はじまりフラッシュバック
ちょっと実験的な新作です。よろしくお願いします!
「えっと……こ、声とか聞こえてますか……? 大丈夫ですか……?」
カメラ型のマジックアイテムに向かってそう喋りかけると、横に開いたウィンドウに大量のコメントが流れる。
『聞こえてるよ~』
『待機』
『かわいい』
『また特殊職が出たと聞いて』
『初見です!』
『おお~』
『肩に乗ってるの何?』
『オッケー』
『初心者だ』
『カワイイ』
「ひぇっ……」
予想以上のコメントの圧力に思わず仰け反ってしまう。
視聴者数はこの時点でもう5000人……え、これ本当にやらないといけないの……? リーナは最初はどうせ10人くらいだからそこから慣れていこうって言ってたのに……なんでこんなに……
もう後悔とかそういうことをしている場合じゃないんだけど、それでも悔やまずにはいられない。
私の人生は後悔ばかり。それをどうにかしようとしてここまで来たのに…………
私の脳内に、昨日の光景がフラッシュバックした。
――――――
ある日の放課後、私は唯一の友達である莉奈に誘われて、彼女の家まで遊びに行った。
かなり緊張しながら三分くらいかけてインターホンを押すと、すぐに扉が開かれる。
「待ってたよ〜恵那ちゃん!」
「ご、ごめんね? ちょっと遅れちゃって……」
「全然平気! ささ、上がって!」
促されるまま、彼女の家に上がる。
莉奈は家庭の都合で高校生ながら一人暮らしをしているので、親に遭遇したりすることはない。
友達の家に遊びに行って友達の親に出迎えられたりするとどうしたら良いのか分からなくて倒れてしまうだろうし、これはすごくありがたい。
莉奈に案内されるまま彼女の部屋に入ると、部屋の中央のテーブルに段ボールが二つこれ見よがしに置かれていた。
「……この箱は……?」
「ふふーん、やっぱ気になる? これはね……なんと! 私から恵那ちゃんへの誕生日プレゼント!」
「誕生日プレゼント……!」
友達から誕生日プレゼントをもらえるって話、都市伝説じゃなかったんだ……!
親以外からプレゼントをもらったのは生まれて初めてだし、私の誕生日は五ヶ月後だけどすごく嬉しい!
「開けてもいい……?」
「もちろん! あ、片方は私のだから……はい、こっちね!」
手渡された箱を開けると、中に入っていたのは……ヘルメット?
「……えっと、これは?」
「ヘッドギアって知ってる? VRゲームをやるために必要なやつ」
「あー……そういえばVRゲーム流行ってるよね今……え、これヘッドギアなの?」
ヘッドギアって確か安くても5万円はするような気がするんだけど……
「そうだよ! バイトして貯めたお金で私の分と恵那の分買っちゃった!」
どうしよう……誕生日プレゼントって確か五倍にして返さないといけないんだよね……最低でも25万……いや、もしかしたらもっと高いのかも……???
「ひぅ……内臓だけは勘弁してください……」
「どういう思考回路で内臓にたどり着いたのかな……多分お返しとか重く考えてるんだろうけど、その辺は気にしないでいいよ! そもそもタダでプレゼントするつもりはないからね」
「そ、そうなの?」
「色々と条件があるから説明するね。まず一つはできるだけ私と一緒に遊ぶこと!」
「うん、それは大丈夫。そのつもりだし……他に友達いないし……」
「次! 最初に遊ぶゲームはこっちで指定するよ! もう買ってあるからね」
「ソ、ソフトまで買ってくれたんだ……」
「そして最後! 恵那には配信者になってもらうよ!」
「うん、配信者……配信者……!?!?」
配信者って、あの配信者……?
大勢の人の前で話して、ちょっとでも失言するとボコボコにされて一生ネットでおもちゃにされるっていう……。
「なんかまたネガティブなこと考えてない? まあ無理にとは言わないけど……恵那がネガティブなのとか人見知りなのを克服したいっていうから頑張ってそろえたんだよね~……?」
「あ、圧力……」
確かに、そういうことを言った記憶はある……というか昨日言ったんだけど、行動力凄いな……。
正直配信者とか怖すぎるけど、流石にここまでしてくれたのに断るわけにはいかないよね……それに、このネガティブな性格をどうにかしたいのは本当だし……。
「わ、分かった……私、やる!」
こうして、私は配信者になることになったのだった。
面白い!と思っていただけたら下の「☆☆☆☆☆」から評価していただけると嬉しいです!!
感想やブクマと合わせて執筆の原動力になります!!




