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9 危急存亡、死中求活

「んぐうぅううう!」

 叫んだせいで、その場にいた魔物達が一斉に振り返った。完全に的になったグレーテである。

 逃げ出したいが退路はない。どうする? などと悠長に考える暇もない。グレーテは直感のままにただ体を動かしていく。


 まず、残っていた爆裂の金貨をすべて投げた。前、左、右、三方向に爆裂が起こる。その間に、杖を出す。効果のほどは知らない。

 爆炎の向こうから被害を免れた魔物が現れる。その魔物に向かって杖を振る。

 ぱっと魔物の姿が消えたと思ったら、部屋の隅にいた。そこはどうやらこの階層の出口のようで、出口の前で魔物は動けずにいる。


 グレーテはとにかく杖を振った。計5回ほど振ったところで杖は反応を示さなくなったので、杖を向かってくる魔物にぶん投げたところ、同じように魔物は出口付近に飛ばされていた。グレーテは杖は投げても効果があると気づきを得た。


 どうやら先ほどの杖は一時しのぎができる杖のようだ。倒せたわけではないので飛ばした魔物を後でどうにかしなくてはいけない。

 倒されなかった魔物達が出口に固まって集合している光景はなんだか非現実的だった。


 次に出した杖は振ると火球が出た。これが魔物達を焼いて倒していく。これは使えると、グレーテは杖の効果をありがたかった。

 こちらの杖も5回ほど振ると反応がなくなったので、投げつけて最後の仕事をさせる。


 次にもう一本の杖を使おうとしたところ、横合いから魔物の攻撃を食らいそうになり、慌てて避ける。グレーテは咄嗟に毒草を投げつける。うまい具合に魔物の口に入り込んだ。悶絶し、苦しむ魔物をハルバートで殴りつける。


 走って他の魔物と距離を置きつつ、床にいろいろとアイテムが落ちているのに気づく。拾って片っ端から使っていきたい。だが、中々拾う余裕がない。


 残る杖を振ってみる。最初、わかりやすい反応がないので、使えないのかと思ったが、こちらに向かってきていたはずの魔物が動きを止めたかと思うと、横にいた別の魔物を殴りだした。

 これは相手を混乱させる効果があるらしい。

 その横で殴られている魔物に対しても振ってみる。殴り合いを始めるかと思えば、明後日の方向を向いて攻撃を出したりしている。最初に杖を振られた魔物もあちらこちらをふらふらとしている。


 これは時間稼ぎに使えそうだ、とグレーテは実地で学ぶ。



 その向こうからすごい勢いで別の魔物が向かってきていた。グレーテはあの火が出る草を口に含んだ。噛みしめれば口全体に広がる辛み、耐え切れず口を開けば火が噴き出し、魔物に向かってまっすぐ走っていった。その激しい火が魔物を焼き尽くす。


 辛みは火の熱で飛んだようだが、口の中には痛みが残った。



 周りを囲むようにいた魔物の数が減ったので、グレーテは床に落ちているアイテムをいくつか拾う。巻物を拾いたいと願ったが、その巻物が少し遠いところにある。まずは手前にあった杖と何らかの草、そして金貨が入った袋を拾う。



 手に入れた杖を振ってみると、魔物が後ろに向かって吹き飛んだ。なるほどと思っていると、その魔物が別の魔物にぶつかる。ぶつかられた魔物は衝撃に耐えられなかったのか、力尽きて消えていく。

 吹き飛んだ方の魔物は耐えられたのか、まだ生きている。その魔物の体がより筋骨隆々に膨らむ。体色の色も変わった。

 なんかやばそう、とグレーテは察する。しかし、このまま向かってこられては困るので、グレーテはもう一度杖を振った。その魔物がまた後ろに吹き飛び、今度は壁にぶつかった。魔物が向かって来ようとする度、杖を振って距離をとった。繰り返し壁にぶつかり続けて、魔物は倒された。


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