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戦闘力ゼロから始める曲がり曲がったVRMMO 。生産をしつつテイマーと弓の両立は欲張りすぎ……?  作者: kanaria
3章.VRMMOを遊びつくせ

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41.毒消し薬と温湯

 ルリも『もうぼっちとは言わせない』の関係者になったので、全員で『もうぼっちとは言わせない』の拠点に向かう。

 まさかフレンドがフレンドのギルドに加入するとは思わなかった。『もうぼっちとは言わせない』は少し前まで満員だったのでギルドレベルが上がったのだろう。とてもおめでたいことだ。


 感動していたもののアシュラはそのまま狩りに行き、ルリは暇そうな幹部の人からギルドについて説明を受けるらしい。

 私はみんみんと【調合】をすることになった。


「シオンは普段、どのように【調合】をしてます? とりあえずやって貰えませんか?」


 いつぞやの街落としで世話になった懐かしの調合室が私を待ち受ける。リアルだと1か月も経っていないのになんだか懐かしい気がした。


「鍋とかの備品はここのを使って良い? 自分のを使った方が良い?」


 私も【調合】用のセットを持っているけれど、持ち歩いているのはチュートリアルで貰った初心者用のものだけだ。

 これだと小さいので少々やりづらい。


 できれば貸してくれないかと思いながらみんみんを見ると、みんみんが頷いた。


「もちろんここのを使って良いですよ。素材も使ってください。ボク一人だと消費しきるのが大変なので」


 言いながらみんみんが冷蔵庫を開ける。そこにはぎっしりと【調合】の素材が入っていた。


 うわー……。


 冷蔵庫があることに驚けばいいのか、入っている薬草の量に驚けば良いのか分からない。

 本当に【調合】持ちがひとりしかいないギルドなのか疑わしいくらいの数がある。


 ひとつでも凄いのに、同じサイズの冷蔵庫が2つあるんだよなぁ。

 素材の種類も豊富だし。


 人が立ったまま入れそうなサイズの冷蔵庫とその中身にドン引きする。

 その量を【採取】できるのになぜ【調合】がいないのか。聞いてはいけない闇を見た気がする。


「素材は自分のを使うよ」


 整理整頓されていいるものの、ギルドメンバーの執念が詰まっていそうな冷蔵庫の素材を触るのが怖い。

 きっと【採取】をしなくていいからできるだけ【調合】をしていてくれというメッセージだろう。


 ポーションの数が足りないと聞いてはいたけど、本当にやばいな。

 ギルドメンバーに空きがあるのなら【調合】持ちを誘ったら良いのに。


 私は冷蔵庫の素材を使ってほしそうにするみんみんを放置し、薬草を水洗いする。

 当然【空間収納】から取り出した薬草だ。


「みんみんはさ、【調合】以外をやりたいと思わないの?」


 ギルド拠点に缶詰になってまで【調合】をし続けるみんみんに疑問が湧く。

 いくら【調合】持ちがひとりしかいないといっても望めば他のことをやらせてもらえるはずだ。アシュラは人を追い詰めてまで生産をやらせるような人じゃない……と思う。たぶん。きっと。メイビー。


 考えているうちに自信がなくなってきたけれど、無理強いをして辞められるくらいなら程よくポーションを作ってもらおうとするだろう。


 もし言いにくいのなら私から伝えても良い。

 でも、みんみんは首を横に振った。


「ボクは【調合】が好きですし、団長の役に立てるなら本望です。ぶっちゃけ、引きこもり体質なので外に出なくていい今の状態が幸せですぅ」


 へにょっと眉を下げてなさけなく笑うみんみんは本当に幸せそうだ。

 なぜか幸薄そうな顔だけれど、彼なりにゲームを楽しんでいるらしい。


「楽しいなら良かったよ」


 私の心配は余計なお節介だったようだ。


 確かに楽しいと思ってなければゲテモノ早食い競争なんて出ないよね。

 罰ゲームもどこか嬉しそうだったし。


 たぶん、みんみんは根っからの【調合】好きなのだろう。ひとつを突き詰めることができるのは才能だ。

 少し羨ましくなりながら鍋に煮沸冷却(しゃふつれいきゃく)(すい)を入れた。【調合】をする時は一度煮沸してから冷却した水を使っているのだ。使いやすいように5回分の量を大きな1本の瓶に入れて【空間収納】にしまってある。


 そのまま特に煮出すことなく薬草の根っこを切り、乾燥させ、すりつぶした後で鍋に入れる。

 このまま混ぜてペーパーフィルターを通したら完成だ。


 結果もいつも通りだけれど、みんみんは不思議そうに下級ポーションを見つめている。


「どうしてこの作り方で品質がBなんですかねぇ……。普通に考えたらCが良いところのはずですけど」


「えっ! そんなにダメダメなの!?」


 自信があったわけではないけれど、品質がBになることすら不思議と言われるとショックだ。

 似たようなやり方で初心者用ポーションは品質がAだった。むしろAにならないことが気になっていたのに。


「んー、初心者用ポーションは今の作り方でも問題ないと思いますぅ。品質をSにしたければ煮込みますけど、難易度が高いので適正レベルを超えるまではおススメできません。ただ、下級ポーションは煮込まないとBにならないはずなんです。煮込む時に煮沸冷却水の温湯(おんとう)を使うとAになるのですが……」


 実際にみんみんにやってもらうと、確かに品質がCだ。一応みんみんのスキルレベルが高いので補正がかかってC+になっている。

 私はみんみんよりもスキルレベルが低いのでCもしくはC-でもおかしくない。


「なんでBなんだろう」


 作ったポーションを揺らしてみても良く分からない。

 作り方やスキルに差がないのならステータスだろうか。


 確認するためにみんみんのステータスを見ようとしたが、非公開にしているらしくメインスキルしか分からない。それも【短刀】のレベル10止まりだった。


「…………前から薄っすらと思っていたのですが、シオンは激レア種族でも引きましたか?」


「……」


 みんみんも私と同じ結論に至ったのだろう。

 質問という形を取っているけれど、ほぼ確信に近い。その探るような目に私はドキリとした。


 まさか当てられるなんて……。

 掲示板に出てくる人みたいに目立った遊び方はしてなかったはずなのに。


 どう答えるか悩んでいると、急にみんみんが笑いだす。


「ハハハハ、例えそうだとしても言うはずがありませんよね。疑ってすみませんでした」


 おなじみのへにょりと眉を下げる笑い方に少しだけ力が抜ける。


 【調合】がらみだったから気になっただけで、元から深く探るつもりはなかったのだろう。どこか申し訳なさそうにみんみんが頭を下げる。

 嫉妬されるかと思っていたのにそれもなかった。


 そこまで確認して、私はようやく安心して肩の力を抜いた。


「……内緒にしてね」


 もう、みんみんが確信を持っていることを理解し、それならとステータスを開示する。

 流石にスキルや称号は隠すけれど、バレてしまったのなら数字を見せて助言を貰った方が良い。みんみんなら誰かに話すということもしないはずだ。…………アシュラ以外には。


 みんみんはアシュラが絡むと一気におかしくなるんだよなぁ。

 本来なら凄い人のはずなのに威厳がないや。


 残念なものを見る目でみんみんを見ると、みんみんが急に息を飲んだ。

 私がステータスの開示をしたことに気づいたらしい。


 ステータスはその人にとって強みにも弱みにもなる。スキル重視のゲームとは言え、余程信頼している関係でないと見せない。気兼ねなく見せるのなんてリアルの友達くらいだろう。

 リアルの友達でも激レア種族なんてバレたら、拡散されてログインできなくなるかもしれない。


 それでも、私はみんみんを信じることにした。


「これは…………想像以上のとがり方ですぅ。生産特化としては殺してやりたいくらい羨ましいですが、これで良く戦ってますねぇ」


「運が良かったんだよ」


 殺意の強い発言にみんみんから距離を取る。なんだか背筋がぞわぞわした。


 だ、大丈夫だよね?

 本当に信じてるからな!


 机が盾になる位置に陣取り、ようやく肩から力を抜く。

 私の緊張が伝わったのか、ラテや岩凪たちも戦闘モードになっていた。机の上に乗ってみんみんを鋭くにらむラテたちに驚きつつも撫でて安心させる。さすがに戦うつもりはなかった。


 ただ、生産においてこのステータスは強みになるようだ。高いDEXは品質を高め、LUKも高い品質になる確率を上げてくれる。

 そうみんみんに言われ、改めて自分がドッペルゲンガーであることに感謝をした。


 【弓】だけじゃなくて【調合】にもいい影響があったんだ。

 全然知らなかった。


 変わった種族ではあるものの、特に変わったことが出来るわけではない。圧倒的に低いATK(攻撃力)と低めのDEF(防御力)AGE(速さ)を持っているだけだ。 

 MPが多くてDEXやLUKが高いけれど、それを上回る使いにくさになっている。普通に遊びたいなら選ばない方がいい種族だろう。


 そうは思うものの、この尖ったステータスがいつの間にか癖になっていた。


「生産特化からすると本当に羨ましすぎるステータスですねぇ。ボクもなれるならなりたかったです」


 私のステータスを隅から隅まで確認し、再度みんみんがぼやく。

 使い方に悩むステータスも、完全に戦う気がない生産職なら憧れるレベルのステータスだったらしい。


「遊び方で感じ方が違うね。私はこのステータスに振り回されてばっかりだ」


「……それもゲームの醍醐味かもしれませんね」


 今後、このゲームがこれからどうなっていくのか分からない。種族特性のあるスキルが生えるのかもしれないし、このままステータスの違いだけでいくのかもしれない。

 ステータスだけの差だとしてもどんどん差は広がっていくだろう。どちらにせよ今後が楽しみだ。


 私はみんみんと顔を見合わせて笑った。


「謎も解けたところで、品質Aの下級ポーションの作り方を教えます。ついでに毒消し薬の作り方も教えるので、次からお願いしますね」


「分かった。よろしくね」


 ずっと前から毒消し薬は作って欲しいと言われていたのだ。作れるようになるのならWin-Winだろう。

 私は机の陰から離れ、張り切って見やすい位置に移動した。ラテたちも机から床に降りている。


「まず、下級ポーションは先ほど言ったように煮沸冷却水を70℃から80℃の間で保ちます。その中にいつもの処理をして乾燥させた薬草を入れてください。このまま煮て、ペーパーフィルターで漉すとー……完成!」


 ガラス瓶に入った下級ポーションを見ると品質Aとでている。普段みんみんの作る下級ポーションは品質がSらしい。Aでも私の到達できなかった境地なので羨ましい限りだ。

 これに何を足したら品質Sになるのだろうか。


 わくわくしながら私も同じように作ってみると、A+の下級ポーションができた。


 さすがに品質Sにはならなかったか……。

 期待してたのに残念。


 みんみんの品質がC+になる作り方で私も同じように作るとBになっていた。今回はみんみんがAだったので同じように作ればSーになってもおかしくない。それなのにA+だったのはSが別格だということだろう。


 少し悔しいけれど、A+でも十分かな。

 Aにならないモヤモヤは晴れたし、むしろここまで教えて大丈夫?


 少し不安になったけれど、みんみんは満足そうだ。

 私が『もうぼっちとは言わせない』にポーション類を卸しているから、ひとつ下の品質までは教えてもいいと思っているのかもしれない。


 ついでに毒消し薬の作り方も教わったので私もポイズンスネークの居る地帯に行くことができるだろう。

 フィールドでの戦闘は久しぶりなので楽しみだ。


 今回のお礼としてみんみんにはトレントの葉を30枚ほど渡し、ついでにパラライズバタフライのフライもしれっと押し付ける。納品のポーションに紛れ込ませたので気づかなかったようだ。


 いつもは渡してアシュラから最前線の素材を貰っているけれど、今回素材は先に貰っていた。なのでポーション類は渡すだけだった。

 おかげでテンションの上がったルリが思い余って押し付け……渡してきたプレゼントも押し付けることができた。私では食べれないので、食べれる人に渡すのが良いだろう。きっと青い顔をしてでも食べてくれる。


 そのまま何事もなかったかのように『もうぼっちとは言わせない』の調合室を出ると、背後から悲鳴が聞こえてきた。

 でもきっと嬉しい悲鳴に違いない。私はしばらくみんみんに会わないように決め、『もうぼっちとは言わせない』の拠点を後にした。

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