ピルの話と弓
「おい! まてまてまて! 命狙われてるって何だよ!? 初耳だよ!?」
「いやぁ~、ホントは出会った日に言おうと思ってたんですが忘れてて。……テヘッ☆」
ピルは右手で頭をかきそれっぽいポーズをとるが、正直ムカつく。
「テヘッじゃねーよ!? つーか命狙われるって何したんだよ!? 解毒剤どころじゃねーだろそれ!?」
命を狙われる何て相当な恨みを飼うか犯罪でもしなければそうそう無いはずである。
もしや俺は今まで凶悪犯罪者と共に居たという事なのか!?
自然と俺は疑いの目をピルに向けた。すると急に冷め切った表情になり口を開いた。
「……だから言いたくなかったんですよ」
そう言うとピルは俺から少し離れた木箱の上に体育座りして顔を伏せた。
俺は何かマズイ事を言ってしまった様だ。明らかにいつもと表情の違うピルは黙り混んでしまった。
気不味い。俺の苦手な空気だ。どうにか打開策を講じなければならない。
「あ! お前の故郷ってどんな所何だよ? 良かったら教えてくれよ」
黙り込むピルに話しかけると顔を上げ、少し表情が明るくなり口を開いてくれた。
「山の奥にある古い古い樹々にある村で私は産まれました。言い方は悪いですが、樹に生えているキノコってあるじゃないですか? あれの家版です。」
確かに言い方悪いな。故郷をキノコに例えるのは分かりやすいけど、もっと言い方あったろ。ツリーハウスとかさ。
「それくらいですかね〜」
「いやいや、話終わっちゃうから。他にあるでしょ? 家族とか友達とかさ」
「……友達ですか。あ、家族は母と妹と三人家族でした。父は小さい頃死にました。それぐらいですかね」
あれだ。こいつ一対一の会話が苦手なタイプだ。
「友達はいなかったのか?」
ピルが「友達ですか」と言って話を逸らそうとしたのがつい気になってしまったので聞いてしまった。するとピルは方をブルッと震わせ言った。
「い、いましたよ? ざっと100人くらい……」
「もういいよ……」
「へ!?」
コイツ友達いなかったから会話下手クソなのか。納得納得。
「あ、そーだ!」
急に何か閃いたらしいピルは俺に手を出した。
「今弓作っちゃいましょう! 枝と糸ありますよね?」
「なるほどな、はいよ」
そう言って俺はポケットから出した蜘蛛の糸と枝をピルに渡した。するとピルは行商人の方へ向かった。
「あの~、鉄の皿と水ってありますか? あったら貸して欲しいんですが」
「あぁ、だったらそこの木箱に入ってるやつ使って良いよ。水は俺のを使いな」
そう言われたピルは水の入った袋を受け取り鉄の皿1枚に水を注ぎ始めた。
すると、水の入った鉄の皿に向かって自分の腕からご自慢の炎を出して温め始めた。
温める事数分、水はお湯に変わり沸騰し始めていた。
そこへ蜘蛛の糸を入れる。蜘蛛の糸はお湯の中で粘りが無くなり見た目的に普通の白い糸になった。
そして糸をお湯からだし、どこから出したのか、小さなナイフで枝の形を整えお湯に入れる。
「な、なんか手馴れてるな」
「私達妖精の中では当たり前ですよ。これが出来ないと一人前として認められませんから……」
なんとなく言ってみたが、答えたピルの顔はどこか悲しげだ。絶対何か隠してると思うんだけどなぁ。聞いてみたいが触れちゃまずい気もするし、今は聞かないでおこう。
ピルは柔らかくなった木の枝を少し曲げて蜘蛛の糸を結び始める。段々弓っぽくなってきたな。
最後にピルは弓に向かって両手を向けた。
「何するんだ? 燃やすのか?」
「違いますよ! 弓に魔力を与えて強化するんですよ」
やっぱりこの世界はファンタジー要素が強いな。魔法で強化とか完全にそうだ。
ピルの両手から光の粒子の様な物が出てきて弓に吸収され始めた。すると、ただの白い弓だった物がそれっぽいそれっぽい見た目になった。
「完成です!」




