96話 つまりはただの
普通の一話より長いダイジェストってどうなんでしょうね…
修はツンツンポーラさん相手に究極奥義の称号変更を敢行した。
すると一晩中ハードな戦いを強いられた。
お互いの技を凝らした戦闘となったが、最後は体力が物を言うのだ。
ぬるぬるのぐちょぐちょになってしまったが、遂にT.K.Oを勝ち取った。
そこからも、必死にポーラさんのご機嫌取りを行い続けた。
実に素晴ら…いや、恐ろしい体験だった。
冷静に考えると確かに、いつもお相手をしている女性が居るのに、別の人に手を出すのはよろしくないことだろう。
修はそう考えて納得した。
が、翌朝目を覚まして正気になったポーラさんにとっても怒られた。
要約すると、「いつもこんなことばかりでは機嫌は直りしませんよ」ということだ。
昨晩はめっさ喜んでましたがな、と思いつつも、あれは称号を変更した故の効果なのだろう。
そこから修は土下座を敢行した。
そのおかげで探索はお休みした。
修はふらふらと、同好の士である親方に会いに彼らの仕事場に行った。
そこには、やはり魂の抜けた顔の親方が居た。
「…イッテナイ…オレハイクキハナイ…イカナイ…イカナイ………」
ブツブツと親方が呟いていた。
もう休めばいいのに。
「…ポーラサンカワイイ…ポーラサンビジン…ポーラサンサイコウ…ポーラサンオッパイ…ポーラサン……」
しかし修もひたすらに呟いていた。
修、あなた疲れてるのよ。
ポディ&マハッタヤさんもダンランドレスさんもトニー&ゴンザレスさんも、二人には何も言わなかった。
ただただ、実に恐ろしいことがあったということだけは理解した。
翌日に27層に向かった。
27層は、また変わった階だった。
何と、川が流れている。
迷宮の中心を通る、とても大きな川が。
何処から流れてどこに流れるかは、永遠に分からない。
匂いは特にないので大丈夫だ。
水生生物が敵として現れるのだろう。
こういうところでは、ポーラの鼻はあまり機能しないので、修が注意を払う。
「む?」
修が、何かを発見した。
実に穏やかな川に、ぽつりと。
どう見てもワニだ。
修はどこか懐かしさを感じた。
どこぞの国で川の上を走っていると、良く下から飛びかかって来たものだ。
修の予想通り、それはすぅーっと近づいて来た。
「カファ」
ポーラも気付いて剣を抜ける体勢になり、カファに声をかけた。
カファも、やれやれと言った風に盾を構えた。
三人の視線が集中する中で、それは現れた。
ワニだった。
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LV.27
ワニゲーター
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何と言う投げやりな名前だろうか。
ふざけているとしかいいようが無い。
もうワニでも、アリゲーターでも良いではないか。
「……」
そして修は沈黙を持ってワニゲーターを見た。
手足が、短すぎる。
幾らなんでも短すぎる。
歩けるのだろうかすらも不安になる。
更に、口でかい。
でかすぎる。
体の70%は口だと言っても過言ではない。
残りの20%は胴体で、更に10%が尻尾だった。
そう、尻尾も短くて細いのだ。
ワニの主力の一つではないのか。
ワニゲーターは、その短すぎる手足を忙しく動かして、修達に走り寄って来た。
「サンダーランス!!」
ワニゲーターは死んだ。
雷の槍が近づいて来ることは理解していても、手足が短すぎて方向転換が出来なかったのだ。
不憫。
そして落としたものは『ワニ革』。
サイフにでも使うのだろうか。
二匹目は、魔法を撃たれることなく接近できた。
接近すればこちらのもの、と言わんばかりに、その巨大な口で修に噛みつこうとした。
「はい」
挟み込まれた修が、あっさりと上顎と下顎を押さえた。
ワニゲーターが如何に頑張ろうが、閉じる気配はない。
修はこのまま引き千切ってやろうかと思ったが、ちょっとグロすぎるので止めてあげた。
「ほい」
代わりに口の中を蹴り飛ばした。
ワニゲーターは破裂して死んだ。
どっちもどっちだった。
そして三匹目。
これはカファとポーラが相手をした。
その巨大な口に怯むことなく、カファが正面に立った。
そして、盾を挟まれた。
「……む」
ぐいぐいと引っ張り合いを始める。
カファは大したもので、ワニゲーターとの力比べにも決して負けていなかった。
が、
「のぉぁ!!」
ワニ特有のデスロールが行われると、引っこ抜かれた。
それでも盾を手放していないことは評価してあげたい。
しかし、攻撃のためとはいえ腹を見せたのは頂けない。
「はっ!!」
ポーラさんは、その回転の合間に柔らかい腹に向けて剣を叩き込んだ。
空中で震えたワニゲーターの、顎の力が緩んだ。
それにより、カファはすっぽ抜けた。
結構な速度で空中を飛ぶカファを、修はあっさりと受け止めた。
「はい」
しかし急制動による素敵なGがカファを襲った。
「ぅぐっ!」
一気にやる気が激減したカファに、ポーラの叱咤が飛んだ。
「カファ!」
カファは一瞬気を失った振りでもしようかと思ったが、ばれたらまた炙られる。
「……はぁ」
仕方なく、再びワニゲーターに向かって行った。
一方ポーラさんは、皮膚が硬かろうが構いもせずに攻撃し続けていた。
それだけ、武器の攻撃力が高いのだ。
とはいっても、多少はダメージを軽減しているのだろう。
カファが辿り着いても、まだ息はあった。
しかし辿り着き、カファが盾を構えても、ワニゲーターは攻撃してこなかった。
短い手足を必死に動かして、方向転換している。
川の方へ。
逃げる気満々である。
「っ!」
それを察知したポーラは実に迅速だった。
軽く飛んで、カファの肩に乗ると、そこからさらに跳躍を行った。
何時の間にそんな技を開眼したのだろうか。
「おおおおお!?」
ポーラは空中でくるりと回転すると、二刀の剣を逆手に構えてワニゲーターに落下した。
剣がぐっさりと突き刺さっていた。
ワニゲーターは死んだ。
一度ぶん回されたカファは学習した。
噛みつきは回避するようになった。
ぶん回されても、後ろで修が「バッチコーイ!」と構えているが、またあのGを味わいたくはない。
噛まれない様に調整し、弾き飛ばす様にしていた。
そしてボスにまで辿り着いた。
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LV.27
ボス・ワニゲーター
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口の大きさはそのままに、胴体と尻尾がそれに見合った大きさになっていた。
足もそこそこに伸び、時速60km位の速度で走れそうだ。
つまりは。
「ただのワニじゃねーか!!」
修が叫び、飛び蹴りを叩き込んだ。
我慢できなかったのだ。
ふと気付きましたが、感想をたくさん頂けている気がします。
ありがとうございます。
短文ばかりですが、今のところ全部返信は出来ていると思います。
漏れてたら、素で漏らしています。すいません。




