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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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68話 やはり手遅れだった

また何だか騒がしいことになったので、修とポーラは夜逃げした。

あまり消耗品を買い込めなかったが、初めはスルーしようとしていた村に立ち寄って揃えることにした。

そこそこ小さな村で、何故か空気が最悪だった。

まず、なんかギスギスしている。

しかも男達が騒がしくしている。


「・・・なんだろうね?」


修は村の様子に首を傾げた。


「・・・なんでしょう?」


ポーラも首を傾げた。

疑問に疑問を返してはいけないと言うのに。

コントの様なやり取りをしながら、二人は宿を探そうとする。


「・・・あなた方は旅人ですかな?お強いのでしょうか!?」


すっごく村長っぽいお爺さんに捕まった。

こそこそしていたというのに。


「はい。それはもうお強いです」


ポーラが胸を張って、修を指し示した。

煽りおった。


「おお!!」


村長っぽいお爺さんの目が希望に輝いた。

もう逃げられない。

またポーラに夜の説教コースだ。

前回の説教は逆に喜ばせてしまったので、今回はちゃんと罰を与えねば。




村長っぽいお爺さんは、やはり村長だった。


「宿ですかな?うちに泊まって下され!」


修の考えを先読みしたかの様なセリフまで吐いて、村長の家にまで連れて行かれた。。

このジジイは何者なのだろうか。


「・・で、何でしょうか?」


早く温泉い入りたい病に感染した、軽くやさぐれモードの修が胡乱げに聞いた。

しかし、村長は年の功で得た面の皮で容易く受け流した。


「実は、最近見たことも聞いたことも無い魔物が出るようになったのです・・・」


「へぇ」


修は興味なさげに呟いた。

修には、ほとんどの魔物が初見だ。

代わりに、ポーラの眉がピクリと動いた。


「勿論、迷宮ではないので弱いとは思います。しかし、我々だけでは何かあった時には対応できないかと思いまして・・・。街に助けてもらおうと思った所を、シュウ殿とポーラ殿が通りかかったのです」


村長が苦悶の顔で言った。

本当に良い面の皮をしていやがる。


「・・・どんな魔物なのでしょうか?」


興味を覚えたポーラ先生が村長に問いかけた。


「・・・見たことも無い顔の魔物です。穴だらけの仮面を被っていて、体も大きい。斧まで持ってうろついているのですよ・・・」


村長は、さも恐ろしげに身を震わせて言った。


「・・・確かに、それは聞いたことがありませんね」


ポーラも、うーんと考え込む様にして唸った。

ポーラさんは好奇心が強かった。

ちらちら、とこちらを見て来るポーラに、観念した修が呟いた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと見に行こうか」


村長が俊敏に食いついた。

ジジイとは思えぬ速度だ。


「おお!退治して下さると!!ありがとうございます!」


そこまで言ってねぇよ。




魔物を見た、と言われる場所まで向かった。

ポーラがクンクンと鼻を鳴らして呟いた。


「・・・近くに居そうですね」


「・・・うん。あっちだね」


気配を察知した修が、めんどくさそうにずかずかと歩いて行った。

修は、早く温泉に入りたいのだ。

面倒事はすばやく終わらせるに限る。


そして発見した。


----------------------------


LV.1

マスクマン


----------------------------


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


名前はそのままだった。

問題はそこではない。

修には、その仮面と斧に見覚えがあった。

アイスホッケーの仮面と、マチェットだ。

実に修の記憶の存在と一致する。

ジェ○ソン的な感じだ。

唯一違う点は、痩せてひょろひょろな所だけだ。


神は、既に作っていたのだ。

多分レベルが上がればマッスルになって行くのだろう。


「確かに、不気味ですね」


とポーラが呟いているが、修の耳には入って来なかった。

無造作に近づき、ひょろっとした胴体に拳を叩き込んだ。


「セイッ!!」


ジェイ○ンもどき、マスクマンは弾け飛んだ。

と思いきや、一瞬で体が治る。


接近した修に、マスクマンは、重そうにマチェットを持ちあげる。

細腕では辛いようで、腕がぷるぷるしている。

遅すぎる。


「セイッ!!」


修は、今度はマスクに正拳を叩き込んだ。

マスクが壊れると、マスクマンは倒れ伏し、二度と起き上って来ることは無かった。

不死身さを、仮面を本体とすることで再現したのだ。

グラスパンダサンと激しくかぶっている。


「・・・・・なるほど。仮面が本体なのですね」


ポーラが納得顔で頷いていた。




帰って報告をした。


「仮面が弱点。とても弱い」


この二点があれば、余裕だろう。

村長はほっと安心していた。

流石に、村のことはちゃんと考えているのだろう。


「ありがとうございます!・・・・それでですね、実は問題がもう一つありまして」


何と言う面の皮の厚さだろうか。


「いや、通りすがりなので・・・」


修が呟いたが、ジジイは聞こえないふりをした。


「女性の下着が盗まれているのです・・・」


「・・・は?」


修は呆然と呟いた。

しかし、女の敵の登場に、ポーラの目が一気に険しくなった。


「・・・どういうことですか?」


「・・・ある日、唐突に孫娘の下着が無くなりまして・・・。後日、こんなものが置いてあったのです・・・」


ジジイが一枚の紙を取り出した。

ポーラがそれを受け取り、睨み付ける様にして見た。


『お前のパンツは頂いた』


そう書いてあった。

変態だ。

修は遠い目をして、中身が大事だろう、と思った。

ポーラさんのエロ衣装に、いちいち興奮している男とは思えない思考だ。


ポーラは険しい顔のまま、手紙に鼻を近づけてふんふんと鼻を鳴らした。


「こ、これは!!」


そして目を見開いた。


「ど、どうしたの?」


修が突然の叫びに驚いてポーラを見た。

ポーラは、キッと村長を見つめた。


「・・・・・・・・・・村長さんの臭いしかしません」


そう、この紙には、村長の臭いしかなかった。

100%村長だけである。


「儂が悪戯で書いたんじゃ・・・」


修は、このジジイ殴っていいかな、と考えた。

割とマジで。

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