8-2
「……この扉、妙に頑丈でしたわね」
グレーテは一歩進んだところで、ふと気になって背後を振り返った。この扉は爆発にも耐えて、熱をまったく伝えてこなかった。獣からの襲撃も完全に防いでいた。グレーテはカップを扉に向けてみる。
「仕舞えましたわ!」
扉をカップに収納して、グレーテは再び冒険に繰り出す。
「えーい!」
現れた獣や亡者を棍棒で思い切り叩く。最早いちいち驚いたり悲鳴を上げたりなどもしなくなっていた。
「出ましたわ! なんか凄そうなやつ!」
何体か倒した後、ハルバードが出現した。槍の形状に斧のような刃物を足したような武器だ。
「早速使いますわ! こっちはぽいーですわ!」
グレーテはハルバードを振ってみて、自分にも使えそうだと判断すると手にしていた棍棒をその場で捨てた。
「使えますわ! この棒の重さでいい感じにクリティカルヒットしますわ!」
適当に振り下ろすだけでも、棒の重みで敵の体に打撃を与えることができる。棒の長さのおかげで敵に近づかなくても攻撃ができる。グレーテはハルバードの使い心地を気に入った。
「なんですの、これ? 巻物?」
敵が出た時に読み上げてみた。暴風が起こり、敵をきりもみさせる。もう叫ぶ気がなかったのに、グレーテの口から悲鳴が出た。
「驚きましたわ! これは大きな広い場所で使いますわ!」
「こっちの金貨も気になりますわね」
グレーテは休んでた部屋で見つけた金貨の効果が知りたくなった。爆裂の金貨とは彫られている模様が違っている。金貨は種類によって模様が違っているようだ。
「次に敵に遭遇したら投げますわよ」
などと言っていたが、実際に遭遇すると慌ててしまってハルバードを振り回すのに終始してしまう。ある程度敵を弱らせたところで、グレーテははっと思い出した。
「それっ!」
グレーテは金貨を投げつけた。金貨は敵に届かず、転々と転がり敵の足元で落ち着いた。
「グアウウウアアア!」
「えーっ! 元気になりましたわ!」
弱ったはずの敵が再び勢いを増し向かってくる。
「もう! 面倒ですわね!」
文句をつけながら、再びハルバードを振り回し敵を倒した。
「疲れましたわ……」
グレーテはなんだったのと思いながら、金貨を拾おうとした。
「え⁉ 床に引っ付いてとれませんわ!」
金貨は床に張り付いたようになっていて、全く取れる気配がない。
「これ以上疲れさせないで……?」
金貨を取ろうと奮闘していて、疲れが癒えていっていることに気づいた。
「これ、回復用アイテムなんですの⁉ 使いどころに悩みますわ!」
床に設置して使うタイプの回復アイテムだ。敵味方の区別なく回復させてしまうので、無闇に使うと大変なことになりそうである。
ある敵を倒すと草を落とした。
「草? 草もアイテムなんですの?」
グレーテはうーんと考えてみたが、使い方が思いつかなかった。だが、アイテムの正体を知るべきとの男の言葉を真実だと思い出しているグレーテは、この正体をどうしても知りたかった。
「苦いですわ! とりあえず即効性の毒はありませんわ!」
とりあえず口にしてみた。苦みある薬草茶を普段から飲んでいるグレーテは苦みにはある程度耐性があった。
「とりあえずお腹の足しにはなりますわね!」
効果のほどはわからなかったが、何か一つ成長した気分にはなった。




