シャトーデパルフェ
黒葉の森を抜けて街へと帰還した私たちは、一旦休憩するためにカフェみたいな店に入ることにした。
名前は『Château de Parfait』……シャトーデパルフェって読むみたい。
リーナがいてくれたので入ることが出来たけど、かなりオシャレな内装をしていて、現実だったら気後れして絶対に入れないタイプの店だった。
このゲームではプレイヤーが店を経営することも出来るようで、この店もプレイヤーが経営しているらしい。
他にもこういう店はいろいろあるみたいだけど、ここは使い魔も一緒に入れると明言されていたので今の私にはちょうど良かった。
ちなみに配信はいったん止めてある。配信もゲームシステムに含まれてるものではあるけど、それが原因でトラブルが起きないとも限らないし……。
「いらっしゃいませ!」
店に入ってすぐに店員さんが出迎えてくれて、席へと案内された。
使い魔たちの分の席まで用意してくれたので、私たちは少し大きめのテーブルを囲む状態になっている。
大通りから少し離れた人のあまりいないエリアにあるのでお客さんもあんまり来てなさそうだと思っていたけど、思ったよりも多かった。
人気の店なのかな?
「ご注文はメニューのウィンドウからどうぞ!」
差し出されたメニューを手に取ると、ウィンドウが表示された。
色々とメニューがあるけど、全体的に動物モチーフのものが多い。おすすめなのはパフェらしいので、私はホワイトベアーパフェを注文することにした。
リーナはブラックベアーパフェを注文していた。チョコレート系のパフェみたい。
使い魔用のメニューもあったので、それも注文してみる。
さて、とりあえず待ってる間にこれからの行動方針とかを決めようかな……と思ったけど、そういえばさっきの戦闘中にスキルを手に入れていたことを思い出した。
ステータスからスキル一覧を見てみると、新しく【楔視の魔眼】というパッシブスキルが追加されている。
――――――
【楔視の魔眼】
パッシブスキル
打ち込まれた『厄災の楔』を見ることが出来るようになる。
厄災の楔は認識することで物理的に触れることが出来るようになり、引き抜くことで霧を払うことが出来る。
厄災の楔の強度は打ち込まれた対象の生命力に比例して強くなるため、通常の《テイム》同様に対象を弱らせる必要がある。
――――――
予想通り、あのトゲに関連するスキルだった。
正式名称は厄災の楔と言うらしい。厄災の霧と言い、『厄災』というワードがいろいろと出てくるけど何なんだろう。結構重要そうな感じだけど……。
「お待たせしましたー! ホワイトベアーパフェとブラックベアーパフェです!」
思ったよりも早く注文したものが運ばれてきた。
ホワイトベアーパフェは生クリームやバニラアイスに白いブドウのような実など全体的に白い食材でまとめられていて、一番上にはデフォルメされたクマの飾りつけがしてある。
結構かわいい見た目で、現実にあったらすごく人気がでそうな感じだった。
「それからスモールベアーケーキを4つ……」
使い魔たちの前にケーキを並べていた店員さんが、サクを見て固まった。
どうしたんだろう……と考えていると、店員さんが急にガシッと私の手を掴んだ。
「あの、この子の写真撮っても良いですか!? 新メニューの参考にしたいので!」
「えっ、あ、はいっ」
「ありがとうございます!」
店員さんは勢いよくお辞儀をして、それからサクを観察し始めた。
メニューも動物モチーフだし、動物が好きなのかな?
結構ぐいぐい行ってるけど、当のサクは全く気にせずにケーキをがつがつ食べているので大丈夫そう。
その様子を眺めつつパフェを食べていると、店員さんが気になったのかアリスがひょいっと机の上を移動してサクのところへと向かった。
それから自分も見て! って感じに店員さんの視線の先にジャンプする。
店員さんはそんなアリスの頭を撫でて、それから「あれ?」と呟いた。
「この子、もう進化しててもおかしくないと思うんですけど……どうしたんだろう」
「使い魔って進化するんですか……?」
「はい! ホーンラビットはレベル10で進化ですよ! 他の条件とか別ルートとかはなかったはずですけど……あ、もしかしてジョブクエストやってなかったりします?」
ジョブクエスト……? 聞いたことのない言葉に首を傾げていると、店員さんが説明してくれた。
「職業ごとにクエストがあるんですよ! スキルとかシステムにはそれでしか解放できないものもあって、使い魔の進化はまさにそれなんです。基本的にはギルドに行けば受けられるので、早い段階で受けておくといいと思いますよ!」
初耳だった……このゲームだとそういうシステムになってるらしい。
もしかしたらコメントとかに書いてあったかもしれないけど、言われなかったら気づかなかったと思う。
とにかく、これで次やることは決まった。ジョブクエストを受けに行って、アリスを進化させよう。




