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悪い子の正体

 俺達を襲った襲撃者は全て打ち倒した。

襲撃者を倒した馬は前足を腰溜めに構えて残心を行なっている、そんな事教えとらんのだがなぁ。


 サイレントボールで周囲の音を消しているので中で眠っている皆は気付かなかったようだ。

魔法具のスイッチを切って小声でゴーレムを作り出す。


「馬車の護衛を頼む」


「ヒヒン」


 馬も小声で返事をして持ち場に戻っていく、俺はゴーレムに命じて襲撃者を運ばせる、馬車からほどよく離れた所でさらにゴーレムを数体作りその襲撃者の装備を剥ぎ取らせた。

追加で作ったのはもしも襲撃者が死んだ振りをしていた場合ゴーレムが拘束を緩めた瞬間に逃げ出すかもしれなかったからだ。

襲撃者をパンツ一丁にした俺はその装備を点検する。


 見た目普通、いやむしろ余り良くない装備だ。

実力はそれなりにあったが実力的には下の上と言った所か。

スキルで襲撃者達のステータスを確認すると全員のレベルは平均20前後といった所だった。

悪党はステータスを覗き見る罪悪感が少なくて良いなぁ。

スキル持ちはいない、特別な魔法具も持って無い、クラスはファイターが二人、スカウトが一人、マジシャンが一人、ナイスバディのウィッチが一人。

ウィッチってなんだ? マジシャンとは違うのだろうか?


『ウィッチ

 女限定の魔法使い系クラス、箒や大鍋に乗って空を飛ぶなど道具を媒介にした魔法をつかう』


クラスの説明もしてくれる測定スキルさんマジ有能、最近使用頻度高いからそろそろ別スキルに変化するかも知れんな。

しかしウィッチか、なんだか面白そうなクラスだ。他にも面白そうなクラスは色々いそうだな。

念の為全員を拘束して魔法使い達には魔法封じの魔法具を付けておく。


「起きろ」


尋問するためにとりあえず一番レベルの高い男を蹴り飛ばす。


「うぅっ」


目が覚めた男は少し呻いた後ハッと目を開いて叫んだ。


「う!馬! 馬が!! ウマァァァァ!!」


「やかましい」


どうやら男は完全にトラウマになってしまったようだ。

男の叫び声を聞いた仲間の襲撃者の体がビクンッと振るえパニックが起こる。


「ウ、馬!? 馬が何で!?」


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「ヒィィィィィ!!」


「馬! 馬! 馬!」


完全に発狂寸前でございます。


「お・ち・つ・け!」


とりあえず一番レベルの高い男を襲撃者達に放り投げて全員を黙らせる。


「うぎゃ」


「げぶぅ」


襲撃者達が静かになったのを見計らって尋問を再開する。


「馬はここには居ない」


「い、いない・・・・・・?」


キョロキョロと周りを見回して馬が居ない事を確認した襲撃者達は長いため息をついてようやく落ち着いた。


「おい、お前等一体何者だ?」


だが馬が居ない事に安心した襲撃者達は喋る気が無いらしく黙秘を行使する。

いい度胸だ。


ゴーレムを数体馬車の護衛に回してイヤリング型の通信機で馬を呼ぶ。

1分ほどすると全力で馬がやって来た。二足歩行のスプリンター走りで。


「「「「「ヒィィィィィ!!!」」」」」


その奇行を目にした襲撃者達が再びパニックに陥って悲鳴を上げる。馬は何故か襲撃者達の周りを高速で、だが丁度視認できる程度の速度でグルグルと回りだす。


「ヒィヒッヒッヒッ!!」


「ハヒ、ハヒヒッヒヒ」


いかん、このままでは発狂してしまう、狂うのは構わんがせめて情報を吐いてからにしてもらわんと。


「ストップ!!」


俺が命令をすると馬はそれにしたがって二足歩行したままで止まる、ちょっとした恐怖映像である。おかしい、ネコやハムスターの二足歩行はアレほど愛らしいのに何故コイツの二足歩行はキモ怖いんだろう。


「あわわわわわわわ」


深夜に無言で直立する馬に怯える襲撃者達、俺だって怖いわ。



「ちょっと離れてろ」


「ヒヒン」


俺の命令に従い馬は少し離れた木の後ろに隠れ体を半分だけ出してじっとこちらを見る……直立したままで。

なんでわざわざ恐怖映像風に待機するんだアイツは、開発する時にどこか失敗したのかな?


「み、見てる、馬が見てる」


じっと見つめる馬に怯える襲撃者達、まぁ分からんでもない。


「あの馬は俺の命令に絶対服従する、だからお前達が素直に俺の質問に応えるのならアイツをけしかけるのはやめてやる、どうする?」


「何なりとご命令ください!!」


恐怖によって支配された襲撃者達は洗いざらい白状した。

コイツ等はとある裏の依頼でこの森に水晶を採取しに来た人達を襲って水晶を奪うように命令されていたらしい。

裏の依頼と言うのは闇ギルドと呼ばれる非合法な仕事を扱う集団だそうだ。

非合法なのでバレると命の保障は無いがその分報酬は高い。

で、コイツ等はその依頼を受けて俺達を襲い水晶を奪おうとしていたそうだ。


「依頼人の名は?」


「俺達はギルドで仕事を貰うだけで依頼主との接点は無い……です。依頼を遂行したら闇ギルドで報酬を貰っておしまい……です」


なるほど、依頼人のプライバシーは完全保護か、もっとも闇ギルドは後で利用する為に依頼人の情報を調べてそうだけどな。


「コレまで襲った人達は?」


「……殺して森の奥に捨てるか奴隷商人に売り払うかです……」


まぁ予想通りか、男は殺して女は奴隷と。森に賊がいるとバレたら自分達も危険だし、顔を見た相手を生かしておく理由も無いからな。

奴隷商人の居所を確認して国に報告、コイツ等は役人に引き渡すのが正解か。

……いや、闇ギルドなら役人に引き渡しても無駄だろうな。

多分役人に賄賂を送ってもみ消しを行なうだろう、場合によっては権力者にギルドの幹部がいるかもしれない。

コイツ等は裏で始末され、奴隷にされた人達も帰ってこず、俺達も狙われかねない。

となるとコイツ等は今ここで始末するのが正解か。

奴隷にされた人達はかわいそうだが自己責任と言う事で。

俺も聖人君子って訳じゃないからな、必要も無く厄介事に首を突っ込むことも無かろうて。


とりあえず襲撃者達は全員睡眠薬で眠らせてゴーレムに馬車の中まで運ばせる。

馬車の中、その中の子供が一人入れる位の大きさの箱、その中に襲撃者達を放り込む。

『簡易住宅』、宝物庫の技術を応用して作った拡張空間で中はちょっとした屋敷と呼べる広さを持っている。

俺達が旅する際の簡易ホテルとして用意したものだ。

その中の一角、襲ってきた盗賊などを捕まえた時の為に用意した施設、牢屋に放り込む。


コイツ等の処遇は町に戻ってからゆっくりと考えよう。

今は水晶の確保とコイツ等に水晶強盗を命じた人物の特定が先決だ。

ほかにもダークフェニックスの巣で見つけたオリハルコンに謎の少女と盛りだくさんだ。


「明日も忙しくなりそうだ」

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