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写心同心 mirror heart



 「は? 逃げるとかマジで言ってんのか? 」


 副会長の撤退宣言に馬鹿が苦言を呈す。


 「「当たり前でしょう。それとも、1対8の完全不利試合でもしますか? 」」


 「お前ら入れれば、こっち3人だろうが。 」


 「嫌ですよ。どっちにしても不利ですし、少なくとも射手座と乙女座の4人はかなりの手練れです。加えて、残りの4人も実力が未知。人数的にも実力的にも負け戦が目に見えてるのに手を貸すとでも? 戦うにしても彼らの人数が戻ってからの方が勝ち目があります。 」


 流石、副会長。戦闘馬鹿とは対照的に冷静な判断を下す。

 杉佐多と黒羽さんの実力を知っているところを見ると、この3人は交戦したことがあるみたいだ。そうなら杉佐多の風の正体を知っていたような言動にも説明がつく。

 

 「んなもん待ってられるか!! 俺様はこいつらに散々やられたんだ。ここで借りを返さねえと気が済まねぇ!! お前の協力なしでも俺一人でぶっ飛ばす!!!! 」


 流石、馬鹿。副会長とは対照的に無謀な特攻を望む。

 杉佐多とか容赦しなさそうだから、やめといた方がいいと思うぞ。


 「「いいから、ここは撤退しますよ。いくら馬鹿でも、私たちの目的のためにはあなたの力は必要なパーツなのです。無駄な戦いをして死なれたら困ります。」」


 副会長がイライラの止まらない馬鹿を諫め始める。

 ただの戦闘狂か正義の味方的な存在かと思ったが、何かしらの目的がちゃんとあるってことか。この辺りも後で杉佐多達に聞いてみる必要があるな。


 「「それにニュースや街の様子を見る限り、人類が一人に戻り始めているようです。場所やタイミングは不規則なようですが、少し待てばそこの星のゾディアック達も元に戻るはず。戻った人たちに妙なことも起こっているようですが、あなたの様子を見るに私たちには関係ないのでしょうね。その後でも戦いの機会は来ると思いますから、とりあえず今は我慢してください。」」


 彼女の合理的な説得の中で、今の世界の状態が判明した。


 やはり人類が元に戻り始めているらしい。

 意外と短かったが、もうおさらばってことか。この前代未聞世界とも。このパニックとも。そして、おそらく……


 チラッ


 「あっ…… 」

 「あっ…… 」


 無意識に隣に目をやると、意図せずもう一人の自分と目が合ってしまう。

 こいつとはまだ24時間も一緒に過ごしてないし、性別以外は自分自身であるはずだ。会えなくなったところでこれからの生活に支障は絶対でない。


 ……なのに、もうすぐ訪れるのであろう別れを思うと不思議とモヤモヤとした気持ちに襲われる。


 「な、なに? 私と会えなくなりそうで寂しいの? 」


 「ち、違うに決まってんだろ、寂しいのはお前の方じゃないのか? 」


 僕はからかうような口調の質問をそのまま投げ返す。


 「そ、そんなわけ…… 」


 やはり、それに対して彼女も否定に入る。


 そうだ、そんな訳ない。

 寂しい何って思うはずがない。

 自分自身との別れに哀愁なんて感じるなんてこと……




 「そんなわけ……あるかも。 」




 ……


 ………


 …………


 ……………


 ………………あれ? え? は?


 


 あまりにも不意打ちだった……


 何故か、さっきまでの暴力性が皆無で……


 自分とは思えないくらい可愛らしくて素直な言葉……


 それは姿形は違っても鏡の如く僕の心までを映し出したようで……

 

 ああ、そうだ。嫌でも認めるしかない……


 このモヤモヤした気持ちは……

 

 だから、きっと僕も……







 別れが惜しくて、寂しい。








 もし世界が戻ったとしても、彼女とだけはもう会えないのだから。


 

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