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異世界で現実的に生活する彼  作者: レノン
妖精の国② 幼馴染
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見つけてしまった

「おいピル!なんとか言えよ!」

「……ゴメン」


 俺はピルに話を聞いて怒りが爆発していた。この女の所為で俺の恋人が死んだのだ。しかも逃げ帰ってきたというではないか。


 鳴いて済む話では無い。ピルの泣き声が俺の神経をさらに逆撫でする。



 ここは訓練所の談話室。俺を含めた訓練生達が一人前の大人になるために過ごす学び舎だ。


 太陽が沈みかけた夕方、ピルとナキが二人で狩の練習に出かけていたのだ。だが帰って来たのはピルだけ。

 話によればピルが蜘蛛に襲われた所をナキが助けようとしたらしいのだ。



 キオが俺を止めに入る。だが無駄だ。


「ね、ねぇロロ。あれは事故だったんだよ。そんなに責めなくても」

「事故!?事故だと!?こいつは、俺達の仲間を……見捨てたんだぞ!!」


 ……憎い。殺したくなるほど憎い。


「ゴメン……ごめんなさい……」

「…………ちっ!!」




 俺は二人から逃げるように訓練所から飛び出し、遺跡に向かった。この遺跡は古代エルフが残した物で現在は樹々や植物によりかなり崩れており、その樹々の上に俺達の村がある。


 遺跡は小さい頃から遊び慣れていたので中の事はよく知っている。普段は立ち入り禁止だが村の子供はそんな事はあまり気にせずよく中で遊んでいた。


 俺も小さい頃からナキやキオ、ピルとここで遊んでいた。



 ナキはこの村でも一位二位を争う程整った顔立ちをしていて、尚且つとても優しい。単に俺が惚れていただけかも知れないがそれでも俺は彼女が好きだった。


 だが帰って来た友達にいきなり好きな子が死んだと言われてみろ。俺はどうしようもない怒りで頭がおかしくなりそうだった。



 遺跡の中のある一角にある広間をゆっくり飛びながら俺は彼女の事を思い出していた。



 だが思い出す度にあの時あぁすれば良かったなどと後悔の念が押し寄せて来る。


「ナキ……会いたいよ…………なんで助けなかったんだよピル……」

「そんなにそいつが憎いか?」

「誰だ!?」


 今確かに誰かの声がした。だが周りには誰もいない。


「ここだよ。ほら、こっち」

「エ、エルフの指輪?」


 声のする方向を見ると瓦礫の中に銀色に光る大きな指輪があった。サイズ的にもおそらく古代エルフが作ったものだろう。


「そうさ、単なる指輪だよ」

「なんで指輪が喋れるんだ?」

「対した事ではないさ。私は単なる魔法の指輪だよ」


 エルフの作る指輪に魔法がかけられている事はよくある。


「じゃあその単なる魔法の指輪が俺に何の用だ?今は忙しいんだ」

「ほう、愛する者が死んだのに何かやる事があるのか?」


 は!?なんでこいつ知ってるんだ!?


「何でかって?私には力があるからだよ」


 こいつ、俺の心を読んでいるのか!?


「あぁ、丸見えだ」

「じゃあ俺がどんな状態かも分かるだろ!俺に構うな!」


 俺は振り返り遺跡を出ようとしたが、再度指輪が話しかけて来た。


「ピルとやらが憎くわないのか?」


「は?」

 

「愛する者を見捨てた奴だぞ?」


「だ、だから何だよ」


「殺したくなるくらい憎いのか?憎いよなぁ?」


「だ、だったら何だよ」


「私を身につけろ。そうすれば少しは楽になれるはずだ。さぁ、手を伸ばせ」


「え……」


「さぁ〜、手を」


「あ、あ……」



「伸ばせ!」



 ここから俺の記憶は曖昧だった。一番新しいはっきりとした記憶はピルを矢で撃ち落とした時だった。

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