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101 悩みの在り処

今週2度目の更新です。

前話がまだの方は、そちらからどうぞ。

恋愛ってなんでしょう?

そもそも、好きって気持ち自体はなんなんでしょうね。

むむ~ん。



「ナンシー、リィナは一体どうしたの?」

「しらなーい。この間から、なんか考え込んでるのよね」

「へぇ。なんかあったのかね」

「ね」



例えば、私はナンシーさんが好き。

もちろん、友人としての好きですが、その“好き”にしたって、初対面の時に迷子になっていた私を部屋まで送ってくれたのが最初にあって、つまり優しくしてもらったから好意を持ったという『原因と結果』から派生して、その後お互いを良く知るにつれて益々好感を持ち、現在に至る・・・わけで。


でも、異性に対しての好きって、一目ぼれっていうのもあるよね?残念ながら私は一目ぼれの経験はありませんが、あれはどこに好意をもつのかといったら、見た目?それとも本能的なものなの?

だとすると、同姓に対して一目で好意を持つってことはないのかしら。・・・って、いやいや、今は同姓の好きはどうでもよくてですね。

うぅーん



「リィナは一体どうしたのですか?」

「あ、クリスさん。リィナは何かに悩んでいるようなのですが、原因はわからないそうですわ」

「そうですか」



そもそも、『恋』という感情がないのに、お付き合いするのはアリだろうかと考えてみると、アリだろうな、と。だって告白されてみて『嫌いじゃなければ付き合う』という人、結構多いよね。または少数かもしれないけど彼氏が途切れたことが無いとかいう『常に彼氏が居ないと不安症候群』的な人も居るし、男の人なんて『アリかナシか』で、アリだったらとりあえず付き合ってみるなんてことも多いと聞いたこともあるし。それって恋という感情とは違うよね。

そして大して好きじゃなくても付き合っていくうちに情が湧くのはよくある話で。果たしてそれは恋なのだろうか。


「・・・ィナ、リィナ!」

「ぅえ!?はい、なんでしょうかクリスさん」

「なんですかじゃありません。仕事はきっちりしているようですが、明らかにおかしな様子で仕事をしていますよ」

「はぁ。そうでしたか。すみません、気をつけます。」

「・・・ちょっと来なさい」

といって、なんだか渋い顔をしたクリスさんに連行されました。


ううう、なんだろう。どこに連れていかれるんだろう。もしかしてお仕置きですか?

などと考えていたら、連れて行かれたのは、お仕事を終えて寛いでいらっしゃる旦那様のお部屋でした。


「では頼みます」

「「何を(だ)?」」

「じゃあ私はこれで」

「おい!クリス!」

「召喚者の悩み相談は、召喚主の仕事ですよ。では」


・・・なやみそうだん。

「・・・リィナ、何か悩んでいるのか?」


そ、そうですね


「話してみろ。聞くぞ?」


えっと、ええっと・・・

10才も年下の旦那様に、恋愛相談とか――なんの拷問ですか・・・?


クリスさんは宣言通り退室してしまい、旦那様と二人きりです。

ええーと、話しづらいなーとモジモジしてたら、話しづらいんだということが旦那様に通じたみたいでソファに座らされて「少し待ってろ」と言われました。


待つこと暫し・・・


「ほら、これでも飲め」


旦那様が持ってきたのは、お酒でした。



口当たりの良い果実酒を割ったものをいただいています。お酒飲むの久しぶりです。もともとそんなにお酒好きなわけではないのですが、禁止されると飲みたくなるんですよね。

旦那様は同じものをロックで飲んでます。何気にお酒強いですよね。


んー、おいしー。


「飲みすぎるなよ」


ハーイ。


「それにしても、どうして今日は飲んでもいいんですか?」

「・・・私が居るからな」


なるほど、お目付け役が居れば飲んでもいいんですね。


あれー?でも旦那様が一緒でも飲んじゃダメな時もあった気が?んん?


「・・・だからリィナ、お前は酔いやすいんだから、飲みすぎるなって」


・・・はぁい。 


「で、何を悩んでたんだ?」

「んー・・・旦那様は恋ってしたことあります?」

「は?・・・なんだお前、誰か好きな男でもできたのか?」

「違うんです。恋してないんですけど」

「なんだ?告白でもされたのか?」

「・・・まぁ、そんなところです。」


そして、なんとなく自分の気持ちをポツポツと話してみました。


30才にもなると、周りが結婚している人ばかりになり、独身男性に出会うこと自体が少なくなる事。

独身男性に出会ったとしても、その人を好きになるかは別の話だし、また男性側がこっちを気に入ってくれるかどうかもあるわけだし。

だとしたら、多少好意を持った時点でお付き合いをするべきなのか、どうか。

でも、なんかそんなに好きでもないのに、とりあえず独身だから付き合っておくって、妥協するみたいで相手にも失礼な気が・・・


「相手がリィナが良いと言ってるんなら、別にいいんじゃないか」

「そうなんですけど。・・・どうしてもこの年になると、結婚を意識しないわけにはいかないですし」


大して好きでもない人と付き合うことは出来ても、結婚って・・・どうなんだろう。

別に結婚に夢を見ているわけではない。なぜなら友人たちの中でもすでに離婚をしている友達も何人も居て・・・


「背の高い人なら誰でもいいって言って、背の高い人と結婚した友達は、旦那が家事をなにも手伝ってくれないって愚痴ってるし。でも結婚する前からそんなの何にも手伝わなかった男が、結婚してから手伝うわけがないし。自分が背の高さだけで選んだのに何言ってるんだろうって思ってしまうんですよね」

「まぁ、そういう条件至上主義の女は確かに居るな」

「子供嫌いの男と結婚した子は、結婚後に子供を作る事を拒否されてキレてたけど、最初っから子供嫌いだったよね?と言ったら“自分の子供は別だと思ったんだもんっ”と泣きながら言われたり」

「それで、その友人はどうしたんだ?」

「どうしてもと頼んで、一人だけ子供を作ることに同意させたのですが、今度は子育てを手伝わないと愚痴ってましたね」

「ああ、そういう女はそうだろうな」

「他には、専業主婦になりたくて高収入の男性と結婚した友人は、突然旦那が出社拒否をして家に引きこもり始めて、実は昔からメンタル的に弱かったということを彼の家族から聞かされ愕然としつつも闘病生活を支えていたんですが、その旦那に馬乗りになって殴られて、離婚しました。」

「・・・その男の両親は、何故嫁に隠してたんだろうな。意味わからないな。」

「別の友達は、子供を作る事を条件に結婚して・・・そのあと旦那さんが種無しだとわかって、不妊治療に積極的に協力してくれなかったとかで、離婚しました。」

「・・・それは男として言わせてもらえば、ひどい嫁だな」

「はい。ちなみにその子は別の男性と再婚し、3人の子供を育ててます」

「ますますひどい嫁だな。なるほど、リィナの言いたいことが少し分かったぞ。つまりリィナの言うところの『恋』をしないで条件だけで結婚すると、そういう事態を招くのではと思っているんだな?」

「はい、そうなんです」


そうなんですよ。

だって好きな人と恋をして愛し合って結婚してたら、さすがに家事を手伝わないくらいで離婚したり、子供が出来ないことで離婚したり、しないと思ってしまうんです。・・・まぁ、殴られたらさすがに離婚するかもね。


「リィナの懸念はわかったが、結局のところは自分が何を許容できて、何を許容できないか、だけじゃないか?」

「旦那様は今まで女性とお付き合いしたことあります?」

「そりゃあるが・・・別に、お前の言うところの『恋』はしていなかったと思うぞ?」

「そうなんですか?」

「そもそも私達王族は、政略結婚も考えられるからな」


あ、そうか。

王族って、そういうのあるんだっけ。


「旦那様も、政略結婚するんですか?」

「そうだな、するかもな。今のところはまだそういう話が出ていないけどな」

「・・・ちなみに、どんな人と?」

「さぁな。少なくとも私はこの国から出る訳にはいかないだろうから、この国にずっと留まる理由になる家柄の者の結婚することになるだろう。」


そうなんですか。

茶国のハヤテ殿下たちは、旦那様をこの国から出したがっていましたけど・・・私の知っている限り、旦那様は、とても責任感の強い人ですからね。この国の王族としての義務を果たそうと、陛下や王妃様、ユーリ殿下やダリア姫様たち『家族』の望む形でこの国に貢献しようと考えているのかもしれませんね。



「それで、リィナ。」

「はい」

「一体、誰に何を申し込まれて、そんなに悩んでたんだ?」


・・・あ、そうでした。


結局、タクトさんからされた話を、一からすることになりました。

話を聞いた旦那様は、少々あきれていましたが。


「お前の帰還まで、まだ1年あるんだぞ?」

「そうなんですよ。私が帰るまでにタクトさんに彼女が出来ない保障もないじゃないですか」

「その問題よりも」

「いえ、その問題が重要です!だって帰還してタクトさんと付き合おうと思ったら、彼女が居たとかなんて、結構なショックだと思うんです!」

「違うだろ!そもそもお前、タクトの事が好きなのか!?」

「いえ、全然。友人としては好きですが、恋愛対象としてみてなかったから。」

「お前、さっき自分で話していた『条件重視で結婚した友人達』と、同じ事しようとしてるぞ」


・・・ハッ!!そうだね、そうだよ、そうだ、ダメじゃん!


「私の個人的な感想だが・・・お前は自分がタクトに『好かれていない』のが気になってるんだろう?タクトの気持ちが『恋』だとは思えないから不安なんだ、ちがうか?」

「・・・そ、うです、か?」

「時間はたっぷりあるんだ。それに、帰還してからだって、友人をしながらゆっくり考えたっていいだろう」

「でも、どんどん歳はとっていくんですよ。嫁き遅れすぎると世間の視線が・・・」

「何を今更。それこそ自分の気持ち一つだろう。別に一生結婚しなくたっていいじゃないか。結婚しなきゃ幸せが無いと思っている人間達を、見返してやるくらい幸せに生きればいい」



旦那様の話も分かりますが。

若いからそういうふうに考えられるのか、それとも王族という通常とはちがった結婚観だからか。


でもね。女が一人で生きていくのって、結構大変なんですよ?


「タクトには、リィナを悩ませるなと、クギを刺しておく」

「いえ、刺さないで下さい!」

「・・・でも」

「本当に!絶対!刺さないで!」


10才も年下の上司に恋愛相談したなんて、知られたくないんですっ!!


「絶対!!他言無用でお願いしますねっ!!」





ちなみに、旦那様は他言無用を守ってくれました。ほっ。












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