初めての宿
大量の肉とサンドイッチを平らげたピルは満足そうにテーブルに寝転んでいた。
明らかに食べ物のほうが大きかったはずだが、バクバクと食べまくりそれでいて腹があまり膨れない。やはり妖精などではなく、化け物なのでは?
俺もサンドイッチを食い終わり、追加で牛乳を飲んでいた。サンドイッチの中身はレタスと小さい肉、トマトという実にシンプルなものでいくら食べても太らない気がした。
牛乳もかなり美味い。良い感じに冷えてるところがサンドイッチと合う。
とにかく、美味かった。
「あんちゃん達今日も野宿なんだろ?」
コルグフが牛乳を飲んでいる俺に尋ねる。飲みながら、頷いた。
「なら、今日出来たばっかの宿に止まらないか? この後友達と泊まる約束してるんだが、出来たばっかだから綺麗だぞ?」
なんだか全てが上手く行きすぎてる気がしないでもないが、自宅もまだ完成してないし、何より風呂で疲れがとれた為、眠い。
正直あんまり動きたくないので、コルグフの誘いに乗る事にした。
「でも俺金無いぞ?」
俺は金が無い。これだけは知っていてもらいたかった。
「この村の奴はみんな金なしさ。だから村がある程度出来るまではみんなで協力するって決めてるんだ」
「な、なるほど」
この村は平和そのものだと思うのは俺だけだろうか。きっとこの村のようなとこばかりなら争いなんて無くなるだろう。
俺達はコルグフの案内で酒場の斜め前にある、出来たてホヤホヤの宿に入った。カウンターでは、人当たりの良さそうなおじいさんとおばあさんが受付をやっていた。
話によると、部屋は8つ、今は2つしか空いていないので、分かれる事になった。
コルグフは泊まる約束があるので俺たちと別れる。
ので、俺たち5人は同じ部屋で寝る事になった。鍵を貰い2階へ木の階段を使い上がる。
部屋は207。中は思ったより広く、窓、暖炉にソファー、ベッドがあった。
暖炉には必要最低限のまきがくべられていた。ソファーは4人は吸われそうな大きなもので、かなりフカフカ。中にはワラが入っているようだ。ベッドはバネはあるものの、かなり硬い。とりあえず結構いい宿だという事は分かった。
あとは誰がどこに寝るかだけだな。
「私ベッドにするー!」
「じゃあ俺も!」
当然のようにベッドにダイブした二人だが、バネが硬いせいで、ちょっと体が痛いようだ。
「じゃあ私は暖炉で寝る」
さすが炎の精霊。暖炉で寝るってそんな奴なかなかいないよな。
残るはソファーしかないので、俺はソファーに座る。
ピルもソファーにするようで、背もたれの上に寝転んだ。落ちたら俺に潰されると思うよ? と言おうと思ったがピルは先に寝てしまった。
「月、、、綺麗だな」
そんな事をボソッと呟いて、俺は目を閉じた。




