11-3
祖父はメディナをかつてあった姿に戻したかった。そして、父と祖父は祖父が出ていく前に会話をしていた。祖父が何の目的で出ていったのか、父は知っていた。
そして、祖父はそのまま帰らなかった。その後、父はメディナを独立させた。
祖父はかつてのメディナの姿を知るために探索に出たのだろうか。
メディナが国として独立した。これは復活したと言えるのだろうか。
国として独立したその日にこの城のダンジョンが生まれた。これらのことから考えられることは。
「じいさんが望んでこの城が復活した。そしてダンジョンが生まれた」
この城は本物のかつてメディナにあった城。それが埋まっていることも知らず、現在のメディナの人々はその上の土地を耕し家や城などの建物を建てた。そのため、城の復活と共に地上に被害が出た。
「じいさんが悪魔にメディナの城の復活を願った……?」
アハハハハ……と悪魔の哄笑が聞こえる。それが答えだろう。
探索を再開する。床に水路があった。これは、飾りとしてエントランスから通じているものだろうか。しかし、城がダンジョン化しているため、水路は不自然に途切れている。
「あ、魚いる」
水路に魚が泳いでいる。これはいいやと矢を銛代わりにして魚を狩る。
「いいねえ~」
食糧問題の解決が見えて、ユリシーズはほっとする。
「ぎゃう」
「はいはい。食べさせてあげるから」
子虎が欲しそうにしている。まずは鱗を剥がして、頭を落として、としているとあのレベル上げの感覚が体にやって来る。
「ん? この魚、魔物だったのか」
確かに、ここはダンジョン内だ。だから、その中にいる生物はすべて魔物と見るべきだ。
その理屈なら、この子虎も魔物のはずだが、まったくこちらを襲う様子はない。
「ぎゃう」
「あっ。それ、頭!」
子虎が落とした頭を齧りだした。細かい骨など、喉に詰めないか心配になる。子虎はあっという間にかみ砕いて飲み下した。
「ちょっと見せて」
子虎の口を開けさせる。特に問題はなさそうだ。
「……大丈夫そう? じゃあ、いいか」
解放してやると、不服そうに顔周りを毛づくろいしている。その後、気が済んだと思ったら、水路に飛び込んだ。
「え」
子虎は水路の中を歩きながら、魚を狩っている。見るからにご機嫌だ。
「へえー。虎って水大丈夫なんだ」
子虎は狩った魚を意気揚々とこちらにどうぞと置いてくる。
「君ねえ。自分で狩りできるんじゃん」
ユリシーズは呆れつつ、ありがたく頂戴した。ユリシーズが魚をさばく横で、子虎は己が狩った魚にかじりついている。ユリシーズが落とした魚の頭や骨もいつの間にか奪って食べている。
「なんだよ、あれ~~~」
角を曲がった先が大変なことになっていた。バシンバシンと炸裂音が響いている。
「……炸裂草的な魔物」
炸裂草とは、時々森に生えている触れると身がはじけ飛ぶ草だ。もちろん、あんな大きな破裂音はしない。うっかり振れると少し驚く程度のものでしかない。
しかし、角を曲がった先にいるのは、凶悪な破壊力を持つ炸裂する実を投げつけている根の足で立っている魔物草だ。
「どうすんだ、あれ~~~」
角から窺ってみていると、たまたま通りかかった他の魔物が実の炸裂に巻き込まれてダメージを受けていた。
「ぎゅううぅ……」
子虎は音を嫌がってか、耳を押さえるような頭を抱えるような格好をして伏せている。
「うん。嫌だよねえ」
ユリシーズはどう打開するか、考えた。
「いや、もうしょうがないか」
ユリシーズは腹を括った。ケープのフードを被る。顔周りを布で覆って目だけを出す。なるべく素肌を出さないようにする。
そして、一気に炸裂草的魔物の前まで走っていく。ダメージは負う。だが、しょうがないと受け入れる。ダメージ覚悟で炸裂草の前まで行く。炸裂草の眼前に来たところで、素早く斬り捨てる。
「素早くやるって大事だな」
2、3発は食らったか。だが、最初から痛みを覚悟したので受け入れられたのだった。




