受け売り repeat
「えー、だって僕のせいじゃないし。蹴ったのあの馬鹿だし。」
ハイスクール真っ最中の人間がエレメンタリーな主張をするな。
もう少し大人になりなさいよ。とにかく責任を感じて謝れる人間こそ、真の大人よ。
「お前の“大人”悲観すぎね?」
「私たちは謝ることで大人になれるのよ、多分。」
「ナメるな。お前が全ての大人に謝ってこい。」
怒られた。自分同士なのに捉え方はかなり相違するらしい。
でも目の前で私のオサム君がやられたことに対して、少しくらい申し訳なくならないわけ? とりあえず謝りたくならないわけ?
「残念ながら大人=謝罪とか責任っていう価値観は昨日捨てた。」
捨てるな。しかも何で妙に直近なのよ?
「それは……なぁ? リンリン? 」
「え? な、なに……? 」
いきなり彼の口調からおちゃらけが消えた。
嫌いなあだ名で呼ばれたのに文句を言えない緊張感が走る。
「僕だって何も感じてないわけじゃないんだよ。こっちのオサムも僕のために戦おうとして倒れたんだ、無感情じゃいられない。少しは責任も感じてる。」
「じゃあ、なんで?」
それなら尚更、頑なになにも背負おうとしないその態度には違和感があるし、腹が立つ。一発ぶん殴ったほうがいいんじゃ……
「……でもな、そんな自分のせいでも無い責任感とか、どうしようもない後悔とかに苛まれ続けるのは無駄だし、“逃げ”なんだよ。ただの……虚勢なんだよ。」
それ、言葉は違うけど確か……
「だから僕は謝らないし、後悔しない。お前も謝る必要はない。そんなのはアイツらを助ける上で邪魔なだけだ。だって、今僕らがすべきは…… 」
そう語りかける彼はふらつきながら立ち上がり、
「祇峰フタリの友達を傷つけた槍使いをぶっ飛ばす。ただそれだけだ。」
私の心のモヤモヤを綺麗さっぱり消し飛ばした。
「ーーなんて偉そうなこと言ったが、僕もつい昨日まで息子としての義務感とか罪悪感に囚われてたんだけどな。」
冷静になった彼は顔を赤らめながら、私にも心当たりのあることを告白する。
……そっか、そういうことか。
コイツも私と同じ様にお母さんのことを……フフッ。やっぱり私たち、いろいろ違う様で同じ……
祇峰フタリなんだ。
ビュン!! タッ
ビュン!! タッ
「「ハッ!! 最初のところまで戻ってきちまったかっ!! 」」
『『やっぱ、俺たちの疾蹴の威力半端ねぇな!!』』
とうとう敵が私たちが座り込んでいる場所にそれぞれの方向からやってくる。
しかも、二人同時。戦闘再開なんだろうけど……今の体力とダメージ的にこれ以上はキツい。二対二になったところで有利とは思えないし、背中の彼からも力に余裕がある様には感じられない。
私たちはこれが最後になりそうだ。
「……ねぇ? さっきカッコつけて語ってくれたけど、あれ昨日のお姉ちゃんからの受け売りでしょ? 」
「チッ、バレたか。お前の世界でも同じこと言ってたのかよ。」
「そうみたいね……でも、ありがと。」
私は立ち上がりながらお礼を伝える。
同じことを伝えられてたのに、肝心なところで頭から抜けていた。
「思い出させてくれてっ。」
「ふっ、気にすんな。結局自分慰めただけだからな。つまり、ただのじいこう…… 」
「やっぱお前、後で殺すっ!! だから生きてなさいよっ!! 」
ビュンッ!!
ビュンッ!!
「「今度こそ死ねやあああああああああああああああああああああああ!!!! 」」
槍使いがおそらくこれで最後の突撃を始める。
そうだ。あとでこの変態に制裁を加えるためにも、ここでやられるわけには……
バシュ!! バシュ!! バシュ!! バシュッ!!
「えっ……なんの音?」
「えっ……なんの音?」
突然、連続で謎の発射音?みたいな鋭い音が聞こえる。
『『おいっ!! ヤマト上っ!!!!』』
「「はぁ? 上……? なにっ!!? 」」 バッ!!
ダスッ ダスッ ダスッ ダスッ
それぞれの敵は流石の超スピードで避けたが、その進行予定路に光に包まれた謎の何かが大量に突き刺さった。
「なにあれ……光ってる?」
「あの形、矢……? 」
ああ、矢か。あの先端は確かに矢だ。光の矢がたくさん降ってきた……って、どういうこと?
なにが起きたの? さっきのはこれの発射音?
それに、あのまま敵が進んでくれていたら直撃だったってことは……助けてくれたの? でもそれなら、
「いったい誰が…… 」
「いったい誰が…… 」
ヒューーーーーーーーーーー、ズサァァァァァァァ!!
「「ふぅ……悪い。遅くなった。」」
「……誰? 」
「……誰? 」
謎の矢が降り注いだ天空から、私たちそれぞれの目の前に見たこともない謎の男が降り立った。




