家族の願い believe in フタリ
「「んー、誰のせいかと言われれば私のせいだよね♪ ゴメンネ、てへぺろ♡ 」」
事の発端が僕らの不満に対して軽すぎる反省を見せる。
謝罪時に舌を出せるような奴なのだから当然、自責の念を全く感じない。
「「でも、これで二人とも立派なゾディアックだね♪ いやぁー、よかったよかった♪♪ 完全に作戦通りだったよぉ☆ 」」
腰に手を当てた姉貴達は満足気にそんなことを言う。
何の問題もなかったと言わんばかりに、何も気にしている様子がない。
「完全に……か。」
「完全に……ね。 」
おそらく隣の僕も思ってることは同じだ。むしろ抱いている感情は僕のモノより激しいはず。
「「ん? 二人とも何か言いたそうで怖い顔だよ? どうしたの? 」」
ああ、言いたいことがある。
本当に姉貴が完全作戦成功だと思ってるんだとしたら、僕らは絶対に問わなければならないことがある。
どんな理由があっても絶対に許されないことがある。
祇峰フタリとして咎めるべきことがある。
「なぁ姉貴、やっぱ僕らを覚醒させた理由もこの世界のことも全く教えてくれないんだよな……? 」
「「うん、その辺を教えるわけにはいかないね♪ 」」
やはり姉貴は飄々とした態度でこの質問を躱す。
これから僕らのすべき事やこの力と世界の噛み合ってない関係性とか、答えてもらうべきことは数えたらキリがない。だが姉貴がこの様子ではこの一連の頂上に関する質問は全部返答拒否されるのは目に見えている。
ならば、僕らが問うべきことは一つだけだ。
「じゃあ、もういい。でも、お姉ちゃん、これだけは教えてよ…… 」」
「アユリさんとオサム…… 」
「アユリ と オサム君…… 」
「この4人の危険も作戦の内って言えるのか……? 」
「この4人の危険も作戦の内って言えるの……? 」
姉の企みに巻き込まれた親友達のことを見過ごすわけにはいかない。
「知らなかったとは言わせねぇぞ…… 」
「 聞いてたでしょ? 私たちが6人で病院に向かうってこと…… 」
そこを襲撃させるということは、少なからず無関係な4人の命を危険を晒すことになるのは確定していたはずである。あの優秀頭脳がなくても容易に想像がつくシュチュエーション。実際に3人が怪我を負ってしまっている。オサムに至ってはどちらも重症だ。
それなのに姉貴はその作戦を実行した。僕らの親友達の危険を許容したのだ。
「そんなこと、どんな理由があっても許されるわけがないでしょ。 」
「せめて僕らだけの時で良かったはずだ。アイツらを巻き込む必要なんて…… 」
そうだ。あの時にわざわざ襲う必要なんてなかった。
こんな致命的欠陥を抱えた企みを完全成功なんて言わせるわけには……
「「いや、あったよ。 」」
「……は? 」
「……は? 」
「「というか、狙い通りって感じかな? 」」
「何言って…… 」
「何言って…… 」
僕らは姉があっさりと認めた事実に困惑させられるしかない。
だがそんなこと構わず彼女は……
「「だって、トシリン達は結構お人好しだけど、自分のことはあんまり気にしない自己犠牲主人公ってタイプでしょ? そうなると自分の命が危険になってもゾディアック覚醒までの強い感情は引き出せないのかなぁー、と思ったわけ♪ でも、親友を守りたい!! っていう強烈な感情なら結構簡単に覚醒しちゃうんじゃないかなぁー、と思いついたの☆ だからあの病院に向かうタイミングが絶好だったんだ♡ もちろんオッサム達を犠牲にするつもりはなかったよ? あの4人なら怪我しても、さっきの午のお馬鹿さんと同じように一人に戻れば完治しちゃうって知ってたしね♪ だから悪いとも思いつつも利用させて…… 」」
「……お前良い加減にっ!!!! 」 グッ!!
姉貴とは喧嘩もしたことがなかった。
どれだけからかわれて、腹が立っても本当の怒りはお互いに見せたことがなかった。母親代わりをしつつも、常に明るさと楽しさを与えてくれる存在にそんなもの抱くわけがなかった。
だが、ずっと優しかった姉とは思えない何の躊躇も悪気も感じられない数々の告白。
そんな姉貴に僕はついに拳を握っ……
……パァン!!
「「っ……!! 」」
「もういい……何も言わないで。」
僕よりも先にもう一人の僕が右側の姉貴に平手打ちをかました。
その今まで以上に強烈で静かな怒りの篭った一発。それは自分の行いを自慢気に語っていた両方の姉をよろめかせ……なんかおかしいが、今はどうでもいい。
「行こっ。オサム君達、病院に連れてかないと。 」
彼女は俯いたまま僕の隣に戻る。その姿から感じ取れるのは、怒り以上に悲しみだ。信頼しきっていた人間の裏切りにも近い行動に絶望感を与えられている。僕だってほとんど同じだ。
「あ、ああ…… 」
「じゃあ、私はさっきの場所に戻るから、あなたも自分がいた場所に…… 」 タッ
そう言い残した女の僕は自分の戦っていた場所の方向にに走りだす。どこかに向かうというより、この場から逃げ出すような足取りで……
「「トシトシは殴らなくていいの……? 」」
妹に引っ叩かれた姉貴達が頬を抑えながら残された僕に話しかける。
アイツが先に姉貴を殴った事で、僕の怒りは鳴りを潜めたようで感情的にはなれない。さっき拳を握りかけたとは思えないくらいに落ち着いている。
「殴られるくらいのことをした自覚はあるわけ……? 」
「「うん、でもそれぐらいの罪は背負うつもりだよ? 今までもこれからも。」」
「ここからも何かするつもりなのか……? 」
「「何をするのかは今後の展開次第だけどね。」」
「その時、犠牲が必要になった時はどうする? アユリさんやオサム、杉佐多や黒羽さん、そのほかにも無関係な人間達が危険に晒されるなら…… 」」
「「もちろん、躊躇せず払うよ。私は家族のためなら世界でも犠牲に出来るから。」」
「そうだったな…… 」
世界と家族。どちらかを選べと言われれば、姉貴は迷いなく後者を選ぶと昨日言っていた。
家族としては嬉しい限りのこの選択。でもそれは家族の愛であると同時に世界への無関心を表していた。だからこそ、オサム達を平気で巻き込んだ。昨日の言葉はこの前兆とも言えたのかもしれない。
だとすればもう僕らは……
「なぁ、姉貴…… 」
「「ん? なぁに? 」」
「もう何もしないでくれ。例えそれが僕らのためでも、家族のためでもだ。 」
僕らは姉貴ほど割り切れない。強くなれない。大切なものを一つに定めることはできない。
世界の犠牲に耐え切る事は出来ないのだ。
「「そう……でも、本当に危なくなったら私はどんなこともするからね? 」」
「何も教えてくれないクセに、助けには来てくれるのか? 」
「「だってお姉ちゃんだもん。弟と妹くらい守るよ。」」
「ハァ……自分たちでどうにかしろって言ったり、手助けするって言ったり、めちゃくちゃだな。 」
「「だって家族だもん。きっと後から私のことを理解してくれるって知ってるから。」」
「どうだかな…… 」タッ
そして僕は姉貴を残し、オサム達の元へと向かった。
「「そう……
「「それでいいんだよ……
「「私なんか頼っちゃダメ……
「「でも、お姉ちゃんは絶対信じてるからね……
「「あなた達に……
「「また会えるって……
「「フタバにも……、ミライにも…… 」」




