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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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33話 離れていれば安全だと思ってた

頑張った。

明日は2回更新は期待しないでください(切実

清算に帰った。

箱も普通に売れた。

マッスルミートを売ると、後ろの方でやけにムキムキの男達が歓声を上げていた。

修とポーラは、彼らを視界に収めない様にしてギルドを後にした。


帰宅後、ポーラの願いにより、二人で訓練を行った。

訓練といっても、ポーラの攻撃は掠りもしないし、デコピンを喰らいまくっているだけの様に見えるが。


「~~~~~~~~~~ッ!!」


額を押さえて悶絶するポーラがぱったりと倒れた。

何発も何発も喰らい、遂に力尽きたのだ。

全身から汗を滴らせ、ぜぇぜぇと荒い息を吐くポーラを心配そうに見つめていると、声が聞こえて来た。


「シュウ様、いらっしゃいますか?」


どこかで聞いたような声だった。


「ん?はーい」


ふらふらと幽鬼のように立ち上がりかけたポーラを手で諌め、修が玄関に向かった。


訪ねて来たのは、カマンの使用人だった。

何でもカマンから話があるらしい。

会いに行くと伝言をお願いし、ポーラにカマンに会いに行くことを伝えた、

ポーラに休んでいるように勧めたが、ポーラはフラフラになりながらも着いて来た。

痛々しい額は癒してやった。




「こんにちわ」


応接室で待っていたカマンに、修が頭を下げる。

ポーラも修の一歩後ろから頭を下げた。


「おお、シュウさん、ポーラ。ささ、おかけください」


カマンはいつも通りの笑顔で椅子を勧めて来た。

メイドさんが手慣れた動きでお茶を準備してくれる間に、カマンが早速切り出してきた。


「親戚が結婚するので呼ばれたのです。ついでに仕事もあるので、少々街に滞在します。その護衛をお願いできれば、と思いまして」

修は期待した。

ようやく違う街を見ることが出来そうだ。


「俺は大丈夫ですね。ポーラは?」


修は嬉しそうに頷き、ポーラを見た。

何なら留まって居ても良い、と思ったのだが。


「はい。私も大丈夫です」


着いて来る気満々だった。

ポーラもレベル的にも護衛には申し分ないだろうが。


「助かりますな」


修はドラゴンを倒した実績もあるので、実力的には間違いなく、この街最高である。

値段について交渉したが、修もポーラも普通の護衛の値段で頷いた。

修にしても街を見るついでなので、報酬を貰えれば御の字。

ポーラも修にくっついていれば不満は無いのだ。

カマンも嬉しそうに笑った。


「何か都合などはありますかな?まだ暫く余裕はありますが・・・」


最後に日付調整だ。

カマンとしては、出来るだけ早くに出たかった。


「あ、いつでもいいですよ」


修はあっさりと言った。

予定と言えば、毎日迷宮に潜るだけである。

多少遅れたところで問題はあるまい。


「そうですか?では明日の朝から出発でお願いします」


「はい。随分急ですね」


修は頷いたが、意外そうに言った。

何時でも良いが、まさか翌日からとは思わなかった。


「ははは。まあ、実際、式はついでですしな。先日シュウさんが倒したドラゴンの素材で作った装備を、とある方に売りに行くのですよ。それ以外にも、色々と仕入れたいものもございますし。時間はいくらあっても足りませんよ」


早く装備が欲しくて、お偉いさんが五月蠅いのだそうだ。

カマンは多少困った顔だが、高く売ったのだから文句も言えなかった。


「なるほど。ではまた朝にお邪魔します」


「はい。お願いします」




修とポーラは荷造りを始めた。

とはいっても、そんな大層なものではない。

目立つ装備を隠すための外套やら、念のための食料。

後はついでに新しい服をいくつか買ったくらいだ。

ポーラは動き安い服装を好むようで、スカートは買わなかった。

代わりに勧めたホットパンツを買ってくれた。

健康的な太ももが見れて、実に眼福であった。




修は夢を見ていた。

夢の中の修は走っていた。

その体は小さく、12歳程度の顔をしていた。


ジジイの無茶も苦も無くこなせるようになった頃に出会った衝撃的な相手だった。

何せ、死なないのだ。


毎度の如く、ジジイに世界のどこかに置き去りにされたが、修は容易く人里に辿り着いた。

言語が通じないながらも、ヒッチハイクをし、「HAHAHA!!」と快活に笑う金髪のおっさんに拾われた。

そのおっさんとジェスチャーで意気投合し、とある湖の近くで一晩を過ごした。


それは、その日の夜に現れた。

シルエットは人間だったが、巨大だった。

アイスホッケーの仮面を被って、チェーンソーやらマチェットやらを持って突然襲い掛かって来たのだ。

「Oh!Jas○n!!」等と叫んで恐れ戦いているおっさんをよそに、修は一瞬で踏み込み、拳を叩き込んだ。


常人であれば瀕死になりかねない威力で放たれた拳を受けてもなお、そいつは平然と立ち上がった。

こんなところで殺人をするわけにもいくまい、と判断した修は、「NINJA?!」等と驚いているおっさんを抱えて逃走した。

仮面男は執拗に追ってきた。

瞬間移動でもしているのか?と思えるほどの速度で追ってきたのだ。


修とおっさんの逃亡劇は続いた。

何度殴っても、蹴っても。

一度は『やりすぎたか?!』と思うほどの拳を埋め込んでも。

突如出現し、また襲い掛かって来たのだ。

そのタフネスは、散弾銃をぶっ放すおっさんをして「Crazy!!」と言わしめていた。


みるみるおっさんは疲弊していった。

そんな中、修は決意した。

人気の無いところで、抹殺することを。

修の決意など知るはずも無く、暗闇の支配する山の中に誘い込まれた仮面男に、修は当時全身全霊を込めた拳を叩き込んだ。


「セェリャァア!!!!!」


仮面男は肉片ひとつ残さず消し飛んだ。

修の人外への一歩はこうして踏み出された。

唯一の懸念はその瞬間を見ていた金髪のおっさんだったが、おっさんは「Miracle boy!!Thank you!!Thank you!!」等と言って抱き付いて来た。

そこから帰国するまで、最後まで親切にしてくれた。

問題ないだろう。


そしてその日から、修は奇想天外な物と戦うことになったのだ。




修が見ているのは、その当時の夢だった。

夢の中で修は、「Holy shit!!」等と叫んでいるおっさんを背に庇い、仮面男と向かい合っていた。

ちょうど、抹殺を決意する直前の交戦だった。


「セェェイッ!!!」


目の前のシルエットに向け、当時、『やりすぎたか?!』と思った拳を放った。


「こけぇ?!」


鶏の断末魔の様な声が聞こえて来た。

夢の中、記憶との違いに、修は我に返った。


「・・・・・・・・・あれ?」


気付けば、拳を振り抜いた体勢だった。

仮面男は居なかったし、後ろに金髪のおっさんもいなかった。

代わりに、修の眼前、遥か彼方に神が倒れていた。


「あわわ・・・!」


修が慌てて神に駆け寄った。

感触は無かったので、拳で殴っていないだろう。

だと言うのに、神は腹に痛々しい拳の後を残して、白目を剥いて失神していた。

衝撃波が直撃したのだ。

神が近くに居れば危うかった。

修は冷や汗を拭って、安堵の息を吐いた。


「・・・よかった」


神からの返事は無かった。

元ネタが分からない方は、

『アイスホッケーのマスク マチェット』でググって頂ければ分かると思います。

P.S.深夜に見て寝られなくなっても私の責任ではありません。

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