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開店 ②

店に着くと、ウェイトレスがテラス席に案内してくれる。


「ご注文は?」


「オープンサンドイッチとベリーのパンケーキを知り合いに勧められてね。」 


 フリードリッヒの言葉にウェイトレスは頬に人差し指をあてて不思議そうに首を傾げながら返事をする。


「そうなんですか?その2品も美味しいですけど、ワイルドボアのステーキは絶品ですよ。ボリュームがあって食べ応えがあるんです。ここのシェフが元冒険者で、ワイルドボアの扱い方が上手いんですよ。後、コーヒーもオススメです。コーヒーは好き嫌いがありますから、もし、ご興味がありましたら、ぜひ。」


 あれ?ここのオススメはワイルドボアのステーキ?アンリがただオープンサンドイッチと、ベリーのパンケーキが好きなのでしょうか?


「マリー、どうする?ワイルドボア、気になるかい?アンリのオススメも?」


「はい、どちらも気になりますわ。あと、コーヒーも」


 そんなに沢山食べられませんわ。残念です。


「じゃぁ、ワイルドボアのステーキとベリーのパンケーキ、オープンサンドイッチとコーヒーを1杯、それにハーブティーを頼むよ。」


 気になるの全て頼むんですか?それは、全部食べたいですわよ。


「兄様、そんなに食べられませんわよ?ワイルドボア、ボリュームがあるって!」


「大丈夫だよ。オレが食べるし、全て一人前だし」


「はい、畏まりました。ワイルドボアのステーキと、ベリーのパンケーキ、オープンサンドイッチとコーヒー、ハーブティー全て一人前ですね。」


 ウェイトレスは注文をとるとさっさと奥に引っ込んだ。


 もう、キャンセルできませんわよね。


「店、上々の滑り出しじゃないか。昨日宣伝したかいがあったな。」


「はい、思っていたより沢山の方が来て下さって、嬉しかったです。」


 挨拶まわり頑張って良かったです。


「そうだ、リフリードが明日から魔法学園に入学する。ジョゼフ殿下もだ。本来なら、俺が学園でのジョゼフ殿下の警護を担当する予定だったんだが、この状況だ。ミハイルが担当することとなった。ルーキン伯爵の治療はミハイルの一つ上の兄さんがして下さるそうだ。昨日、ダンジョンから帰還されてね。物騒だから一時城に留まられるそうだよ。」


 魔法学園、本来なら私も明日入学する予定だったんですよね。一年延びてしまいましたわ。


「リフリード様、頑張って欲しいですね。」


「そうだね、魔法学園で優秀な成績を収めると、士官の道も開けるからね。」


 兄様も、リフリード様のこと心配なさっていたんですね。


「ワイルドボアのステーキとオープンサンドイッチになります。」


 先程のウェイトレスが大きなステーキとオープンサンドイッチを運んで来た。


 ステーキ、大きいです。300グラム、いえ、それ以上かもしれません。肉の表面から肉汁が溢れジューシーでとても美味しそうですが、どうやって食べればいいんでしょう?


「わー!これは凄い。なかなかの迫力だ。」

 フリードリッヒは、感嘆の声をあげると、ステーキを小さく切り分けてフォークに刺して、マリアンヌの口元に持って来た。


「はい」


 このまま食べろということですわよね。兄様、いったいいつまで子供扱いなさるつもりかしら?


 パクリと頬張ると肉汁が口一杯に広がってとっても美味しいです。兄様も、ご自分の口に肉を運ばれたみたいです。


「美味しい。」


「ああ、美味しいな。アンリに感謝だな。」


 オープンサンドイッチは、チーズにハム、野菜がのっていてとても綺麗で、口にするとお野菜がシャキシャキでチーズも濃厚で美味しいです。


 兄様に、ワイルドボアのステーキを口に運んでもらいながら、オープンサンドイッチをパクついていると、先程のウェイトレスではなく、子犬のような懐っこい雰囲気の男性がパンケーキと飲み物を運んで来た。


「ベリーのパンケーキとコーヒー、ハーブティーでございます。オープンサンドイッチどうでしたか?僕が担当しているんです。良かったら、感想を聞かせてもらえませんか?後、パンケーキも!」


 あっ、なる程、アンリが言っていました知り合いってこの人ですわね。


「オープンサンドイッチ、美味しかったわ。見た目もとっても綺麗で。」


「ありがとうございます。実は、知り合いにアドバイスを貰って完成させたんです。」


 その言葉を聞いて、兄様と顔を見合わせました。


「その知り合いって、アンリって名前かしら?」


 青年は、目を見開き声を張り上げた。


「アンリを知ってるんですか?」


「知ってるも何も、アンリから紹介されて私達ここへきたんですもの」


「アンリが?」


 嬉しそうですわね、私も何だか嬉しくなりました。


「おーい!注文が入った!」


 店内から彼を呼ぶ声が聞こえる。


「あっ、すみません。行かなきゃ。アンリに宜しくとお伝え下さい。後、良かったらまた食べに来て下さい!」


 青年は元気よく頭を下げて店内へ戻っていった。


 アンリ、自分がアドバイスした料理を食べてもらいたかったんですね。


 全て食べ終えて、店から出ると二人を呼ぶ声がした。


「フリードリッヒ様、マリアンヌ様!」


 声の方を見ると、ジュリェッタ嬢が小走りでやってきました。


「マリアンヌ様も魔法学園で必要な、本とノートを買いに来られたんですか?」


 本とノート?


 そう言えば、この本屋さん、魔法学園で使うノートと本が売っているんでしたわね。


「いえ、私は今回魔法学園へ入学いたしませんの。」


 ジュリェッタは酷く驚いた顔をした。


「え、うそ。入学しない?じゃぁ、断罪イベントは?」


 ダンザイイベント?


「ジュリェッタ嬢、お父様を助けて下さいましてありがとうございました。」


 ジュリェッタ嬢の助言でお父様の命が助かったんですもの、お礼を申し上げなければ。


「オレからも礼を言う、ありがとう。」


 フリードリッヒもジュリェッタに頭を下げた。


「そっ、そう。良かったわね。私も、お父さんが死んだら嫌だもん。」


「ジュリェッタ様、待ってください。」


 ジュリェッタより遅れて城の侍女と近衛騎士がやって来た。


「ジュリェッタ嬢、急に走り出さないで下さい。淑女は道を走ったり致しません。」


 侍女に怒られて、シュンとしているジュリェッタに別れを告げてその場を後にした。



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