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25-29.伏竜覚醒の余波(中編)

<前回のあらすじ>

表面反射鏡(スパッタリングミラー)や、反転鏡(リバーサルミラー)、それに本人の意識、覚悟の決まり具合で実力が跳ね上がるというのだから、創意工夫と道具と術式工夫で何とか実力をあげようと頑張ってきた地の種族とは、竜族は本質的に在り方が違うことが良くわかる話でした。とはいえ、地の種族が全身鏡を使っても実力に変化はないので、ある程度の地力がないと目に見える変化は得られないのかも。(アキ視点)

さーて、では三大勢力の代表がこうして集っているのだから、まずは集まったお題から片付けよう。


「では、皆さんが集まられたお題である弧状列島横断レースへの影響についてお話しましょう。同レースには伏竜さんも参加される予定ですけど、先ほどの覚醒を考えると、予想外の影響が出そうです」


「万年日陰にいて、誰も手を上げなかった東遷事業への参加をしたことで僅かに注目を浴びたという位置付けの伏竜様が、あのように短期間に実力を高めたとあれば、確かに影響は大きいだろう」


ニコラスさんが慎重に言葉を選びながら語ってくれた。うん、そうなんだよね。誰が見ても貧相な体格、劣る魔力、年齢の割には居候から抜けられないといううだつの上がらない少し年齢を重ねた若竜、それが伏竜さんだった。


「今、賢者さんとリア姉が一緒に話をしている、心の隙間に術式を入れて稼働させる方法で、自然な魔力の揺らぎを演出できるようになれば、バレることはないと思うのですけど」


ここでお爺ちゃんがちょっとフォローしてくれた。


「心の隙間に術式を入れて常時稼働させておく運用は、儂は今も耐弾障壁をいつでも展開できるようにしておるように、妖精族の間では十分こなれた技じゃから、竜族の技量であれば、真似ることはたやすいじゃろう。ただし、長時間、一定の効果を継続させるといった魔術の使い方を竜族はしておらんから、そこで多少の慣れは必要になるじゃろうが。入れる魔法陣は本人が大雑把に理解しておる程度でも機能するから、魔力の揺らぎを演出する魔法陣は賢者が用意すればよいじゃろう」


うん、それなら安心だ。


お、レイゼン様が手を挙げた。


「その心の隙間に入れる術式とやらだが、鬼族でも使えるだろうか? それと稼働させられる術式の種類や魔力の負担についても教えて欲しい」


 ほぉ。


さすが、武人として己を高めることに貪欲な鬼族だ。


「そうじゃのぉ。隙間に術式を入れておくだけであれば大した負担ではないが、発動させる魔術に相応する魔力を費やすことになるじゃろう。こちらの魔導具に刻んでいる魔法陣ほど精緻な制御となると、入るかどうかはよく見極めてから行うべきじゃろうて。鬼族は魔導具なしでも武と併用して術式を使えるが、既に心の隙間の術式に魔力を投じてるとなると、運用難度は高そうじゃ。才のある者に、はじめは負担の小さな術式から試して見極めていくことが良い」


 なるほど。


「なら、ロングヒルに滞在している者から試す者を選ぶから、少し面倒を見て欲しい」


「では、それについては後ほど、文官に話は通しておこう。隙間に術式を入れて様子を見るだけであれば、賢者の弟子たちで十分対応可能じゃろう。そう待たせることにはならんと思うてくれて良い」


「では頼む」


うむ、とお爺ちゃんは軽く引き受けて任せておけと請け負った。そういう風に右から左に、賢者さんのお弟子さんを一人見繕ってぇ、なんて真似をすることが許されているんだから、妖精の国におけるお爺ちゃんの地位って、どう見てもただのご隠居様じゃないよね。好事家ディレッタントだと言ってたし、それは本当のことなんだろうけど、なんか肩書が多そうだ。


「その試みには、我々の理論魔法学のメンバーも参加させて欲しい」


ユリウス様が提案してきた。


「構わんが、理由を話してくれるかのぉ」


「小鬼族にはない技であること、世界を越える技は今のところ、召喚と心話だけであることから、心への研究を深めるべきと考えたのだ。それと翁、伝話だが太い経路(パス)が繋がっていれば伝わるということであれば、世界を越えた伝話も試してみて欲しい」


 ほぉ。


それはなかなか面白い提案だ。


「妖精界への連絡では心話しか使ってこなかったので、そちらはどう働くか確かに試してみたいですね。えっとお爺ちゃん、シャーリス様と僕の間なら伝話は伝わるかな? 見える範囲では僕への伝話はちゃんと届いたけれど」


僕の問いにお爺ちゃんは少し考えてから口を開いた。


「では、女王陛下には儂からお願いしておくとしよう。じゃが予め言っておくと、アキと女王陛下の間の経路(パス)はまだ足りんじゃろうて。互いにその場にいない相手が特定の状況下で何をするのかしっかりとズレなく思い描けるほどに心に相手を住まわせている状態でなくては十分とは言えん」


 むぅ。


それだと、僕とシャーリス様の間では互いの理解はかなり不足していると言って良さそうだ。


「んー、それなら僕とお爺ちゃんの間なら?」


経路(パス)は十分じゃろうが、使い手の実力という点で儂はちと劣るからのぉ。そちらもおいおい試してみるのが良いじゃろう」


「うん。あー、でもお爺ちゃんとの間だと召喚の経路(パス)が繋がりっぱなしだから、伝話をする相手としては不適格かも」


「それもあるじゃろう。召喚の経路(パス)の繋がりは明らかに魔術的に太いルートが確立されておるからのぉ。そちらに流さず、伝話だけ届かせるというのは難度が高そうじゃ」


「なるほど」


となると、召喚し続けているお爺ちゃんは伝話の試験相手としては不適格ということになる。上手く行かないものだね。





ん、師匠が手を挙げた。


「割り込んで済まないが、召喚の経路(パス)を魔術的に繋げる話は別途研究した方が良いですね」


「ソフィア殿、それは召喚術式から経路(パス)を繋げる部分だけ取り出して、関係を深めて経路(パス)を確立する部分を魔術で補うという発想か?」


ユリウス様が上手く説明してくれた。


「その通りです。ただ、召喚の経路(パス)は、召喚状態の維持のために魔力を通すのにも使われているので、そのままだと恐らく無駄が多いでしょう」


 ん。


「師匠、使い魔との間の経路(パス)を通じて魔力を届けるという応用技もあると以前聞いたことがあります。そうなると、連絡を取り合う機能だけに限定というのは難しいのでは?」


普通の人が使い魔との間に確立している経路(パス)ですら、互いの心を繋ぎ、そこを通じて魔力の受け渡しすらできるとなると、繋がった経路(パス)をどう使うかという話であり、あとは太いか細いか、という程度の差という気もする。


「そうかもしれないし、そうではないかもしれない。ただ、召喚術式で術者と召喚相手を繋げる経路(パス)は明らかに、召喚体を維持するための膨大な魔力を通すよう、過剰とも言える太さを術式で維持していると考えられるからね。伝話の用途にだけ使うならもっと細くて良い筈だ。魔術は必要な分だけきっちり実現して無駄な魔力を使わないことこそ理想。覚えておくんだよ」


「はーい」


と言っても、常に位階最上位、魔力全力しか選択肢がない僕からすると、適切な魔力量を無駄なく使うという感覚は全然わからないのだけどね。まぁここははい、と頷くのが弟子の振舞いってものだ。


 あ。


「師匠、そもそも既存の術式に、経路(パス)を繋げるものって無いんですか?」


僕の疑問に師匠は溜息をつきながらも教えてくれた。


「召喚術式が最高難度術式で数える程度の高位魔導師しかそれを発動できなかったことを忘れていやしないかい? おいそれと試せるような術式じゃなかったんだよ」


召喚術式自体、船舶用宝珠のような膨大な魔力貯蔵を用いて発動するようなものであって、本来、個人レベルで発動できるような術式じゃないって話だったものね。


「でも、特定の相手と距離を越えて連絡を取り合えるって、とっても便利だと思うのですけどね」


「そりゃ魔導師ならソレは誰でも思いついた話だよ。そして誰もが試してみてソレが手が届かないと挫折してきたんだ。アキが見習いから卒業したなら、その手の文献は腐るほどあるから、いずれ読んでみるといいけどね、私だって、アキやリア様が協力することでほぼ魔力の総量を気にせず試せる状況でなければ、こんな提案はしないんだよ」


 あー、なるほど。


魔力使い放題みたいな、本来あり得ないボーナスタイムだからこそやってみる気になった、普通なら予算承認が降りる筈がない採算割れプロジェクトって話だ。


「これまで資源リソース問題で試されていないだけであれば、得る物も多いだろう。ガイウス達を誘って研究に励んでくれ」


「仰せのままに」


ユリウス様の言葉に、師匠は勿論そうさせていただきますとも、と恭しく頷いた。





「それからアキ、さっき自分でも言ってた話だけれど、幻術を応用して簡易な竜爪を再現するような真似は、研究組が全員で検討を重ねてからでないと許可はできないからね。試すんじゃないよ」


 ん?


「試す気は特に無かったんですけど、僕でもアレできますかね?」


「銀竜様はソレを為した。そして位階も魔力も十分ならアキでもできると思った方がいい。ただね、空間を切り裂くあの技は、あまり多用していい技ではないと思うんだよ。竜族とてそうそう気軽には使ってないだろう?」


 んー。


「結構簡単に試技を見せてくれたりしてましたけど、確かに術式の障壁を壊すような時にまで竜爪は使ってませんね」


「行使する際に用いる魔力量が尋常なレベルじゃないからねぇ。アレだけ魔力を叩き込むような術式なら、もっと周囲に影響が出る筈なんだよ。それが無いのは世界を削って、その影響を世界の外に出しているからかもしれないんだ。あまり頻繁に削って良い物でもないと思うだろ」


「まぁ、それは確かに。消したモノの辻褄どこで合わせるのかなぁ、とか気になるとこですから」


「ソレさ。幻術の応用で同じような真似がずっと少ない魔力量でできるのは確かに、魔術理論からすればかなり面白い現象ではある。ただね、研究するにしてもできるだけ試行回数は減らしたいんだ。いいね」


「はい」


時空間制御の類や、世界を越えるような技は、次元門の構築に繋がるからどうせなら気前よくばんばん試験をしたいとこだけど、それで世界が歪むとか壊れるとかしたら困るからね。あー、そうだ。


「なら、この件ですけど、黒姫様に相談しましょう。黒姫様は世界の外に根を張って、そこから力を得ている世界樹との交流を少しずつされているので、そういった部分での知見を何かお持ちかもしれません」


「世界樹と心を触れ合わせたことで、少し心がお疲れだったようだから心配だね。様子の確認を兼ねて連絡を取ってみておくれ」


「はい。あー、心話は避けた方がいいですよね?」


「心が疲れている方にアキとの心話は、いくらアキが負担を与えないよう距離感を調整することができるとしても避けた方がいいだろうね。他の竜に言付けを頼むんだね」


「ではそのように」


 ふむふむ。


次元門研究に繋がるような話が一気に繋がってきてこれは嬉しいね。……なんて感じでちょっとホクホクした気分になってたら、皆さんがなんか温かい眼差しで眺めている事に気付いた。いいんです、本来進めたい研究に具体的な話が出てきたとなれば、嬉しいことなんだから。

いいね、ありがとうございます。やる気がチャージされました。


今回は伏竜の大幅強化に伴う魔術的なあれこれについての新たな取り組みが行われることになりました。さくさく決まってますけど、本来なら予算審議で没になるレベルだったり、理論魔法学の専門家たちがどっさり出して貰えたりと、普通ならあり得ない環境と、三大勢力団結状態なのでさくさく決まっているだけなのです。ソフィアも言ってた通り、そんなフィーバータイムでもなければ通らない研究だらけなのでした。


次回の更新も変則的ですが、2025年11月30日(日)の21:10です。すみません、所用が寿司詰めで時間が確保できそうにないのです。あとなんか体調が健康と不健康の境目辺りを彷徨ってる感じで、風邪薬が切れるとすぐ、微妙に悪寒がしたりと悪化する感じです。困ったものです。あとメインPCがそろそろお亡くなりになりそう。キーボードが認識しなくなったり、いきなりリブートがかかったりと。そちらの更新作業もしないと……。

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