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異世界で現実的に生活する彼  作者: レノン
妖精の国① 獣人の村へ
33/42

迫る二日目


 あれ?

 俺、何で走ってんだっけ?

 あ、確か毒針の所為で俺、あと二日で死ぬんだったな。

 

 一時間ぶっ通しで走り続けた俺は意識が朦朧としていた所為か、何で走ってたのか分からなくなっていた。こんな事になるならもっと運動しておけばよかった。なんて後悔しても、もう遅いな。

 足から疲れが取れない。 


「ハァハァ、見えた! ハァハァハァ……」

「あとちょっとですから頑張ってくださいよ!」

 ちょこちょこ応援してくれるのはすごくありがたいし、正直そのおかげで頑張れているのだが、俺の足は既に限界だ。今座ったらおそらく立てなくなる。

 ボロボロの足でなんとか村に着いた俺はまず噴水に顔を突っ込んで水をがぶ飲みした。今は汚いとか関係ないとにかく飲みたい!

「私、馬車か何か探してきます!」

そう言ってピルは何処かへ蜂の様に飛んで行った。


 とりあえず震える足を少しでも休める為に近くのベンチに腰かける。恐らくこのベンチもコルグフ作だろう。


 空は紫色から徐々に濃いブルーの星だらけの空に変わりつつある。それは同時に俺の命があと二日で終わる事を表していた。

 てか、異世界にまで来て何で毒で死ぬんだ?俺。

 記憶だってほとんど戻ってないのにこんなとこで死ぬのか?

 神がいるなら今すぐ元の世界に戻せと言いたい。

「あぁ〜あ……こんなとこで死にたくねーよ〜てか足痺れて動けねーよー!」

「なら早く乗って下さいよ」

「は?」

 俺の独り言に反応したのはピルだった。まさかもう馬車見つけたのか?夜なのに?


「こっちです早く!」

 ピルに言われるまま歩き出すが足がフラフラな為、ヨボヨボのおじいちゃんみたいな歩き方になってしまう。今が夜で良かった。こんな姿誰かに見られたら毒より先に自ら死を選ぶ。


 ピルが見つけたのは昼間よくこの村に来る行商人の馬車だ。しかも既に話は済ませてあるらしく、行商人もすんなり俺を馬車に乗せてくれた。


「君大丈夫か?蜘蛛にやられたんだろ?」

「あぁ、足の疲れが中々取れないのが辛いけど……でもあと二日あるから大丈夫だろ」

「そんな事言えるなら大丈夫だな!途中までしか送れないからそのつもりでな」


 行商人に心配されたがさすがは俺だ。華麗な話術で巧みに詮索を避け更には、相手に無駄な心配を掛けさせない為に最後に大丈夫だろと軽く添える。

 誰かこの俺の苦労とコミュ症に気付いて!



 ガタガタと揺れる馬車の中で暗い表情で何か考え事をしているピルと、星を眺める俺。

 村を出てから2時間。馬一頭の馬車の速度を考えれば、まだ20キロも進んでないだろう。


「あの〜、ナナシさん」

 先程まで考え事をしていたピルが小さい声で俺に話しかけて来た。

「何だ?」

「もしかしたら何ですけど、私命狙われてるみたいなんで、国に入った瞬間殺されちゃうかも何でその時はよろしくです」



「へぇ〜。……はぁ!?」

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