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16-2

「ダンジョン停止した⁉」

「やった! 探索が楽になる!」

「いや、帰らないんだ⁉」

 研究者コンビが歓喜の声を上げる。

「今の内にマップを作ろう! 偽の階段が消えて、つながりがわかりやすくなってるから!」

「罠は……あるんかい! そこは消えてろよなー!」

「急げ! 急げ! 今の内!」

「いや、戻って休もうよ……」

 攻略そのものに興味のない研究者たちに攻略する実力はあるのにもったいないと思いつつ、彼らに付き合う護衛であった。



「攻略された⁉」

「誰がやったんだ⁉」

「今から入ろうとしてたのに!」

「魔物は出るから経験値稼ぎはできるぞ」

 入口に向かって進んでいくと、そんな会話が聞こえてくる。


「……聖獣連れてる」

「あの子は最初から連れ歩いてたぞ」

 時折、ユリシーズ達を見ながらそんなことを呟いている人がいる。


 俺達が攻略したと思われてる?

 ユリシーズはそう思う。

 ダンジョンの奥にいるボスを倒したのは確かに自分達だ。そして、この鳥。


 なら、やはり攻略したのは自分達で間違いないのか。ユリシーズは自分の腕を見る。腕輪は元の数と同じ一つだけ。フーゴはどうやら腕輪をしていない。ケントの腕はユリシーズからは見えない。


 まあ、いいや。後から聞こう。


 そう思って、ユリシーズは気を抜いて身をそのままケントの背にゆっくりと預けた。



「あ! 帰ってきた!」

 ダンジョンを出て、覚えのある声が聞こえてきた。

「カミロ! トニア! 解呪屋さん!」

 ユリシーズは三人を見て、声を上げる。彼らは無事の再会を喜んだのだった。


 三人と合流して、彼らは案内所へと向かった。

「おめでとうございますー」

 受付の女性は周囲に気を配りつつ、小声で三人に祝賀を告げる。周囲に配慮を示したのは、三人がこの国に定住しているわけではない旅行者であるためだ。彼らが、おおっぴらに攻略を喧伝したい意志を持つのか、それを確認していないからである。

 受付嬢のその判断を聞いて、堅実で信頼できる人だなあとユリシーズは思う。


「喧伝……うーん、どうしようかな。ケントはどう思う」

「私個人としてはそっとしておいて欲しいんですがね」

「その辺は話し合ってから決めるか」

 三人は待たせているカミロ達とともに案内所の一角を借りて話し合いをすることにした。


 解呪屋がまず座り、その隣にユリシーズが座る。トニアは、解呪屋の隣に座り……そして、地獄の席取り合戦を目撃する。

 ユリシーズの隣に誰が座るかを三人の男が無言で争ている。というか、フーゴとケントが激しく争う中、カミロが漁夫の利を狙ってか座ろうとしたのを吹っ飛ばされている。

 カミロはすごすごと引っ込み、トニアの隣に落ち着いた。


 ユリシーズが横からおかしい気配がするのに振り返る頃には、ケントが隣に座り、その横にフーゴがふてくされた顔で座っていた。


 円卓に座り、話し合いが始まる。



「ダンジョンの中でも話したけど、俺達の国には新たにダンジョンができてるんだ。俺達がこの国に来たのは、ダンジョンの管理の仕方を学ぶためだ」

 まずはユリシーズが話しを切り出す。

「ダンジョンはまだ全然攻略が進んでいない。ここのダンジョンみたいに、いろんな人に来てもらって攻略を進めたいんだ」

 そこまで話したところで、ユリシーズはこの情報だけじゃあフェアじゃないよなあと思う。


「だけど、実はダンジョン周辺にはまだ何もなくて……鍛冶屋も村人が自分達の道具を作るためのものしかないし、宿屋もない。ここの街みたいに、環境が整ってるわけじゃないんだ。それでもよかったら、来て欲しいんだけど……」

 話しながら、ユリシーズはやはり早急に環境を整えたいと考える。


「解呪屋さん。ダンジョンのことに詳しいですよね。俺にダンジョンのことをもっと教えてください」

「あんたのお願いする顔、本当にかわいいねえ。断れる人いないんじゃない?」

 解呪屋がにこにこと笑いながら軽口を言う。


「ダンジョンを攻略する人をもっと集めようと思ったら、何から整えていけばいいのか全然わからなくて……」

「まあ、あんたがやるべきは、まず宣伝だね。とにかく人を集めるんだよ。何もないのは、集まった人間がどうにかするさ」

「こっちで用意してあげなくていいんですか」

「これが作りたいって言われたら、それを許可するのと土地の手配くらいはしてあげた方がいいと思うけどね。宿屋も鍛冶屋もここで商売になると思えば、来た人間がやりたがるさ」

「その建物を建てる人がいないんですが」

「それも、結局は人を呼ぶしか方法がないんだから。あんたは宣伝をがんばるんだよ」

「宣伝……うーん、どうやろう」

「あんたが名を上げればいいんだよ。各地のダンジョンを踏破して、あいつは何者だ? あいつはどこから来たんだ? って思わせればいい。ここでしたみたいに」


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