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魔導の探索者レギの冒険譚  作者: 荒野ヒロ
第七章 神に捨てられた者と天使

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魔神の配下、強敵との激烈なる戦闘の果てに

戦闘シーンばかりですが。

魔人剣士との激しい戦闘、それを感じてもらえれば──

「ガランッ」

 投げ捨てた兜が地面に落下し、大きな音を響かせる。

 その瞬間に剣士は動いた。

 灰銀色の短い髪が鈍く光を反射させ、凄まじい速度で迫って来る。


 胸を狙った突きの一撃を魔剣でさばく。

 こすれた刃が鋭い音を響かせた。

 異界の空気を震わせる連続の突き。

 捌くのに必死で反撃する事ができない。


(なんて速度だ……!)


 耳障みみざわりな金属音と地面を蹴る足の音。

 俺は四連続の突きを受け流すと、身体を引きながら鋭く刃を払う。

 青白い閃光を引きながら空を斬る刃。

 剣士は後方に素早く身を引いてそれをかわした。


 俺は剣を引いて守りを固める。ここで追撃してもいいが、それは相手が()()()()()()()()()()

 相手は身を引きながらも確実に、反撃への足運びを踏んでいた。しっかりと軸足を引き、いつでも追撃に対して前に出る構えを取っていた。


(この動きは……以前、身を寄せた、傭兵団の隊長を思わせる)


 剣闘士であるシグンの動きとは違う、どっしりとした構え。素早い突きの連続攻撃をした時とは違う構えに感じる。

 どうやらいくつかの流派の剣術を会得えとくしているらしい。

 そんな風に考えていると、次の瞬間には相手が接近してきていた、まばたきをした一瞬だ。


(くそっ!)


 斜め上から斬り下ろされる攻撃を躱し、すぐさま反撃をする。


(しまった!)


 誘いだ、そう気づいた瞬間。俺は前に踏み出していた足を蹴り戻しつつ、斜め後方へ下がって攻撃を躱す。

 危険な薙ぎ払いをギリギリで避け、魔剣を突き出して相手の追撃を阻止する。

 相手も深追いはしない。突き出された剣先の間合いから離れ、軽やかな足運びで側面へ移動を始める。


(また構えが変わった……)


 いったいいくつの流派を体得しているのだろうか。

 今度は片手で剣を振り回すようにして、攻撃の瞬間を読ませない動きをする。

 左右の足が軽やかな足取り(ステップ)を踏み、まるで踊っているかのようだ。


 そこから一瞬の攻撃。

 間合いを詰めたかと思うと、下からすくい上げるみたいな突きが飛ぶ。

 喉元を狙う見えづらい角度からの突き。

 それを躱しながら半歩踏み込み、胴体を薙ぎ払う一撃を振るう。


「ガキィンッ」


 戻した剣の腹で受け流しながら、横に回り込もうとする剣士。軽やかな動きで反転し、足を狙って斬りつけてきた。

 それを跳び退すさって躱し、間合いを取る。

 剣士や騎士といった戦い方とは違う、殺し合いを生業なりわいとしてきた剣闘士にも似た戦い方だ。足を狙うなど、正統派の剣士とは言いがたい。


(少なくともピアネスやシャルディムの剣士にはない類型タイプの型だ)


 再び正面から対峙した剣士は、今度は両手で剣の柄を握ると、しっかりと地面を踏みしめて構えを取った。

 剣を身体の前に構える標準的な構え。

 ゆっくりと、すり足で間合いを調節し、じっくりと圧力をかけてくる。気配の鋭さは最初と変わりがない、こちらを仕留める気でいるのは間違いない。

 気づくと俺は、背後に岩山を背負わされていた。退路をなくして斬りかかるつもりなのだ。


 踏み込んでくる瞬間を悟った俺は、剣士の斜め前へ踏み込みながら、攻撃してきた刃を受け流し、相手の横へ回り込む。


「ギィィンッ」


 岩山に響く金属のこすれ合う音。

 剣士の横を駆け抜ける勢いで通り過ぎ、離れ間際に剣戟を交わす。

 一瞬の攻防。

 鋭い剣の刃先が俺の腕を斬りつけた。

 防御魔法の効果が働き、刃を退しりぞけていなければ、腕が肩からぶら下がっているところだ。


「あぶねぇっ……!」


 反撃したこちらの攻撃は、相手の頭部をかすめただけだった。鈍い光沢の灰銀色の髪が払われただけ、損害ダメージを与えた訳ではない。完全に見切られて躱された。

 俺は受けた傷を無視して間合いを広げる。

 すると相手は遠間から魔法を放ってきた。火の弾丸を数発撃ち出し、俺の周辺で爆発させてきた。地面にぶつかった魔法が破裂して衝撃波を放ったが、俺に直撃する魔法は反射魔法を展開し、剣士に撃ち返してやった。

 火炎弾から身を守る剣士に向けて、魔法で追撃を仕掛ける。


「アーラト、グラズァェル、アデュム、業火の槍を貸し与えよ、ヴラトリアの炎の守り手、不滅の火を守護する騎士の霊威『ガングリウの炎槍』!」


 手に火を噴き上げる炎の槍を生み出す。

 赤熱する槍を振りかぶると、それを全力で投げつけた。


「ジィンッ!」


 鈍い金属音のあとに、槍が二つに分かれるのが見えた。

 凄まじい速度で飛びかかった槍を、剣で叩き斬ったのだ。

 真っ二つにされた槍の穂先が、剣士の後ろにある岩壁に当たって爆発し、柄の部分が地面に落ち、火を噴き上げて消滅した。


「ビュゥンッ」


 爆発から発生した煙を背にして剣士が突っ込んできた。低い姿勢から切り払われる刃。首筋を狙った切っ先を後方に倒れ込みながら躱し、回転しながら剣を薙ぎ払う。


 近い間合いでの攻防が始まった。

 互いの剣が空を斬る。

 刃を受け流す事もあったが、多くの攻撃はわずかな体移動で躱す。

 こちらも全身全霊をかけ、回避と反撃をおこなう。

 足捌きで攻撃を避け、時に相手の反撃を誘う為に、わざと空振りをして反撃を誘い出し、その反撃に対して攻撃を重ねる。


「ィイインッ」


 魔剣の切っ先が鎧に当たり、剣士は後方へ回転しながら逃れ、手を突き出すと──風の魔法を撃ち出してきたが、その魔法攻撃も読んでいた俺は反射魔法を使って、接近しながら魔法を弾き返す。

 剣士は剣を前に構えて防御し、風の刃を受けながら後方へと跳ぶ。


「バラーフォール、アディクト、ザムワン、地表を突き破る岩漿がんしょう、噴き上がる灼熱の螺旋らせん、火精の猛威がほとばしる、火炎の息吹『炎獄の火柱』!」

 離れた相手の足下から炎が噴き上がる。

 ごうごうと燃え盛る炎に対して剣士は手を振るい、魔法を弾き飛ばした。風の魔法を撃ち出して火の力を打ち消したのだ。


「カァアッ!」

「フウゥゥンッ!」


 そうした攻防の中、俺と剣士は絶え間ない死の予感をくぐり抜けながら戦い続けた。一瞬の油断も許されない戦い、剣と魔法の交錯する戦い。

 致命傷を避けてはいるが、傷をいくつも負った。すでに腕の切り傷は、片手の指では数え切れない数に達してしまった。

 軽い切り傷は無視しているが、出血を伴う傷は回復魔法で癒しながら戦う。

 筋肉までは斬られていない傷ばかりだが、胸の近くに受けた突きの一撃が深く、危険な損傷になったのだ。

 鋭い刃が防御を通り抜けて革の鎧を貫通し、剣で受け流した刃の先が肋骨にぶつかった。


「くっ」


 相手の胴体を蹴ろうとして、それも躱された。

 横に回り込んだ剣士が斜め上から剣を振り下ろしてくる。──それを斜めに構えた剣で受け流す。

 続けて構えを変えた動きで連続攻撃が飛んでくる。鋭い突きから横に縦にと剣が振られる。身体能力も魔法で上げ、聴死の力で攻撃の瞬間を予測しているのに、一撃一撃が毎回危険をはらんで迫ってくる。


 打ち込まれる剣を剣で捌き、弾き、受け流す。

 構えを変え、足捌きを変え、攻撃の角度を変えて襲いかかる剣士の様々な斬撃。

 だがしだいに、間合いや攻撃を処理する仕方が身についてきた。


 軽い足取り(ステップ)を踏んでいる時は──こちらの攻撃を躱し、反撃する体勢。

 肩幅に開いた足運びで地面を踏んだ時は反撃を狙う構え。──特に半身になった時は、こちらの攻撃に攻撃を重ねてくる場合がある。

 強力な敵を相手にしての戦闘から、多くの戦法を学び取った。剣士が攻撃を仕掛けてきた時に、俺は相手の攻撃に攻撃を重ね、腕を斬りつけてやった。


「ハアァッ!」


 続けて踏み込んでの縦斬り、重さよりも速さに力を入れた剣の振りで、相手に剣を受け止めさせたのだ。


「やるな」


 青ざめた唇が動いて、剣士は初めて言葉を発した。

 次の瞬間、脇腹ちかくに下げた手を下から突き上げて、風の衝撃魔法を撃ち出してきた。俺は相手が腕を下げた瞬間に反射魔法を使って、奴の攻撃魔法を弾き返した。

 自らの発した衝撃波を受けて後方へと飛ばされたが、魔法障壁にはばまれて、たいした損害にはならなかったようだ。


「そろそろ決着としよう」


 腹部に受けた風の衝撃をものともせず、まるでほこりを払うような動きをして、そんな風に呟く剣士。冷たい殺気を身体から発し、じりじりと間合いを詰めてくる。


「それは同感だ」


 俺は準備していた攻撃を展開する。

 相手と真っ向から斬り合いを演じ、数回の剣戟を交わした時に、影の中から剣や槍などを突き出して攻撃した。


「ギィイィィン!」


 なんと剣士は──その不意の攻撃すら躱し、急所を捉える武器だけを受け流し、影からの攻撃をすべて回避してみせた。脇腹や腕に少々の切り傷を受けはしたが、そのくらいの損害では相手は止まらない。

 影から突き出す武器を弾きながら、前に突っ込んでくる。

 弾いた武器の陰に宝石が光る。

 武器と共に影の中から、いくつもの宝石が飛び出したのを知り、剣士は初めて驚いた表情をして見せた。


「ズズゥンッ」


 宝石が衝撃波や爆発を炸裂させる。

 剣士がその爆発のただ中で、防御姿勢を取って足を止めた。


「バェラ、アキゥス、エーギゥ、ブムァナ、闇の底に沈む影、呪わしき毒針、破滅をもたらせ『影蠍の毒針』!」


 呪文の詠唱を終えると同時に、飛びかかる勢いで剣を振り下ろす。

 剣士は魔剣の刃を剣の腹でがっちりと受け止めた。

 剣士の背後に落ちる影。──その影から漆黒の大きなさそりの針が現れ、鎧を突き破ってその針を背中に突き刺した。薄い背中部分の装甲を貫き、毒を流し込む。


「ぐぁあっ」


 くぐもった声が男の口から漏れる。

 魔剣を押し込もうとする俺を力で弾き飛ばすと、剣士の上体がぐらりと揺れた。

 この戦士に血液が流れていたのかは不明だが、青白い肌に魔法の毒が流れ込むと、病的な青白い肌に浮かんだ薄紅色の血管が、紫色に変色していく。


「ぐがあぁァアッ!」


 苦痛の叫びを上げながら影から伸びる尾針を剣で斬り、びゅうんと大きく剣を振り回して、空を切り裂いて間合いを取る。

 魔法を使って毒を消し去ろうとしたのだろう──だが、魔法の毒を消し去るのは容易ではなかったようだ。


「あんたに回復する時間を与える余裕はない!」


 俺はそう言うと猛然と斬りかかった。

 毒の影響で力を失った戦士。こちらの攻撃を捌く動作にも力が入っていない。


「フンッ!」


 剣の根本を打ち、相手の手から剣を弾き飛ばす。


「もらった!」


 武器を失った敵に迫り、剣を振りかぶった瞬間、()()()()()()()()()()()


 剣士は片膝を突くような体勢から大きく踏み込んできた。低い姿勢から渾身の力を集中し、掌打を打ち込んできたのだ。まさか武術まで繰り出してくるのか! そう思った時には、胸に重い一撃が叩き込まれていた。


「ゴハァッ」


 俺と剣士は同時に喀血かっけつした。

 俺が振り下ろした剣が、剣士の首と肩の間に食い込んだ。剣の根本が当たった為に、斬撃としては弱かっただろうが、俺を掌打で吹き飛ばした影響で剣が引かれ、刃によって頸動脈を断ち切られたのだ。

 毒の影響もあり剣士は前のめりに倒れ込むと、大量の赤黒い血をあふれさせて動かなくなる。


 こちらも後方に吹き飛ばされ、仰向けに倒れ込み、身体がまったく動かせずにいた。ゴボゴボと血の泡を吐き、()()()()()が重い玉石にでも変わってしまったように感じた。心臓の代わりに、冷たい大きな石を体内に突っ込まれたみたいな感覚だった。


(だが……何故だ? 何故、()()()()?)


 ごぼぉっと勢いよく喀血し、倒れ込んでいた俺の顔に大量の血が降りかかる。

 全身が奇妙な痙攣けいれんを始める。

 体中の血管が強制的に対流を始めたかのようだった。


(なんだ……指の感覚が……)


 その指に感じたなにか、それはラポラースが自らの()()()()()()()()()()()だと思い出す。

 まるで指に氷が付着したみたいな痛みを感じる。


(そうか、彼女の力か……)


 身体の自由が利かなくなり、俺の意識は死と生の狭間を歩いていたが、どうやら無事に蘇生を完了したようだ。

 俺は上体を起こし、顔に付いた血を拭いながら立ち上がる。

 心臓は異常なほどに大きく脈動し、俺を不安にさせるほどだったが、それはしだいに収まってきた。


 目の前には上位存在が送り込んできた剣士がうつ伏せに倒れ込んでいた。まだ死んではいない様子だが、身体は痙攣を始めていた。


「お互いに、なかなかしぶといな」


 俺は地面に落としてしまった魔剣を手にすると、倒れたままの剣士に近づいて行く。


「あんたの魂を解放してやろう」


 俺は死導者グジャビベムトの霊核にこの剣士の魂を誘引する為に、剣士の背中から奴の心臓を貫いた。

 虫の息だった剣士は目を閉じて、自らの死を受け入れていた。最後に放った一撃で止めを刺せなければ、どのみち生きてはいられないと悟っていたのだ。

 心臓を貫かれた剣士の身体が変色し──ねずみ色にくすんだ、塩の結晶のような物になって崩れ去った。


 俺の中に魔剣を伝って剣士の魂が流れ込んでくるのを感じた。これで強力な剣士の記憶を使い、いくつもの流派の剣術を使いこなす、その技術を学べるようになる。

 危うく死にかけたが、冥府の娘ラポラースのお陰で文字通り命拾いした。


「まさか()()()()()()()があるとは」


 口の中に残っていた血を地面に吐き出すと、どこか離れた場所から、手を叩く音が聞こえてきたのだった。

またしても死からの復活。

レギの悪運の強さかな?


もう少しでこの章も終わると思っていましたが、もう少しつづきます。

あと六話が第六章の範囲でした。

次話は、今回の最後に聞こえた、拍手を送る者の正体が判明します。楽しみにしていただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者様、累計111話でゾロ目でございます。 レギさんまた一歩強くなりましたね、そして、あと何回死から復活する事になるのでしょうか・・・。(´・ω・`)
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