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それでもウチのヒロインが最強すぎる  作者: 天海 汰地
1章『Symphony:Blue in C minor』
24/94

【4-1】 高嶺の花が放課後デートに誘ってきましたが絶対に断ってやろうと思います

放課後に制服でどこかへ出かけるって、これ以上ない青春のロマンですよね。

さておきJKは無形文化財として保存されるべきだと思う今日この頃

【Ⅳ Wie Melodien zieht es mir】


「付き合って頂戴」

「……ああ、うん。どこいくん?」


 放課後。

 俺は廊下で出くわした女子生徒、花室(はなむろ)冬歌(ふゆか)にそんな申し入れを受けていた。

 否。出くわしたというのは語弊がある。厳密には俺が彼女に声を掛けにいったのだ。



 花室に伝えることがあった――サッカー部は午前中に試合が入っていて、放課後の勉強会には顔を出せないということ。

 なにやら飯田、今日は試合後もそのまま予定が入っているらしい。なんだろう、部活の予定とかだろうか。ともあれ忙しそうだし、仕方ない。


 事情を伝えきったあと、返事の代わりともとれる間で飛び出してきたのが先の発言だった。

 先に断りを入れておくが、俺が花室に告白されているというわけではない。そんな心ときめく状況は俺たちの間におそらく起こりえない。


 言葉足らずで勘違いしがちだが、花室は放課後に用事があるから同行しろと言っている。

 まあ俺も暇だし、二つ返事で聞き返したんだが、当の花室がピンと来てなかった。



「どこかに行きたい、というわけではないわ。それは私にもまだ分からないもの」

「なに、ダーツの旅でもすんの?」

「ある人間を尾行するわ。あまねなら、予想は付くと思うけれど」


 探偵かこいつは。俺は助手役ってことでこいつのごっこ遊びに付き合わされるのか?


「誰。誰を尾行する気なんだ」

「決まっているでしょう。桜川(さくらがわ)ひたち。あの忌々しい女狐の尻尾を掴んでやるのよ」

 やっぱりか。そんな気はしてたよ。



「せっかく時間ができたのだから、桜川を陥れる算段を模索しましょう。できる限りあの女の素性を掴んでアドバンテージをとるの。あまねも付き合ってくれるかしら?」


 嬉々として話す花室。俺の知る限り、こいつ、桜川に対する謀略の話をしているときが一番表情が輝いている気がするのは気のせいだろうか。

 大方、桜川の弱みでも探ろうとしてるんだろう。本格的にあのヒロインを陥れる気なのだ。

 見上げた執念と行動力だが、しかし。


 そんなものに付き合ってやるつもりは正直、ない。



「帰っていい?」

「ああっ! 待って!」

 踵を返す俺の袖を引く花室。


「いやだよ! んな悪目立ちすることして、かえって桜川に警戒されたらどうする」

 こいつも言うなれば有名人だ。普通に歩いているだけで多少なりとも視線を集めることには言を俟たない。

 そんな彼女が尾行だなんて怪しい行動をとっていたら、たちまち噂が流布されるに違いない。桜川の耳にもすぐ入ってくるだろうよ。


「確かにそうね…………」

 花室は特段否定するでもなく、思案していた。


「ならあまね、あなた一人で尾行してもらっていいかしら」

「よくねえよ。なに早速こき使おうとしてんだ」

 なんで妥協案みたいに提案してんだよ。もっと俺への配慮を持て配慮を。


「だって、あなた一人なら特に問題はないでしょう?」

「問題しかねえわ。なんで俺一人に丸投げしてんだ。誰だって注目はされるっつーの」

「確かに、あなた一人だとかえって奇怪だから、視線を浴びるのには変わりないわね」

「…………」

 ほんとに帰っていいかな、もう。



「第一、面倒すぎるわ。俺一人であいつん家まで尾けるとして、わざわざ遠回りするしかねえのかよ。方面一緒なんだからお前が行け」

 周囲の視線云々以前に、労力が甚だしい。どうしてこいつらのために隣町まで足を運ぶしかないのだ。


 うんざりするように吐き捨てた。が、返事はない。

 花室の顔をのぞきこむと、彼女は目を丸くしていた。

 怖気づいたような引きつった表情だ。


「なぜ、家を知っているの」

「は? や、前に勉強会のあと、駅まで送ってったろ」

 始めの勉強会のあと、俺たち二人と飯田の三人で学校を後にした。

 通学路に通る駅で花室と分かれ、俺と飯田もそれぞれの家路につく。


 確かに花室から直接聞いてはいないが、電車の時間で上り下りの判断くらいはつく。それ自体に不自然な点はないはずだ。

 しかし、花室は腑に落ちないというように眉をひそめている。


「私のことではなくて。……いえ、私のことも驚いたのだけれど。そうじゃなくて………桜川ひたちの家まで把握しているの?」

「え? まあ、一応」


 言った後で、マズいな、と思った。

 たいして接点もない女子の家を、惜しげもなく知っているとのたまえば、それは警戒されてしかるべきだ。

 反対の立場で考えて、俺だって、桜川に実家の所在を把握されていたら身の毛くらいはよだつ。桜川でそうなのだから、俺の先の発言は相当なものだろう。


 ドン引きされた。それはもう、目に見えて不快な雰囲気だった。



「気持ち悪い……いえ、さすがはあまね、といった所かしら」


 並の男子ならば自殺を図るレベルの発言を漏らし、その後になぜか感心された。とはいっても心に負った傷はそんなもので癒えたりはしない。プラスマイナス余裕でマイナス。


「そこまで把握しているとは、本当に感心するわ。…………作戦変更。あまねの心意気に免じて、家路につく桜川ひたちを背後から強襲しましょう」

「なにを免じてるんだ⁉ 難易度跳ね上がってんじゃねえか!」

 自宅前まで泳がせてから襲うとか愉快犯の域だろもう。



「……分かったよ。尾行に協力してやるから、物理的危害を加えるのはやめてやれ」

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