序章 ヴィーザル暦
ヴィーザル歴五四六年。後に賢王と名高いネレウスが王となる。ヴィーザル王国は、その周りの小さな国々を吸収し、急速に発展していった。
ヴィーザル歴五七二年。海の向こうの大国がヴィーザルおよびその近隣諸国に戦いを挑んだレティザルトの戦いが勃発。これにより、広範囲での戦が始まる。
ヴィーザル歴五七三年。ネレウス王戦死。大国を退ける形で、レティザルトの戦いは終わりを告げた。遺言により、ネレウスの息子で次男のグリトニルが王となる。
グリトニル王は内政に力を入れ、ヴィーザルはレティザルトの戦いの戦禍から劇的な復興を行い、豊かな国となった。
ヴィーザル歴五八一年。ヴィーザル王国の王グリトニルの甥、オレーンの息子レグラスが政権交代を目論見、乱を起こした。
後にレグラスの乱と呼ばれる出来事である。これにより時の王、グリトニル王とその妻は殺害された。また総司教を除く四役も殺害され、城内の主だった者も殺害されたために、一時期ヴィーザルの政治は混乱を極めた。
このとき当時十歳だったアレス王子は、数名の供のものと逃げ延びる。レグラス王の治世は長くは続かなかった。アレス王子が、その一年後に挙兵し、レグラスを打ち倒した上で即位する。
そしてヴィーザル歴五八四年。アレス王が13歳の時の話である。話の舞台はヴィーザルの隣の国、トラケルタ王国。ある少女から物語は始まる。




