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6-3

「天使のダンジョンはなんて言うか、底意地が悪い! 私は苦手だねえ」

「そうなの? 天使って聞くと、なんか優しそうに聞こえるんだけど」

「優しさなら、まだ悪魔の方が持ってるさ。あいつらは誘惑するために飴を用意してくれるからねえ」

「へえー」

「天使ダンジョンは厳しい割にアイテムの出が悪い気がするんだよねえ」

「ああ、飴ってアイテムのこと」

 アイテムの出が悪いと聞いて、ユリシーズは天使ダンジョンへの興味が急速に薄れていった。ダンジョンの楽しさは種々のアイテムとそれを使いこなしての攻略にあると思うからだ。


「私もそんなに多くの天使ダンジョンを攻略したわけでもないからねえ。アイテムの出がいい天使ダンジョンもあるかもしれないけどさ」

「ふう~ん……」

 わかりやすいユリシーズの反応に、バネサは思わず苦笑が漏れる。

「まあ、だから天使ダンジョンはダンジョン攻略に慣れない内は挑まない方がいいよ。あれは上級者向けのダンジョンさ」

「はーい」

 バネサのアドバイスにユリシーズは素直に返事をした。


「そう言えば、悪魔と天使って元は同じものだと聞いたことがあります」

 と話すのはトニアだ。

「え、そうなの?」

「ああ、私も聞いたことがあるねえ。そして、天使と悪魔はそれぞれ担当しているものが違う、と」

 トニアの言葉にバネサも同調する。

「悪魔が担当するのは人間の欲や罪。だから、誘惑してくる。対して、天使が担当するのは美徳や善。ゆえに、彼らが与える試練は厳しいと。その厳しさが、私には意地が悪いと感じられるんだけどねえ」



「これがあれば、私より大きい相手ともきっと戦えますわ~」

 グレーテは棍棒を手に意気揚々と歩いていく。その彼女の行く手、角を曲がった先に現れたのは、ボロ布をまとった骸骨だ。

「ひっ! きゃああああ!」

 グレーテは咄嗟に叫びながら棍棒を振り下ろす。


 ボグッと鈍い音が響く。グレーテの一撃は、骸骨の側頭部に当たり、その一撃を受けて、骸骨は地に沈んだ。


「……犬よりもよっぽど倒しやすかったですわね」

 急な襲来に焦り、悲鳴をあげすぎて乱れた息をグレーテは整えながらそんな感想を漏らす。


「……元、採掘者なのかしら……」

 骸骨の纏うボロ布、持っていたつるはしなどから推定する。

「あまりいい気分がしませんわ」

 浮かばれない亡者を気の毒に思いつつ、でも倒さなければならない。グレーテはダンジョンの無情さにため息がこぼれるのを我慢できないでいた。


「つるはし……」

 骸骨は持っていたつるはしを残して消えていった。

「これもアイテムの一つということかしら……」

 つるはしは刃の部分が大きくあり、棍棒よりも武器としてより使えそうに見えた。

「ん、重……重いですわ」

 グレーテは持ち上げようとしたが、全然持ち上げられなかった。


「使えないのなら、しょうがないですわね」

 つるはしはその場に置いていくことにしたグレーテだった。

「アイテムって、どうやったら出てくるんですの~。使っていけって言われても、それが出てこないんですわー」

 グレーテはぼやきながらダンジョンを歩く。

「こういう横道も見ていかないとですわね」

 グレーテは横穴に入っていく。

「扉? 部屋になってますの?」

 横道の一角に扉を見つけ、それを開ける。開けた後で、中に何かいるかもと気づいたが遅かった。

「グアアアア!」

「えーい!」

 唸り声と共に獣が襲いかかってきたが、グレーテは棍棒で迎え撃つ。出会い頭にうまく一撃が入り、獣は吹っ飛ぶ。

「ふう。どうにかできましたわ」

 改めて、部屋を見回す。吹っ飛んだ獣が向かってこないのをまず確認し、消えていくのを見て、安心してから部屋に入っていった。


「ひっ!」

 グレーテは思わず声を出してしまった。

「べ、ベッドがありますわ……」

 疲れ切っているグレーテにとってこれ以上ない試練であった。


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― 新着の感想 ―
グレーテちゃん、まさかの釘バット適性持ちだったとははははは…!
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