羽撃きの激突 new enemy
「チッ! あの女、こっからだってのに俺様の邪魔しやがって…… 」
ヒュィィィィィィィィィィィィィン!!!!
「あれ絶対当たったらマズいだろ…… 」
ドリル風とでも言うべきだろうか。明らかな凶器と化した竜巻が僕らを挟み撃ちにする。
ただの風とはいえ、その形状と大きさを見るに、喰らえば土手っ腹に穴どころじゃ済まなさそうだ。
「「あの風……あの時の奴か。コイハル、頼む。」」
風の正体を知っているような口振りの杉佐多が黒羽さんに何かを指示した。
「「OKチサト♡ 今度は任せて!! ドレスアップ・ヴァルゴっ!! 」」 ヴン!!
ブレスレットに触れた黒羽さん達は、一瞬で翼付きウェディングドレスに身を包む。
再び美しき花嫁天使の降臨。彼女自身の容姿も相まって、本物の天使のようにも見えなくもないのだが、頭から足先までの情報量が多すぎて、むしろ天使とかけ離れた姿とも言える不思議な存在だ。
「「よぉーし…… 」」 ハサッ ……
変身を終えた彼女は早速背中の翼を自分の前で交差する。何かを溜め込んでいるような体勢だ。
「「吹き荒れてっ!! 愛の風っ♡♡♡ 」」
バサッ !!!!
ビュゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!
黒羽さん達は閉じた翼を力強く広げ、その勢いで桃色の暴風を発生させる。
「うおっ!!! 」
「きゃっ!! 」
しっかり踏ん張らないと僕たちまで吹き飛ばしそうな速度の色付き強風だが、標的は定まっているようで、それぞれドリル竜巻へと向かっていく。襲いくる風に対しては、こっちも風で対抗しようという事らしい。
「「行っけーーーーーーー!!!! 」」
ヒュィィィィィィィィィィィィィン………
ビュゥゥゥゥゥゥゥ………
……バシュン!!
ヒュゥゥゥゥ………
「や、止んだ…… 」
「と、止まった…… 」
黒羽さんの掛け声と共に二つの風はそれぞれの方向で激突し、お互いを打ち消し合った。
最後にはか細いそよ風が残り、僕の頬をかする。またあの4人に借りが増えてしまったな。
「「イェーイ!! 私大活躍!! チサトぉ、今度こそ褒めてぇーー♡ 」」
「「待て、油断するな。まだアイツの姿が見えな…… 」」
「「やっぱり、一網打尽なんて簡単にできるものではないですね。 」」
杉佐多が警戒を促し切る前にさっきと同じ女の声が聞こえ、上空からその二つの姿を現した。
「「こんにちは。ウチの馬鹿が世話になったみたいで。」」
落ち着いた敬語で僕らに挨拶をしつつ、あの槍使いの仲間であることを認める。
なんとなく分かってはいたが、この人も敵。新たな干支の槍使いってことか。
今回は僕らの高校の女子制服姿で、あの午のやつと同じような槍にまたがって空中に浮いている。まるでほうきを乗りこなす魔女のようなシルエット。そして頭は黒髪ロングで敬語とセットで清楚な印象を受け……ん? 待てよ、この人確か……
「え? 嘘だろ……? 」
「え? 嘘でしょ……? 」
僕は女の自分と共にあることに気が付く。その顔を知っていたのだ。
しかし、知り合いとは言えない。会話をするのも初めてだ。
だがよく見ると全校集会などで見たことがある顔だった。何なら名前まで知っている。だがそれは僕たちが特別な訳じゃない。おそらく全校生徒の大半が学年問わずこの人のことは知っている。なんたって全校生徒の中でNo.2に位置する人なのだ。知らない生徒の方が少ない。
清楚な黒髪美女で生徒会長の次に権力を持つと言える人物。この人の正体は……
「なんで、副会長が……? 」
「なんで、副会長が……? 」
僕らの高校の生徒会副会長 白鳥 空來先輩だった。




