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Cross Navi Re:〜運命の交差〜  作者: noah太郎
第三章 交差する物語
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1-52 ミウルの復活


「くっ…!!」



強い光がミカエリスの視界を支配していく。動きを抑えていた春樹からも手を離し、ミカエリスは眩しさを手で遮りながら、後退りする。



「なっ…なによ…この光は…!」



すでに目の前の春樹も光に包まれて姿は見えない。ミカエリスは春樹を殺してでも首飾りを奪うつもりで、思い切り法陣を光の中心に叩き込んだ。


爆風とともに光は収まり、砂煙が待っている。



「くっ…くそ…首飾りは…?」



砂煙をかき分けて、ミカエリスは春樹が持っていた首飾りを探すが、さっきまでいた場所に春樹の姿も首飾りもなかった。



「どっ…どこにいった!」


「こっちだよぉ…ミカイル〜」



必死の表情でキョロキョロとするミカエリスに声がかけられる。ミカエリスにとってそれは懐かしい声だ。



「ミッ…ミウル…様…」



振り返った方には、ストライプ柄のスーツを着た女性が、春樹と一緒に立っていた。

そして、春樹から首飾りを受け取ると、改めて口を開いた。



「久しぶりだね…ミカイル…いや、今はミカエリスかな?」


「ミウル様…お久しゅうございます…やっと…やっとあなた様を…」



ミカエリスは目にいっぱいの涙を浮かべ、愉悦の表情を浮かべている。

春樹はそれを見て、正直、狂気を感じた。


喜びというより、愛情…狂気的な愛情を感じ取ることができたのだ。



「ハルキ…気をつけて…あの子はすでに魔人だから、今の僕じゃ太刀打ちできない…」


「えっ…?じゃあ、ここからもノープランってことか?」


「そういうことになるね…」


「マジかよ…アルコたちがはやく来てくれないと…詰みじゃん…」



危険を冒してまで復活させた相手が、真面目な顔をしてまさかといった発言をしたことに、春樹は頭を抱えた。


気づけば、ミカエリスの横にはクロスも来ていて、大きなあくびをしている。



「あれがこの世界の"元"管理者、ミウル様か…?」


「えぇ、そうよ…もっと言えば、あなたたち一族の祖になるわね…」


「ん…?ミカエリス…今…なんて…?」



ミカエリスの言葉に反応を見せたミウルは、少し動揺しているようだ。春樹は横に立っていて、そんな雰囲気を感じ取った。


その質問にミカエリスが答える。



「この子は…クロスはバース一族の末裔ですわ。ミウル様…あなたの子孫…です。」


「げぇ…!」



あからさまに嫌そうな顔を浮かべたミウル。それに春樹が質問を投げかける。



「あんたの子孫てことは、神さまの子孫…?」


「そう…みたいだね…」


「なんでそんなに嫌そうなんだ?」



春樹の問いかけに、ミウルは大きくため息をつくと、理由を話し始めた。



「僕はこの世界を創るとき、自分の子たちを数人、この地に産み落としたんだ。彼らは人を増やし、やがてはその人々を束ね、国を作り、世界を形成してくれた。そして、本人たちは国の王となり、互いに仲良く交流し、世界を繁栄させてきたわけ。」



春樹は無言で話を聞いている。ミウルはクロスを眺めながら話を続ける。



「だけど、異世界人を召喚した際、彼らの一部はその力に魅了させちゃってね…僕はそれが嫌でこっそり彼らに"枷"をかけたんだよね…」


「…え?枷をかけた?それってどんな…?」


「……」


「おい…なんで急に黙るんだ…」


「いや…」



明らかに言いにくそうにするミウルを見兼ねてなのか、クロスが口を開いた。



「そいつは自分の子孫に滅びの呪いをかけたんだよ…」


「滅びの…呪い!?」



驚く春樹の横で、ミウルは頭を押さえてうつむき、首を振っていた。



「なんでそんなこと…」


「なんでだろうね…今となっては僕にもわからないよ。ひとつ言えるのは…異世界人の知識を吸収していく彼らが…羨ましかったのかな。」



春樹はクロスの方を見た。

彼はミウルを見てるが、特に恨みを持っているようには思えない。そんな佇まいを感じる。


話しづらい雰囲気の中、口火を切ったのはミカエリスであった。



「その辺の話はあとでもいいじゃない?クロス…今は世界を一つに戻すことが先決でしょ…」


「俺は特に何も言っちゃいねぇよ…」


「ミウルさま…彼を…ハルキをこちらへ渡してくださいますね?」



にこりと笑ってミカエリスは手を差し出す。



「いやぁ…そうだね…う〜ん…」



真面目なのか不真面目なのか…

相変わらず夢の中と変わらない態度でミカエリスに曖昧な返事を返すミウル。


だが…



「ほらよ…」


「あ…れ…?」



春樹はいつのまにかミカエリスの横にいて、その肩にはクロスが手を置いている。



「あちゃ〜〜〜」


「おっ…おい!ミウルって…」



特に焦る様子もなく、額に手を当てて悔しそうな素振りを見せるミウルに、春樹は声を上げるが、



「ごめん、ハルキ…抵抗しても僕には勝てないってさっき言ったろ?あとは運任せなんだ…本当にごめん。」


「お前…!!少しの抵抗ぐらいするべきだろうが!!」



完全なノープラン宣言に、春樹はイラ立ちを隠せない。


そんな二人のやりとりを尻目に、ミカエリスは春樹を秋人のところまで連れて行くと、ゆっくりと話しかける。



「さぁて…2人ともそろそろ準備はいいかしら?」


「…あ…あぁ…うん…だっ…大丈夫だよ!」



状況が飲み込めずに、ボーッと眺めることしか出来なかった秋人は声をかけられて、我に返った。


ミカエリスはにっこりと笑うと、春樹に何かの法陣を施す。



「こっ…これは?何をしたんだ!」


「仕事を途中で放棄されちゃ困るのよ。」


「ミウルは復活したじゃないか!あんたの目的は達成されたはずだろ?」


「いいえ…」



ミカエリスは指を横に振って、それを否定する。



「今のミウルさまは、残り物みたいなもの…本来のお姿ではないわ。私の望みは本当の力を取り戻したミウルさまなの。だから、世界を元に戻さなくちゃ…」



そう言って醜悪な笑みを浮かべるミカエリスに対して、春樹は言葉を失う。



「では、始めましょうね。」



ミカエリスはそう言うと二人のそばから離れていく。そして、パチンと指を鳴らした。


その瞬間、春樹の体から白いオーラが漏れ出していく。



「ぐっ…ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「はっ…春樹…」



悲痛の声を上げる春樹。

それを心配そうに見つめていた秋人に、ミカエリスが声をかける。



「アキト!ハルキが心配なら早く陰を使用しなさい!仕事が終われば、彼を楽にしてあげられるわ!」


「わっ…わかった!!」



秋人は目を閉じて力を込めると、体から黒いオーラが漏れ出していく。


ミカエリスはそれを見て呟く。



「終われば楽になる…楽になるわ…フフ」



その少し後ろで、クロスがそれを見つめていた。

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