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その拳にご注意を  作者: ろうろう
99/136

96話 つまりはただの

普通の一話より長いダイジェストってどうなんでしょうね…

修はツンツンポーラさん相手に究極奥義の称号変更を敢行した。

すると一晩中ハードな戦いを強いられた。

お互いの技を凝らした戦闘となったが、最後は体力が物を言うのだ。

ぬるぬるのぐちょぐちょになってしまったが、遂にT.K.Oを勝ち取った。

そこからも、必死にポーラさんのご機嫌取りを行い続けた。


実に素晴ら…いや、恐ろしい体験だった。


冷静に考えると確かに、いつもお相手をしている女性が居るのに、別の人に手を出すのはよろしくないことだろう。

修はそう考えて納得した。


が、翌朝目を覚まして正気になったポーラさんにとっても怒られた。

要約すると、「いつもこんなことばかりでは機嫌は直りしませんよ」ということだ。

昨晩はめっさ喜んでましたがな、と思いつつも、あれは称号を変更した故の効果なのだろう。

そこから修は土下座を敢行した。

そのおかげで探索はお休みした。

修はふらふらと、同好の士である親方に会いに彼らの仕事場に行った。


そこには、やはり魂の抜けた顔の親方が居た。


「…イッテナイ…オレハイクキハナイ…イカナイ…イカナイ………」


ブツブツと親方が呟いていた。

もう休めばいいのに。


「…ポーラサンカワイイ…ポーラサンビジン…ポーラサンサイコウ…ポーラサンオッパイ…ポーラサン……」


しかし修もひたすらに呟いていた。

修、あなた疲れてるのよ。

ポディ&マハッタヤさんもダンランドレスさんもトニー&ゴンザレスさんも、二人には何も言わなかった。

ただただ、実に恐ろしいことがあったということだけは理解した。




翌日に27層に向かった。

27層は、また変わった階だった。


何と、川が流れている。

迷宮の中心を通る、とても大きな川が。

何処から流れてどこに流れるかは、永遠に分からない。

匂いは特にないので大丈夫だ。


水生生物が敵として現れるのだろう。

こういうところでは、ポーラの鼻はあまり機能しないので、修が注意を払う。


「む?」


修が、何かを発見した。

実に穏やかな川に、ぽつりと。

どう見てもワニだ。

修はどこか懐かしさを感じた。

どこぞの国で川の上を走っていると、良く下から飛びかかって来たものだ。


修の予想通り、それはすぅーっと近づいて来た。


「カファ」


ポーラも気付いて剣を抜ける体勢になり、カファに声をかけた。

カファも、やれやれと言った風に盾を構えた。


三人の視線が集中する中で、それは現れた。

ワニだった。


----------------------------


LV.27

ワニゲーター


----------------------------


何と言う投げやりな名前だろうか。

ふざけているとしかいいようが無い。

もうワニでも、アリゲーターでも良いではないか。


「……」


そして修は沈黙を持ってワニゲーターを見た。

手足が、短すぎる。

幾らなんでも短すぎる。

歩けるのだろうかすらも不安になる。

更に、口でかい。

でかすぎる。

体の70%は口だと言っても過言ではない。


残りの20%は胴体で、更に10%が尻尾だった。

そう、尻尾も短くて細いのだ。

ワニの主力の一つではないのか。


ワニゲーターは、その短すぎる手足を忙しく動かして、修達に走り寄って来た。


「サンダーランス!!」


ワニゲーターは死んだ。

雷の槍が近づいて来ることは理解していても、手足が短すぎて方向転換が出来なかったのだ。

不憫。

そして落としたものは『ワニ革』。

サイフにでも使うのだろうか。




二匹目は、魔法を撃たれることなく接近できた。

接近すればこちらのもの、と言わんばかりに、その巨大な口で修に噛みつこうとした。


「はい」


挟み込まれた修が、あっさりと上顎と下顎を押さえた。

ワニゲーターが如何に頑張ろうが、閉じる気配はない。

修はこのまま引き千切ってやろうかと思ったが、ちょっとグロすぎるので止めてあげた。


「ほい」


代わりに口の中を蹴り飛ばした。

ワニゲーターは破裂して死んだ。

どっちもどっちだった。





そして三匹目。

これはカファとポーラが相手をした。

その巨大な口に怯むことなく、カファが正面に立った。

そして、盾を挟まれた。


「……む」


ぐいぐいと引っ張り合いを始める。

カファは大したもので、ワニゲーターとの力比べにも決して負けていなかった。

が、


「のぉぁ!!」


ワニ特有のデスロールが行われると、引っこ抜かれた。

それでも盾を手放していないことは評価してあげたい。

しかし、攻撃のためとはいえ腹を見せたのは頂けない。


「はっ!!」


ポーラさんは、その回転の合間に柔らかい腹に向けて剣を叩き込んだ。

空中で震えたワニゲーターの、顎の力が緩んだ。

それにより、カファはすっぽ抜けた。

結構な速度で空中を飛ぶカファを、修はあっさりと受け止めた。


「はい」


しかし急制動による素敵なGがカファを襲った。


「ぅぐっ!」


一気にやる気が激減したカファに、ポーラの叱咤が飛んだ。


「カファ!」


カファは一瞬気を失った振りでもしようかと思ったが、ばれたらまた炙られる。


「……はぁ」


仕方なく、再びワニゲーターに向かって行った。




一方ポーラさんは、皮膚が硬かろうが構いもせずに攻撃し続けていた。

それだけ、武器の攻撃力が高いのだ。

とはいっても、多少はダメージを軽減しているのだろう。

カファが辿り着いても、まだ息はあった。

しかし辿り着き、カファが盾を構えても、ワニゲーターは攻撃してこなかった。

短い手足を必死に動かして、方向転換している。

川の方へ。

逃げる気満々である。


「っ!」


それを察知したポーラは実に迅速だった。

軽く飛んで、カファの肩に乗ると、そこからさらに跳躍を行った。

何時の間にそんな技を開眼したのだろうか。


「おおおおお!?」


ポーラは空中でくるりと回転すると、二刀の剣を逆手に構えてワニゲーターに落下した。

剣がぐっさりと突き刺さっていた。

ワニゲーターは死んだ。




一度ぶん回されたカファは学習した。

噛みつきは回避するようになった。

ぶん回されても、後ろで修が「バッチコーイ!」と構えているが、またあのGを味わいたくはない。

噛まれない様に調整し、弾き飛ばす様にしていた。




そしてボスにまで辿り着いた。


----------------------------


LV.27

ボス・ワニゲーター


----------------------------


口の大きさはそのままに、胴体と尻尾がそれに見合った大きさになっていた。

足もそこそこに伸び、時速60km位の速度で走れそうだ。

つまりは。


「ただのワニじゃねーか!!」


修が叫び、飛び蹴りを叩き込んだ。

我慢できなかったのだ。

ふと気付きましたが、感想をたくさん頂けている気がします。

ありがとうございます。

短文ばかりですが、今のところ全部返信は出来ていると思います。

漏れてたら、素で漏らしています。すいません。

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