隠密なるユイガ secret aim
「「えっ? お姉ちゃん? そんなことあるの? たしか……長い茶髪さんだったよ? 」」
「お姉ちゃんじゃん。」
「姉貴じゃねぇか。」
「「☆とか♪とかの変な語尾だったよ?? 」」
「お姉ちゃんじゃん。」
「姉貴じゃねぇか。」
「「あとトシトシとかリンリンとか、よく分かんないこと言ってたよ??? 」」
「紛うことなき、お姉ちゃんじゃん。」
「紛うことなき、姉貴じゃねぇか。」
そんな変人はこの世に一種類しかいない。
お姉ちゃんの用事っていうのはコレのことだったんだ。今思えば、こんな世界になってるんだから予定なんて基本全部潰れてるはずなんだから不思議に思ってもよかった。
しかし、なんのための仮面なのよ? そんな名前じゃ、バレバレじゃん。
「どうやら正体隠す気はないみたいだな。あの姉貴のことだし、秘密の行動してるっていうノリでつけてるだけじゃないのか? 」
まぁ、確かにあのお姉ちゃんのことだ。変装には特に理由はないのだろう。深く考えないほうがいい。
あの姉の行動とか意図を予測できたことなんて今まで一度もないのだから、頭使うだけ無駄だ。
「でもその依頼者の正体が姉貴なら、なんで僕らが襲われてることが分かったんだ? 僕らがあの馬鹿どもに見つかったのは九時ちょっと過ぎだったはずだから……まだ三十分もたってないんじゃないか? 」
変態に言われて、私も腕時計を見てみる。
あっ、ホントだ。長針は襲われる前に見たときから、そこまで動いていない。そんな短時間で死にかけたり、力に目覚めたり、助けられたりをしたのか、私たち。
「ん? ってことは、お姉ちゃんは私たちを尾行でもしてて、途中で襲撃を目撃。そこで妹と弟の危険を感じたから、仮面をつけてあなた達に依頼したってことになるけど…… 」
「「それは違う。」」
杉佐多くんが私の仮説を否定するが、もう喋りながら思っていた……私自身も同感だ。
まず尾行する意味が分からないし、この助っ人達はお姉ちゃんや仮面の依頼者のことを知らなかったから初対面のはず。だから咄嗟に依頼するなら、この四人を探し出すところから始めなきゃいけないはずだけど、時間を考えるとコレを最低でも十分弱くらいで行わないと間に合わない。それにこの人達の存在を一方的に知ってる必要まである。
「自分で言っといてなんだけど、こんなのは不可能だよね…… 」
「「いや、可能・不可能の前にそもそもの前提が違う。」」
私の駄推測に杉佐多くんがピンとこない指摘をする。
前提が間違ってる? どこ? 尾行のところとか?
「「そこじゃない。オレが言ってるのは“時間”のことだ。」」
「時間……? 」
「時間……? 」
まだピンとこない。時間の前提なんて、設定したっけ?
「「たぶん意図的に設定はしてない。思い込んでるだけだ。実際にオレも襲撃の時間を聞くまで、当然のように考えていた。こんな矛盾、普通はありえない。」」
襲撃の時間に矛盾? そんなのが特にあるようには思えないんだけど、どういうこと?
「オレたちが仮面の女に会ったのは、午前八時五十分頃だ。つまり…… 」
え? ウソっ? 八時五十分? それなら完全におかしい。そんな時間はありえない。あり得るわけがない。だって私たちが襲われたとき時計は九時を既に回っていたはず。ってことは……
「「……君たちが襲撃される前から、オレたちは救出を依頼されていたことになる。」」




