところがおもしろいとユリシーズは思う。


 コホンとビルギット嬢が咳ばらいを一つしてまじめな表情を作る。

「絶対にお探しくださいませね!」

「あ、うん。そうする」

 ユリシーズは戻らないなら戻らないで別にいいと思っているが、強く言われてうなずく。



「うわあ……うわああ~~」

 グーダル国に着いた。着くなりユリシーズは声をあげてしまう。


 にぎわった街の風景、行きかう人々、街に並ぶもの、すべてが物珍しい。

「ユリシーズ様、フードを」

「あ、やっぱしないとダメ?」

「はい。視線を感じませんか」

 ケントに指摘されてユリシーズはフードを被る。ただ、ユリシーズは首をかしげている。

 この方、元々見られることに慣れていて視線に対する感度が落ちているのかもしれない、とケントは思う。


「なあ、市を見て回っていい?」

「ええ。何が並んでいるのか見て回りましょう」

「やった!」

 ユリシーズはうきうきと市場の中へ足を踏み入れたのだった。


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