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ひと先ずの終幕 fly away



 「うるせぇ!! いいからさっさと疾駆を返せっ!!!! 」


 自分同士の別れを悟った僕らの前で未だに槍使い達が口論をしている。

 まだ馬鹿が戦いたがって副会長の判断に従わないようだ。


 「ここで借りを返して、謹賀応報してやる……!! 」


 因果にしても使い方が違う。


 「「ハァ……確かにここまでくるとおめでたいくらいの馬鹿ですね。これ以上恥を晒したくないですし、全く聞き分けもないので…… 」」


 撤退すると言っていたはずの副会長達が槍から降り、武器として手に持つ。

 馬鹿に影響されて戦うつもりになったんじゃないかと思ったが……その目的は違った。


 「「無理やり連れ帰ります!! 」」 ブンッ!! ビュゥン!!


 片方の副会長が槍を振って、人の背丈ぐらいの竜巻を起こす。

 それは槍を振った風圧で発生させたものではなく、その先端からにどこからともなく現れた風だった。またしても原理不明の超能力。槍使いというよりは風の魔法使いだ。


 ビュウウウウウウウ………


 「「……来るぞ。構えろ。 」」


 起こした竜巻は槍が振られると同時にある方向へと猛スピードで動き出す。

 攻撃と思った僕らは杉佐多の声を合図にブレスレットに手を触れるのだが、その風が狙っていたのは……



 「え!? なんで俺様にっ!!? 」



 「あっ、そっち? 」

 「あっ、そっち? 」


 仲間であるはずの馬鹿だった。


 「は? ちょ……!! うわっ!! ?」


 そのまま回転する風の塊は馬鹿の全身を完全に飲み込む。

 いや、正確には包み込んだというべきだろう。どうも攻撃されている様子がない。閉じ込められたって感じだ。


 「「おいこら白鳥!! こっから出せっ!! 」」


 「「せっかく捕まえたんだから嫌です。それっ。 」」 シュッ


  ビュウウウウウウウ………ヒュンヒュンヒュンヒュン………


 この竜巻は馬鹿を攻撃するものではなく、捕まえて強制連行するための檻だったようだ。

 その証拠に標的を中心に収納した竜巻は、その風音を変化と共に形を球体へと変えて副会長の側へと戻る。

 発生だけでなく風でドリルや牢屋を作る出せるところを見ると、猪突猛進な馬鹿とは真逆でテクニック面で手強い敵ってことだろう。

 空も飛べることや学年次席と言われる頭脳を考慮すれば、今後本当に彼女とも戦うことになって僕たちが勝てるのかはかなり不安だ。てか、今のままじゃ絶対負ける。だからここは……


 「「さて、馬鹿も捕まえたし帰りましょう。行きますよ羽撃。」」


 『『承知いたしました、お嬢様。 』』


 副会長が再び槍に跨がり、その後ろに風の檻を携えた状態で宙に浮く。

 見逃すってことにはなるんだろうが、今は相手の目論見通り帰ってくれた方が僕ら的にも助か……


 バシュバシュ!!


 「「おっと。 」」 シュッ、シュン


 青空に向かおうとした空中の敵に向かって光の矢が数本放たれる。

 副会長は華麗な機動で避けて見せたが、どうやら僕の考えとは裏腹に彼女らを見逃す気がない方がおられるようだ。


 「「こっちが有利なんだから、見逃すわけないだろ。」」


 「「そうだよ、そうだよ!! 」」


 僕らの後ろで杉佐多二人がボウガンを構えていた。黒羽さん達も花嫁状態を維持している。

 戦う気満々なのはあの馬鹿だけではなかったらしい。


 「戦うのかよ…… 」

 「まだ戦うの…… 」


 もう疲れ切っていた僕らは聞こえないように愚痴を漏らす。


 「「やれやれ、やはり簡単には逃してはくれませんか。 」」


 副会長は地上からの攻撃によって逃走を中断せざるを得ない。

 背中を向けたままであれば、杉佐多に射抜かれるのだから当然の判断だ。。


 「おい!! 戦うなら俺様にやらせろっ!!!! 」


 球状の風の中から無理やり閉じ込められた馬鹿の叫びが聞こえる。まだ戦闘を諦めていないらしい。


 「「だから戦わないと言っているでしょう、と言いたいですが何もせずに撤退するのは無理そうですね。 ここは羽撃、打ち合わせ通り頼みますよ。 」」


 『『お任せください。』』


 空中の副会長が槍とコソコソと話している。

 何か企んでそうなんだが槍に頼むってことは、まさかまた……


 「「鳥神槍技…… 」」グルンッ


 空中の彼女は乗っている槍の先に風を纏わせて、力強く横に一回転し始める。

 思った通り、その勢いでさっきのドリル竜巻を打ち出すつもりだ。


 「「同じ風だねっ!! だったら私が打ち消してあげる!! 」」ハサッ……


 攻撃を察知した黒羽さん達が再び自分の前で二枚の翼をクロスする。

 桃色の風を発生させる構えだ。彼女の能力はよく分からないが、あの凶器じみた回転から僕らを守ってくれる頼もしい救いの天使であるとには違いない。


 「「そぉーれっ!! 」


 「「……っ!? 待って! コイハル!! 」」


 突然、杉佐多が黒羽さんに初めて焦りの感情を見せて叫びかける。

 何か気づいて、打ち消しを止めさせようとしたみたいだったが……


 バサッ !!!!


 ビュゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!


 「「え!? ゴメン、チサト!! もうやっちゃった!! 」」


 もうその時には翼を開き終え、桃色の暴風を発生させていた。

 

 「「……謝らなくていい。俺が気付くのが遅れた。」」


 杉佐多は自分のことを責めるが、何に気づいたのだろうか?

 別にあの竜巻打ち消せれば何でもいいんじゃ……


 

 「「フフッ、狙い通りです!!鳥神槍技 旋風!! ……を逆回転!! 」」



 「は? 逆回転? 」

 「は? 逆回転? 」


 そんなことしたら、軌道が変わって自分に当たるだろ。

 ただの自滅行為にしか見えないんだが……何がしたいんだ?


 「「へぇー♪ すごい予測とテクニックだねぇ〜♪ まさに追い風ってことかな☆ 」」


 「追い風……って、まさか!!? 」

 「追い風……って、まさか!!? 」


 既に何が起きるかが分かっていた姉貴の言葉で僕らは副会長の思惑に気づく。


 「「もう遅いですよ!! 」」



 グルッ……、ブビュゥゥゥンッ !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 早速彼女達は僕らに背中を向け、見たこともないトンデモ超スピードで僕らから二手に分かれて離れていく。

 自分に向けた二つの強風はそれぞれの跨っている槍の矛先に当たってジェットエンジンの役割を果たしたのだ。


 「「あーっ!! 私の風がぁーーーーーっ!!!!


 しかも黒羽さんのピンク風と流れる方向が同じになったことで、それを全て取り込んでしまった。

 おそらく攻撃の素振りを見せれば、また風で対抗してくるのを見越していたのだろう。副会長にとっては計算通りの追加ブーストだ。


 「「嘆いてる場合じゃない。オレたちも一人に戻る前に追うぞ、コイハル。」」


 「「うん分かった!! 追いついて挽回しなきゃ!!!! 」」 バサッ ガシッ


 杉佐多の指示で舞い上がった黒羽さんは彼の左手を掴んでぶら下げる。空中からの射撃ができる形態だ。

 しかし、あのスピードに追いつくつもりみたいだがそんなこと出来るのか?


 「「大丈夫任せといてよ!! 後でまた会いに行くから、フタフタコンビは休んでて!! 」」


 「あ、ああ。」

 「う、うん。」


 狙撃手と天使の合体兵器が僕らに休息を促す。僕らにはまだ謎解きも残っているし、言われた通りあとは4人に任せよう。


 「「じゃあ、チサト♡ しっかり握っててねっ!!」」


 「「分かってる。 」」


 ギュッ


 「「んーーーーっ♡♡♡♡♡♡ これなら追いつける!! 行っくよぉーーーーーーーーーーーーっ!!!!! 」」


 バサッ 、バサッ……バシュン!!


 「き、消えた!!? 」

 「き、消えた!!? 」


 数回翼を動かしたと思ったら、一瞬で黒羽さん達が姿を消す。

 咄嗟に副会長が逃げた二方向をそれぞれ見るとかなり先の距離に飛行物体が二つずつ見えた。任せとけと言っただけはある超速度だ。追いつけても不思議じゃないが、ますます彼女の力については謎が深まる。能力が一つには見えないんだが……


 「「まぁ、それは今度本人に聞きなよ。とりあえずは二人ともお疲れ♪ いろいろ大変だったでしょ? 」」


 僕らと共に取り残された姉貴達が後ろから他人事のように労いの言葉をかける。



 「誰のせいだと思ってんだ…… 」

 「誰のせいだと思ってんのよ…… 」



  この一連のトラブルの元凶が、まるで自分の行いを全く気にしていないように。

 



 


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